308 【R18】忙しい人のためのゾンビ村【RP村】
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[最小限の明かりが灯された、暗い家の中。 クローゼットの前にはソファーがあった。 隣の部屋まで押していくのは重労働だったが それでも、なんとかやり遂げた。
辛かったのは、ソファーを押すことなんかよりも 兄貴がクローゼットから出たがる音を、 聞かなかったフリをすることだ。]
[壁を引っ掻く音が、断続的に聞こえる。]
[腰のポーチにはスマホの充電器とケーブル。 あとは……兄貴が、力のない僕にと見繕った 出刃包丁を布巾にくるんでつっこんだ。 長くて全部は入らなかったけど、 すぐ出せるならいいかと、 持つところだけはみ出たまんま。]
(+93) 2020/10/25(Sun) 21時頃
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[あとは、地図の確認や明かりぐらいにしか 使えなくなったスマホをポーチに入れる。
このあたりの基地局が機能しなくなったのか、 充電をし直した後も、ネットには繋がらない。 それでも、スマホは手放す気にはなれなかった。
最後に投稿した内容はよく覚えている。 世界が今どうなっていて、 これからどうなるのだとしても 僕は、生きてやると決めたんだ。]
(+94) 2020/10/25(Sun) 21時頃
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[ソファーの前に立って、 クローゼットの方を見る。]
「グ……ウァ、……アー……」
[聞こえるのは呻き声。壁を引っ掻き、殴る音。 時折、クローゼットの扉が歪むけれど。 紐やらガムテープやらでぎちぎちに固めて ソファーでバリケードを作ったお陰で、 兄貴がここから出るのは厳しそうに見えた。]
兄貴。僕、行くよ。
兄貴を殺すのはどうしてもできなかったけどさ 絶対に、人を襲わないように そうした、つもりだよ。 [ずっと泣き続けてきたからか、 もう、涙が出ることは無かった。]
(+95) 2020/10/25(Sun) 21時頃
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僕、兄貴の分まで、生きるから。 どれだけ長くかはわからないけど…… やって、みるから。……安心して。
[兄貴のバイクの鍵を握りしめて。 僕は、玄関の方へと踵を返す。
それから一度も振り返ることはなく。 玄関ののぞき穴から外を見て、 扉に耳をつけて音がしないことを確かめてから 玄関の扉を、そうっと開けた。]
(+96) 2020/10/25(Sun) 21時頃
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[僕のバイクは長い間乗って居なくて メンテナンスのへったくれもない状態だ。
それを知っていた兄貴は噛まれた後に、 自分のバイクの鍵を僕に預けてくれていた。 大分前にお隣さんを落とした方…… 裏の方からは、何かの咀嚼音が聞こえてくる。 僕はできるだけ音をたてないように、 兄貴の青いバイクの方へと向かった。]
は、……ガソリンちゃんと入ってる。 傷もないし、いつ見ても綺麗だよな…。
[高校の時に取って、少しは運転したけれど。 大学に入ってからはめっきり乗っていなかった。
僕が、兄貴のバイクに乗っていいんだろうか。 ―――そんな風に悩んでいる余裕は、 今は全く残っていなさそうで。]
(+97) 2020/10/25(Sun) 21時頃
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[バイクを表に引っ張ってきたときに 裏から顔を覗かせたゾンビと目が合った。 とても、人間とは思えない肌の色をしていて、 所々腐りかけ、口元は肉と血で汚れている。
今まで、あいつは何を食べていたんだろうか。 兄貴も……いずれ、ああなるんだろうか。 考えちゃいけないことを予想してしまって、 吐き気が込み上げて、動けなくなりそうだ。
よろめいた時に、バイクに腕が当たる。 よく磨かれた、透き通るような青。 兄貴が僕に託してくれた物。]
(―――ここにいちゃ、駄目だ。)
[こっちに向かって来ようとするのを見て、 慌ててヘルメットを被り、バイクに跨った。]
(+98) 2020/10/25(Sun) 21時頃
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こんなとこで、食われてたまるか……って!
[一気にアクセルを捻る。 バイクは住宅街から大通りの方へ加速していく。
目指すところなんて、何も決めてないし、 不安しかないけれど、もう、やるしかない。
まずは都心から離れるんだ。 ここから一番近い高速のインターはどこだっけ。
平和な場所なんてあるかどうかはわからない。 それでも、なんとかして生き延びるために、 ゾンビがあまりいない場所を……探さないと。]*
(+99) 2020/10/25(Sun) 21時頃
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― 夜・コーヒーショップ『abbiocco』 ―
[彼女の国へ転勤を希望したのはそれから数年後のことだ。 養父母も既に旅立ち、長年住んだアパートにも 物はほとんどなかった。 身ひとつで移住し、この地で車椅子を得た。 シーシャが就職して来たのは驚いたが、数年とはいえ、 赤ん坊の頃から知っている子と共に仕事をするのは 何だか不思議な気分だったのを覚えている。]
……。
[10フィート先で俯く顔を見る。 機能しない瞳では、表情を窺い知ることはできない。 色素の薄い髪が暗いのは、濁る瞳のせいではないだろう。 どちらからとも知れぬ、酸い匂いが鼻腔をくすぐる。]
(+100) 2020/10/25(Sun) 21時頃
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[限界だった。傷だらけの右手を床につくと力を込める。 何日も動かずにいた関節は石のように固まっていたが、 動かしてみると硬質な音と共に案外簡単に曲がった。 壁を引っ掻きながらゆうら、ぐうら、立ち上がる。]
あ゛ー……ふ。
[もう動かなかったはずのものが動くのは 本来喜ばしいことのはずなのに、 地面についた足を見ても何の感情も湧かなかった。 気を抜けばあっという間に崩れてしまいそうだったから、 息を詰めて足を動かした。
静寂の夜に、不快な摩擦音が響く。 10フィートの均衡はあまりにも容易く乱れた。]
(+101) 2020/10/25(Sun) 21時頃
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[どこへいくの、と。泣きそうな子どもの声がした。 返事をすることなく、唯一機能している裏口へと進む。
マスタと呼ばれた。ミケーロさん、と。ミケ、と。 呼び名が若返って行く度に、 子どもの声は徐々に癇癪に近いものへなっていく。
ひとりにしないで、と。掠れた声が届く。]
きみは……自由、なん だ。
[嗚呼、やはり私はキャロルにはなれない。 隣人の協力の下、使い道のなかった金で店を出しても、 彼女を真似て望むままに生きようとしても。
ねえ、キャロル。 ――ひとりは、私には少し寂しかったよ。]
(+102) 2020/10/25(Sun) 21時頃
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わたしが望む、のは、 君にわたしを殺させること、でもなく、 わたしがきみを外へ、追い出すこと、でもなく、 ましてや、わたしがきみを、がいすることでも、なく、
きみが、いきること だ。
[限界だった。 打開策を模索する思考は日に日に薄れていくのに、 身体は少しずつ楽になっていく。 すべてが己が手から離れていくのが分かった。 だからせめて、最期に、彼だけは助けたい。]
あいしている よ、 しーシャ。 きみ が、うまれて きて、うれしかっ た。
[後ろであたたかいものが動く気配がして、 “俺は、母さんのことあまり好きじゃなかったんだ。” と何を言って音がわからな、あたたかいの。だめそと、]
(+103) 2020/10/25(Sun) 21時頃
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[ちょうど目の前にある板を叩いた。 ぐしゃりと皮膚が潰れる音がして、冷たい風が吹く。 さむい。やだな。でも。そと。ひろい。]
……あ゛、 あ゛ー 。
[さむいから、あたたかいもの。 ここ? ちがう。そとで、さがす。 広大な大地に、二本の足を踏み出した。]*
(+104) 2020/10/25(Sun) 21時頃
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[ ……そう、餌をやろうと思ったの。]
(+105) 2020/10/25(Sun) 21時半頃
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[ そうしたら部屋の前にジャーディンがいて、]
(+106) 2020/10/25(Sun) 21時半頃
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[ 開け放した扉の先に何かを確かめるように、 ひたすらにせわしなく視線を動かしていて、]
(+107) 2020/10/25(Sun) 21時半頃
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[ わたしの存在に気付いて、目を見開いた。]
(+108) 2020/10/25(Sun) 21時半頃
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[ わたしはそのとき、どんな顔をしていたのかしらね。]
(+109) 2020/10/25(Sun) 21時半頃
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[ 何かにとりつかれたみたいに、 ジャーディンはよたよたと歩いてきた。
そして、わたしの腕を強くつかんだ。 いたっと思わず小さく叫んでしまったの。 あの子はわたしの上着の袖をめくったわ。
そこにガーゼや包帯があるのを見とめて、 恐る恐るといったふうに口を開いた。]
(+110) 2020/10/25(Sun) 21時半頃
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クーパーは?
(+111) 2020/10/25(Sun) 21時半頃
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[ 声はか細く震えていたわ。
何も言えずにいるわたしを、 あの子は縋るか祈るかするような目で見つめた。 根気よく、じいっと。わたしが口を開くまで。
その目を見た瞬間に悟ったわ。 もうごまかすことなんてできないって。]
……いないわ。
[ そう言ったとたんにあの子は、 崩れるようにその場にしゃがみこんだ。 痙攣するように薄い肩が数度震えた。 わたしは慌ててその傍らに膝をついたの。]
(+112) 2020/10/25(Sun) 21時半頃
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[ 嘔吐していた。]
(+113) 2020/10/25(Sun) 21時半頃
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[ その背中があまりに小さくて、 せめて少しでも楽にしてやりたくて、 背中をさすってやろうと思ったわ。
伸ばした手は強く振り払われた。 顔を上げたあの子はわたしを睨んだ。 汚れた口元をシャツの袖で拭いながら、 怒りに満ちた目でわたしを見ていたわ。
けれど、ほんの数秒後には、 すうっと力が抜けてしまったような目で、 小さな子のようにおいおいと泣き出したの。
まるで小さな子がするみたいに、 痛いくらいの力でわたしにしがみついて。]
(+114) 2020/10/25(Sun) 21時半頃
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[ ……かわいそうな子。 利口でやさしい、かわいそうなわたしの孫。
きっとあなたは理解してしまう。 わたしが何を選んでそうしたのか。 何と何を天秤にかけたのか。
わたしを憎み切ることもできずに、 こうして涙を流すことしかできない。
こうなることくらい、 ちゃんと考えればわかったはずなのにね。 だってわたしはあなたのNanaだもの。]
(+115) 2020/10/25(Sun) 21時半頃
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[ もう少し、広い世界と繋がっていられたら、 もう少し、違う今を迎えられたのでしょうか。]
(+116) 2020/10/25(Sun) 21時半頃
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[ それとももうどこにも、 正常な世界など残ってはいないのでしょうか。]
(+117) 2020/10/25(Sun) 21時半頃
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[ ……なんて、考えたって仕方がないわねえ。]
(+118) 2020/10/25(Sun) 21時半頃
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……ごめんね、 許さなくたっていいのよ。 愛してるわ、ジャーディン。
(+119) 2020/10/25(Sun) 21時半頃
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[ そう言って髪を撫でようとしたら、 どん、どん、と肩を叩かれたの。
わたしの胸に顔を埋めたまま、 あの子はこぶしを握って、強く、何度も。
ずいぶん長いことそうしていたわ。 あの子が自分から立ち上がるまでずっと、 されるがまま、片手は震える背をさすっていた。]
(+120) 2020/10/25(Sun) 21時半頃
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[ それでもね、あなたに生きていてほしいのよ。]
(+121) 2020/10/25(Sun) 21時半頃
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[ ただ静かに、その骨ばった背中を撫でていた。**]
(+122) 2020/10/25(Sun) 21時半頃
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