88 吸血鬼の城 殲滅篇
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[そうして、喉の渇きが癒えるまで、 彼の血を啜り、溢れて零れた分まで丹念に舌で掬い取る。
漸く顔を上げた時には、目は虚ろで 行儀悪く、唇の周辺は真っ赤だった]
(55) el900m 2012/05/05(Sat) 00時半頃
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>>54 [ヒューの声に、足を止める。 一瞬の躊躇い。
振り向かずに、答えた]
――……ああ。 幸せにしてやって欲しい。
[それは本心。だから声は揺らがない。]
アンタと、……アイツなら、 其れが出来るだろうから。
(56) tatsuru 2012/05/05(Sat) 00時半頃
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[一度彼女の命を奪った自分が。 ……今、彼女が甦ることへの歓喜よりも
今の運命に煮え滾るような怒りを覚えている自分が、 その資格はないのだ、と]
(57) tatsuru 2012/05/05(Sat) 00時半頃
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[そうして暫く物思いに耽っていたが、 やがて、何かを思いついたように、 ムパムピスの顔に視線を向けると話しかけた]
ムパムピス。 出来れば、お前をこのまま安らかに眠らせてやりたい。 だが、果たしてそれは出来ることなのだろうか。
私が、お前を見逃したとしても。 誰かが――お前を眷属にしようとするかもしれない。 ……私はお前を護ると決めた。 その気持ちは今も変わらない。
ならば、いっそ、他のものの眷属になって どう扱われるかわからないよりも。 私が……お前の保護者になりたい。
(58) el900m 2012/05/05(Sat) 00時半頃
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[そう告げると、爪で左手を切り裂き]
[流れだす血を、ムパムピスに注いだ]
(59) el900m 2012/05/05(Sat) 00時半頃
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― 地下聖堂 >>51 ―
[耳朶に掛かる吐息がくすぐったく、 肩を竦めて笑う。]
もちろんだ。傍にいてくれて構わない。 いや、居てほしい。
[重ねた頬は溶けそうに柔らかく、 無精髭が傷を付けてしまわないかと そんなことまで不安に思って、そっと顔を離す。 名残惜しくはあったけれども。]
おまえが灰になったとき、身体が裂けたように感じた。 こうしておまえをまた腕の中に抱けば、 嬉しくて叫びそうになる。
もう、どこにもいくな。
[正面から深紅を覗き込んで、強い口調で告げる。]
(60) nekomichi 2012/05/05(Sat) 01時頃
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[じっと顔を見詰めて、 彼が目を覚ますのを、静かに見守る。
師が教えてくれた、人を吸血鬼にする方法。 それが本当であればいい、と願った]
(61) el900m 2012/05/05(Sat) 01時頃
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―― 大広間>>60 ――
[ヘクターの笑む気配が触れ合う箇所から伝う。 頬に触れるちくりとした感触さえ愛しむかのように 一度摺り寄せ甘える仕草をみせた]
――…嬉しい
もう必要ない、と、手は足りていると言われたら、と ……少し不安に思っていたので
[血を分け与える様を鏡越しに見ていた女は 抱いていた不安を口にし安堵の吐息を零す。 離れる気配に、首筋に絡めた手を緩め]
何処にもゆきません ヘクターさまのお傍にいます、から もう置いてゆかないで下さい、ね
[覗き込む視線に軽く顎を引き上目に見詰め、願う]
(62) helmut 2012/05/05(Sat) 01時頃
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「マティアス君…いや、今はムパムピス君と呼ぶべきだったね。」
「これを君に預けるようにと命を受けた。」
「…この教会から、異端討伐の聖務を行う修道士となる者を送り出すことができ、とても光栄に思っている。」
「新しい地へ赴いても…達者でな。」
(63) uyuki 2012/05/05(Sat) 01時頃
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―その杖を渡されたのは、最初の「聖務」を執り行う前日のことだった。
長い間育てられた教会を離れる時、司祭様から頂いた護りの杖。
私の持つ力は、限られている。
物質に神の力を宿らせる聖別付与を得意とするだけで、 回復も、攻撃魔法も優れているとは言い難い。
聖務を執り行う役割を与えて頂いたことが、自分でも信じられないようなごく平均的な能力しかない修道士。
だから、力を消耗しない、尽きることのない祝福を受けた杖を与えられたことは、とても嬉しく…命をかけても、神を冒涜する魔物達を排し、人々の為、善き存在であろうと心に誓った。
――いつか神の御許に還るまで。
(64) uyuki 2012/05/05(Sat) 01時頃
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[ヒューを残し、螺旋階段を降りる。 隻眼ははっきりと、 その石床の罅ひとつまでを映し出しているのに
――酷く、足元が暗い気がした。]
――>>53へ
(65) tatsuru 2012/05/05(Sat) 01時頃
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……………夢………?
私……は…………
[生気を失い、閉じられた目が微かに震える。]
[何かを求めるように、投げ出された指先がゆっくりと動き、新たな血を得た体が大きく震える。]
……………ジェフリー……様…?
[目を開くと、金の髪…城に入ってからの数刻の間に、最も信頼できる存在となった男の姿が目に映る。]
(66) uyuki 2012/05/05(Sat) 01時頃
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御無事だったのですね……
御力になれず…申し訳…ございません………
…口元に、血が……
回復を…しなければ……
[男の顔に、ゆるゆると手を伸ばす。 その血が自らの流したものだとは気付かないまま。 漆黒の闇と瘴気は、神の祝福により浄化されたように肌に優しく、安らげる空間となっていた。]
(67) uyuki 2012/05/05(Sat) 01時半頃
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― 地下聖堂 >>62 ―
[擦り寄る仕草は、まるで猫か小動物のよう。 頬に残る甘い感触に心を溶かしながら、 抱き上げた腕に、もう一度そっと力をいれる。]
誰がおまえの代わりになるものか。 おまえ以外には、いない。
[上目に見上げる深紅の瞳。 願いを紡ぐ、花弁の唇。 そのひとつひとつが、愛おしく、たまらなく、]
置いていくものか。 おまえを残していったりするものか。
二度と、おまえを悲しませるようなことはしない。
[力強く、約束の言葉を口にして―――]
(68) nekomichi 2012/05/05(Sat) 01時半頃
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[ ――― 誓いの印を、口付けた。 *]
(69) nekomichi 2012/05/05(Sat) 01時半頃
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―……なる主よ、求める者の声をお聞き下さい。 主の慈しみに生きる人に癒しの…力を……
[馴染んだ聖句。 能力は高くないが、常日頃から使い続けた癒しの言葉。 その発音を、上手く発することができないことに気づいたのは、癒しの白い光が、淡い灰色の闇の力となり目の前に発現した時だった。*]
(70) uyuki 2012/05/05(Sat) 01時半頃
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―― 地下聖堂>>68 ――
[主の腕に籠もる力とその言葉に 必要とされている悦びを感じる]
そんな風に言って貰えるなんて、嬉しい まるで幸せな夢をみているようで……
[幸せだと言わんばかりの笑みが零れた。 力強い約束に安堵したのは一瞬。 名を呼び言葉紡ごうとしたくちびるには 薄くもやわらかな感触が伝う]
――……ン、
[甘く鼻に掛かる音色を漏らし 女は主からの誓いの印を受け入れ眸を閉じた]
(71) helmut 2012/05/05(Sat) 02時頃
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[誓いに誓いを返すかのように 僅かに首を傾け角度を変えて押し当てる所作。 女の手が触れる首に近い肩の傷から 服に隠れた脇腹、胸から背にかけての傷に 白といわれる魔力が干渉し其れを癒そうとする。
どちらからとも知れず離れるくちびる。 とろりと蕩けるような深紅が再び主の双眸を見詰めた**]
(72) helmut 2012/05/05(Sat) 02時頃
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―― 大広間 ――
[献花の如く亡骸に散る白百合。 女はエリアスの器へと歩み寄り傍らに膝をつく。 手を伸ばしエリアスの頬をなぞれば 白百合の花粉が指先を金に染めた]
――…エリアス 私の血をあなたに
[紡げば風が女の掌を裂き深い傷を残してゆく。 漂う百合の芳香に生々しい鉄錆の匂いが混じった。 溢れる薔薇色が指先を伝いを青褪めたエリアスのくちびるへと落ちる。 吸血鬼の血が人であったエリアスに満ちるまで其れは続けられた]
(73) helmut 2012/05/05(Sat) 02時頃
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[満ちたと感じれば掌の傷は塞がり流れた赤が残るのみ。 エリアスのくちびるに残る赤を親指の腹で拭い取り]
エリアス……、私の愛し子 目を覚まして、私の許へ――…
[眠る我が子に目覚めを促す親のように優しくその名を呼んだ**]
(74) helmut 2012/05/05(Sat) 02時頃
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手伝い クラリッサは、メモを貼った。
helmut 2012/05/05(Sat) 02時頃
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[三階の画廊から、二階への螺旋階段へ。 何処に行く当てもなく歩いた。 ――何故、俺を。 その言葉に答えは返らなかった。 伝わったのはいつもの、 揶揄するような笑みの気配だけ。 だが]
(75) tatsuru 2012/05/05(Sat) 04時頃
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……望んで、血を捧げた、か。 [ゆっくりと足を運びながら、 ヒューの言葉を反芻する。
……何故、ヒュー・ガルデンが吸血鬼になったのか。 最初に出会った時の彼は人間だったように思う。
心底『クラリッサ』が 人間であると信じ込んでいたようにも] …… クレアを甦らせる為…、なんだろうな。
(76) tatsuru 2012/05/05(Sat) 04時頃
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[苦笑して足を止める。 あの騎士ならば、其れを躊躇う事は絶対にないだろう。 おかしな程にすんなりと納得がいった。 手すりに寄り掛かり、 ぼんやりと吹き抜けの天井を見上げる。
其処にいるであろう騎士に、 …それを持ちかけたのは、誰なのか。 当然その対象は、ひとりしかいないのだ。]
(77) tatsuru 2012/05/05(Sat) 04時頃
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………、…。――ッ…
[肩が、揺れる。 喉を駆け上るものに顔を歪める。 ぐしゃりと、髪を掻き上げた。 嗚咽に似た声が、螺旋階段に響く]
……。 …っ、……はは…
(78) tatsuru 2012/05/05(Sat) 04時頃
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…そっか…俺の血が、 クレアの為に必要だった、って事か…。
[隻眼の男は笑っていた。 酷く可笑しいことに思い当たったように 身体を折り、手摺に身を任せる。] 復讐兼ねた実益…っ、て、すげえアンタらしい。 絞りカスで愉しむ事まで出来んだもんな、 さぞや満足だろうぜ…っ、くく、
――…ッ、
(79) tatsuru 2012/05/05(Sat) 04時頃
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[足がぐらりとよろけ、踏み外す。 ――男は派手な音を立て、一番下まで転げ落ちた。 がつんという衝撃。激しく頭を床にぶつけ、 目の奥から火花が出た気がして、低く呻く。] ……ぅ、…っ、…てて…、…
………。
(80) tatsuru 2012/05/05(Sat) 04時頃
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[仰向けに倒れ伏したまま、ひくりと、喉が鳴る。 それを耐える様に唇を噛み締め、ぎりぎりと天を睨んだ。 『声』にしない、聞かせるつもりのない恨み言を 呪詛のように、脳裏に浮かばせる]
(……なぁ。満足したか? そうだよな) (アンタも甦れたし、クレアも)
(それなら)
……っ…。…
(81) tatsuru 2012/05/05(Sat) 04時頃
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(俺は、もう)
[――酷く惨めで。 今度こそ腕で顔を覆い、隻眼をぎゅっと瞑る。
怒りよりも、屈辱よりも先に
――もう、あの男にとって自分は用済みなのだ、と
そう知らされた事への絶望が先に立つ、自分が。]
(82) tatsuru 2012/05/05(Sat) 04時頃
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[どれだけそうしていたのだろう。 ――ぼんやりと、身を起こす。 嵐の様に波立っていた心は、 酷く静かに、凪いでいた。]
……。
[ふたつの部屋に囲まれた、螺旋階段の部屋。 辺りを見回し、ひとつの扉に目がとまる。]
――そっか。
[行き先を見つけたように、微笑する。
男はゆっくりと膝を突き、立ち上がった*]
(83) tatsuru 2012/05/05(Sat) 04時半頃
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(最初に与えられる血は 力と渇望 を生み) (二度目に与えられる血は 忘却と服従 を強い)
(三度目に与えられる血は ――――)
(84) tatsuru 2012/05/05(Sat) 07時頃
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