158 雪の夜に
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俺が優しかったら世の中の奴らは8割がた優しいけどな。
[根拠は割愛した。さして愉快な話でもない。]
考えちゃいるがこの状況大分ムリあるぜ……!
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[少女が身を捩るたびに、足元の雪は汚れていきました。 大人二人の力には敵わないのか、体勢が悪いのか、組付かれた男の姿を、荒れ狂うかいなを止める腕を引き離すことが出来ません。 狂乱の中少女の瞳に宿っているのはどこまでも――怯えでした。
やがて武器を持った男たちが示し合わせ、ゆっくりと場を包囲していきます。 少女に逃げ場はどこにも、ありませんでした。]
(107) 2013/12/27(Fri) 23時頃
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私に、優しくしてくれたと思ったのだけど。
……違ったかしら?
[と、戯れのような言葉を交わす時ではなかったが]
そうね……、
人目を集めすぎている。
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それに、 あの子には、聞こえない、のでしょうね……。
[声音は酷く悲しげで、ただゆるく頭を振る]
(108) 2013/12/27(Fri) 23時頃
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って、ここでジリ貧してりゃ二進も三進も……っ
[流石に手は離さない女の反応に、顔を顰めた。
自警団の人間も聞きつけて来たようだ。 男達が武器を手に輪を作っている。]
くそ! ――貸せッ!!
[舌打ちをひとつ。 野次馬だか自警団だか、邪魔者を押しのけて、 悲鳴と共に暴れる子供に腕を広げた。]
(109) 2013/12/27(Fri) 23時頃
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[ヤニクの叫んだ内容は、尤もだった。 セレストは、唸り声をあげながら、子供の手を離さない。 このままでは、セレストが危ないと分かって、怯えたようにかぶりを振った。 雪に接して冷え切った足で立ち上がろうとして、よろける。 どろどろと血は手から流れ出ていて、雪を汚していく。]
セレスト
[縋るように、血に染まっている手を、セレストの服に伸ばした。 首を横にふる。もうやめてくれと、言いたげに。]
(110) 2013/12/27(Fri) 23時半頃
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[やがて周囲の人間が、ハナに組み付き、押さえ込もうとし、 武器を持った男達まで現れた。
ハナの逃げ場は、どんどん奪われていく。 怯えた目のちいさな人狼は、ゆっくりと包囲されていく。]
(111) 2013/12/27(Fri) 23時半頃
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[あの青年はこのことを知っていて、 そして必死に留めようとしたのだろう、 雪はまた紅く染まっていた。
自分は確かに、無力な何も出来ない存在だった。
人間にも人狼にも、 心を寄せて寄せて切れずに。 そして、どちらにもなれなかった。
どうすればよかったのか。 ――あの時、どうすればよかったのか]
(112) 2013/12/27(Fri) 23時半頃
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うぅ……、
[ハナの腕にしがみついたまま、 女は近付いてくる群衆をも威嚇するように唸った。 敵と味方の区別がついていないのは女もかもしれなかった。 女の離さない腕が、子供の逃げ場をなくしていく。 小さな人狼を、追い詰めていく。]
――…うぅぅ……
[>>110縋るように服を引くヒューの手に呻きが零れる。 唸りは、涙交じりの声に変っていた。 男は、少女は悪くないという。 じゃあ、誰が本当は悪いのだろう。]
うぅ…、
[力なく頭垂れて、少女にしがみついていた力が抜ける。]
(113) 2013/12/27(Fri) 23時半頃
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[友達、と呼んだ男が両腕を拡げます。 しがみついていた女の力が抜けたころ。 進路を奪われた自警団の面々も怯え怯え、武器を振りかざしていました。 大きく、怯えに濡れた眼が開かれました。
打突音。
悲鳴が高く、辺りに響き渡りました。]
(114) 2013/12/28(Sat) 00時頃
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――……っ、
[目の前の光景を瞳に写すだけの女が、 びくりと弾かれた様に顔をあげたのは、 >>109 青年の声と少女へと伸ばされた腕を見て]
(115) 2013/12/28(Sat) 00時頃
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[セレストの威嚇するかのような唸り声が、涙混じりの呻へ変わった。セレストの手から、力が抜けて、少女の腕が自由になった。 安堵にか、一度だけ、ゆっくりと意識して震える息を吐き出した。 その後の呼吸は、短く、不揃い。 それは多分痛みから。 または、両手が使えなくなる事への怯えから。]
ごめんな。
[ホレーショーの病室の前でしたように、再度セレストに謝った。]
(116) 2013/12/28(Sat) 00時頃
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[視界の端に、黒い服が見えた。
――また、この町で人狼が捕まるのを、見たくないの。
そう紅い唇は言っていた。
それが、どうだ。 目の前では、武器を持った男達に、怯えた目の人狼が包囲されようとしている。 呆然と光景を見守るしかなかった。 振りかざされた武器。 はっとして、息を吸い込む。 奥歯が震えるのは、寒さからだろうか。]
や、
[打突音。高く、悲鳴が響いた。]
やめろ!!
[喉をいためそうな程、声を振り絞った。]
(117) 2013/12/28(Sat) 00時頃
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てめぇらも自警団っつーなら、先に怪我人何とかしやがれ!
[吼えて、力の抜ける女から、小さな人狼の体を引き剥がす。 内に囲うようにして、背中に腕を回した。 近付く誰かの手を肩で押し返す。 爪が身を裂いたかも知れない。牙が穿ったかも。]
大丈夫だ、っ
[周囲の声に反応する余裕などまるでなかったが、 ハナの頭に頬を押し付けた。]
友達だろ。 ……――――――
[微かに囁く言葉に、どれ程の意味がなせたかは知れぬ事で]
(118) 2013/12/28(Sat) 00時頃
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[ただ、
無情に、子供の腕に見知らぬ誰かの手が届いた。 大勢の手が、それを思うままにしようとして、 ハナの怯えを知る者から引き離そうとしている。
目を見開く。 誰かが棒のようなものを振りかざすのが見えて、 喉を潰すような制止の声があって、
甲高い悲鳴が空に刺さった。]
(119) 2013/12/28(Sat) 00時頃
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[少女が最後に見た景色はなんだったのでしょう。
力なく落ちていく眼の光は、ヒューを、セレストを、ヤニクを捉えていました。 離された腕は空を泳ぎ、やがて力を失っていきました。
仕留められた人狼に、野次馬は大いに沸き、どよめきが辺りを支配しました。
自警団の面々は場の状況にかかわらず、少女の身柄を要求したことでしょう。]
(120) 2013/12/28(Sat) 00時半頃
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あ…、
[しがみついていた女から少女が引き剥される。 引き剥した主を目で追う。 コマ送りのようにスローモーションで女の目に少女の姿が映される。 庇われ、護られるように抱きしめられた少女が また引き剥され、それから少女に振り上げられた 武器が、無情に振り下ろされて―――]
ゃ、っ
[違う、こうなることを望んでいたわけじゃない。 少女を離さなかったのは、 ただ、
ただ…―――]
(121) 2013/12/28(Sat) 00時半頃
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や、いやあああぁあああああ!!!!
[悲鳴は、女のものだった。 目の前で少女は、ハナは、力を失っていく。]
(122) 2013/12/28(Sat) 00時半頃
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[人狼の子供の身が離され、打撃によってか完全に力を失う。
――すると旅人は、そこで、するりと腕から力を抜いた。
周囲の、奇妙な熱気の篭るどよめきの中で、深呼吸をする。]
(123) 2013/12/28(Sat) 00時半頃
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……つっても俺、何だかんだで
我が身が一番大事なタイプなんだが。
[銀鈴の声に対して、ぼやくような調子でいる。
衆目があるこの場所では、あからさまに人狼を庇えば
立場が悪くなるのは明白なのだった。
ヒューやセレストがそうするのは人間の勝手だが。]
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―――……
[甲高い悲鳴と共に、衝撃で少女の体が傾いだ。
彼女が雪に倒れ伏すまでの、ほんの一瞬。 濡れた目が、見えた。 記憶の中に残った、狼の目と違って、
ハナの目は、ひどく、憐れに見え――]
(124) 2013/12/28(Sat) 01時頃
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あぁ、ああ、 あああ、あああああ……
[喉が潰れて痛むのも構わず、ヒューは声をあげていた。 肩が、切り裂かれた手が、背が、震える。
――これは誰のせいだ。 俺だ。 俺のせい。]
(125) 2013/12/28(Sat) 01時頃
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……おい、あんたは怪我ないか?
[悲鳴を上げるセレストへ。
人狼が倒れて暴れる者がいなくなった所で、 改めて状況を見てみれば、酷い有様だ。 一番の重傷は間違いなくヒューだろう。]
診療所っ。
[今も血を流している男の手当が必要な筈だと叱咤する。]
(126) 2013/12/28(Sat) 01時頃
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[――その瞬間は目を逸らしていた。
見るに耐え難い光景、 人狼とはいえ、その姿は7つのこどもだ。
一点の曇りなくその排除を喜べる人間など、 果たしてどれほどいるものか。 どよめきには戸惑いと躊躇いの混ざり]
(127) 2013/12/28(Sat) 01時頃
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……いいえ、
無理を言ったのはわかっているわ。
ごめんなさいね。
[ただ、
"助けるからな"と、
そう囁いた声は、あるいは届く前に掻き消えたのか。]
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[傍で、悲鳴があがっていた。 セレストのものだ。
辺りは、大勢のどよめきに包まれた。]
(128) 2013/12/28(Sat) 01時頃
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[集団とは狂熱するものだ。
人狼を庇い立てたと、この二人が思われたなら、 周囲がどんな視線を向けるかは。]
(129) 2013/12/28(Sat) 01時頃
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