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御者 バーナバス! 今日がお前の命日だ!
…………、
え、
[ぽかんと。
あっけにとられた間抜けな声が囁きに乗った
ナンだよ。
[ぽかんとした声に、少しスネた声がリリースされた]
……いや、だって。
君が、なんで、そんなこと、
[拗ねた言葉に、ますます混乱する。]
……僕はあくまで、ひとだよ、
[彼の気にいる「絵」は描けど、非常食に過ぎないと。
そう言外に告げるも、彼の言葉に何となく落ち着かず]
…………、
ありがとう。
[若干ふてくされたような、感謝の言葉を口にした]
――回想・女湯――
……何で、人狼にならないの、
ガストンをやったときみたいに、愉しそうに人を喰らおうとしないの、
……何で、ひとなんかに殺されるの。
[人から人狼に成ったミッシェルへの羨望と、嫉妬と。
そして「人狼」に対する畏敬に似た感情と、「人狼」にあるまじき無抵抗さに対する失望とが。
ない交ぜになって、囁きにこぼれた]
[飛んできた声に暫くは何も答えない。
むくれっつらはここで「人狼」を思い出す前そのもので]
……お前の血、おいしいから。
[額面通りに受け取るかは任せるらしい*]
…………。
[「人狼」を忘れていた頃のような所作に、懐かしさと、不安がない交ぜになった感情が囁きに漏れるも]
……ちゃんと行儀良く飲むなら、別に、
[ぷいと。
むくれっつらに顔を背けるような気配で。
どう返していいか分からないまま、それだけ告げた**]
[リンダが人を殺してしまった。
酷く、後悔した。あのオンナは自分が殺ってやりたかったのに。俺がアイリスを殺したからといって、そんなマネしなくてもよかったのに、と
まぁいい。気は晴れた。
リンダが落ち着くまでそばにいるフリをしてじっとその赤を見る。
存外につまらない殺され方をしたものだ。
こんなものか、と落胆も大いにあり。
気が晴れたのはほんの一瞬。
ぐるるる、と不満そうに零れる声は苛々していた]
[ミッシェルが死んだ夜。サークルの連中も寝静まっている頃だろう。
大きな狼が一匹、塚の前にいた。何かに呼ばれるように。
そろそろ…ケモノが抑えられなくなってきて、人前でもボロがでそうだ。
この塚が出す瘴気は真夏に水を浴びるように心地いい。
ネコがマタタビ嗅いで酔っ払うように。
塚の元には首が数個、転がっていた。胴体はない。
この町の自警団のもの。血を見てまた我慢ができなかったらしい。
眼が抉られてたり舌が抜かれていたり、まともな首は一つもなく、狼の口元からはだらしなく食いちぎった肉片がだらりと垂れていて]
…タリナイナァ…。オイシクないし…
[ぐちゃぐちゃと咀嚼する音は品があるとはとてもいえず
わざと見せびらかすように、その場に打ち捨てておいた]
[次に視線を投げるのは、旅館の一室]
………
[視線の色は真っ赤だった。
あの色ボケには、子供の霊もついているとか。
殺してやったら、幽霊の恨みも感じられるのだろうか。
人の嫌悪の感情は心地よかったけれど、足りなさすぎた。
何もかも]
能ある鷹は爪を隠すっテ、ナァ。
[グッグッ、とまた含み笑いが漏れる。
狼の脚が向かうのは、その霊が守る死人を見分ける、人のもと──]
[バーナバスの部屋にたどりついた時は、人の姿で。
…ケモノの手では静かにドアを開けられないから。
昼の死人のような顔とは打って変わって、普段通りの、笑顔すら浮かべてバーナバスと対面する。
さて、かのお方はどんな反応を示しただろう?
驚いただろうか、それとも、何も示さなかっただろうか]
彼が何か言葉を返す前に、ひゅ、と右手がその喉をつかんだ]
…サイモンは、俺が思ってる通りに思ってるみたいですよ?
自分は「オオカミの非常食とか、ネ。
マ、俺らのことはほっといてクダサイ。
散々偉そうなことヌカシテタお代は貰ってオキマスがネ。
[言葉が終わるか否か。右手で首を絞めたまま、
左手が、そのハラワタを引き裂いた]
[バーナバスの内臓が飛び散る。
内臓の手ごたえと、血の香にまた我を失いそうに酔って。
殺さぬようにじわじわと弄ぶように切り裂いていく間にまた毒気を放つ狼の姿に。
サイモンならこの血の気配を感じられるだろう。
もし彼がまた訪れるのなら、その断末魔の表情を見せつけてやる。
バーナバスの顔にはあえて傷をつけなかった。
この表情を是非皆さまへご覧にいれたく。
娘とかいう幽霊も見ていてくれると嬉しいですが?
代りに、五体は五体であったのかと見極めるほうが難しい程、ぐちゃぐちゃに乱されていたけれども]
アンタ…おいしくナイナァ…殺シテ損シタ。
[愉悦に浸りながらも面倒くさそうに吐き捨てた。実際、酔い覚ましの水の方がまだ美味いと思いつつ、暫しその死体を遊び半分に散らかしながら、狼はその場から消えるのだろう*]
――回想・昨晩――
[血の気配に嬉々として動き出す。
囁きだけで来訪を告げると、扉を開く]
……メール、やっぱり届いてたようですね。
嘘つき、
[彼の酔いが移ったのか、とても愉しげにバーナバスに告げる。
多分、もう聞こえていないだろうけど]
……さて。一応、壊しとかないとね。
コーチじゃなくて、あれそのものが力を持ってるかもしれないし。
[不味いといいつつ死体を散らかすベネットから少し離れると、バーナバスの携帯端末を探す。ほどなく見つかった。
こぼれ落ちた彼の血が、携帯端末の液晶を汚していた。
それをきれいにぬぐうと、彼の娘の写真が見えた]
……だめだよ、もう悪戯しちゃ。
[その霊に語りかけるように告げた後。
端末を横に置いて絵を描き出す。
途中で指を噛み、自らの血もスケッチブックに落として画材にした]
……、
よくわからない。
[舌が感じた味に首を傾げつつ。
描き終わると、端末を床に置いたまま立ち上がり、それを思い切り踏み壊した**]
……不満そうだね、
……やっぱり、年いってるとおいしくないの、
[吐き捨てるベネットに、冷めた声で問う。]
自警団には若い人いなかったっけ、
……夜の間なら、食い散らかしてもいいんじゃない、
[既に手を付けているとは知らぬまま。
もし首がそのまま在ると知れば、昼間見に行く心算で]
[まずかったらしいが、彼の喰い方はとても愉しげに見ていた。
その、いかにも「人狼」然とした所作に、少し安堵を覚えて眼を細めた]
……僕は、ずっと待っていたんだよ。
君がふたたび人狼になるときを。
ずっと。ずっと。
……ひとになんて、戻らないよね、
[昨日の妙なやさしさに、嫌な予感を覚えて問うた]
ナルカヨ。バぁカ
お前モ俺ノメシかそれ以下ダロ?
[わかっていたんだろう?と酔いに含めてケラケラ笑う。
昨日サイモンへ思わず口にした言葉の真意は、
この血の色に塗り潰された。
事実、リンダにもレティにも、持てるのは殺意だけ。
多分、自身の中での賭けは勝ちだ。
食後の運動に、塚に放った幾つかの首を転がしながら、
嫌な笑いを浮かべる。
間もなく首にも興味を失うのだろう
捨て置かれた首は誰かに見つかるまではそのままで*]
…………。
[ケラケラと笑う彼を見て、しばし沈黙した後]
……よかった。
[血色の現場に似つかわしくない、ひどく穏やかな笑みを見せた。]
……ちょっと、宣戦布告してきたから。
部長がようやく表に出てきてくれそうだよ、
1Fを回ってるから、早く来るといい。
レティーシャと一緒にいるよ。……お気に入りなんでしょ、彼女、
…ドコよ?
[流石にレティがという言葉には反応する。
相変わらず血に酔いすぎてだるいけれど]
もうすぐ食堂。
……食べ過ぎなんじゃないの、
[だるそうな声には、呆れを返す]
…好きデモナイケドなァ
[
相変わらず、顔は下卑た笑みしか浮かばない
「好き」の反対は、「嫌い」ではないのだと]
肉ノブンザイで、サ。
[ケラリと笑う]
……ほんとに大丈夫、
「肉」よりも元気がないなんて、さ、
[淡々と問うた]
…タブン。
[要はヒトでいう所の二日酔いに近いもの。
塚から湧き出る毒気に、「ヒト」の体が耐えられなくなってる]
[返ってきた答えに、肩をすくめるような気配で]
……ほんとに寝た方が良いよ、
あの反応じゃ、まだイアンは君を視てないようだしね。
それなら、まだ君は狙われないだろう。
勿体無いジャン。お前とイアンのソレ。
高みのケンブツ。
で、レティのやつ、イアンを疑ってるトカ?
[確か感じていた狼の気配はミッシェルだけだったはず。
レティはサイモンを信じるほどのものをもっていただろうか?地味な疑問が言葉にのる]
……面白いの、これ、
[ひとには、本当に興味が湧かなくて]
イアンを疑う、までは行ってないんじゃない。彼女。
まだ、見極めてる途中でしょ、
……でも。
[先刻の、レティーシャの独白を思い出し
信用というか。
ある種の信頼のようなものを、感じた気はする。
なんでだろ。
面白いヨ、ジューブンにネ。
少なクトモ、ヒト同士のウタガイアイダロ?
バカダネェ、ホントに。
セイゼイガンバリナ。
……何言ってるの、こいつ、
夢見すぎたの、
[疑問は囁きだけに漏れる。
イアンと、それにレティーシャに対する警戒は解かぬまま、ちらりとベネットに視線を向け]
……ベネット。
レティーシャから何か、気配、する、
ミッシェルみたいなの、ある、
[レティをじっと見、何故イアンに人狼呼ばわりされるのかを探る。
ミッシェル以外にも、あの塚の毒気に当てられたかなにかだとすれば驚くには足りないのだが]
……。スル、ネ。
ミッシェル…あのオンナ程ジャ、ナイケドモ。
[レティーシャの赤い視線はその背景を物語る]
…………。
……レティーシャ、
自覚はある、気がする、
[先刻の独白をもう一度思い出す。あの奇妙な違和感。
無力に倒れたミッシェルの影が脳裏に浮かぶ。
哀惜と嫌悪が入り交じった感情が、囁きにこぼれた]
…………。
いつもいつも。
面倒を起こすのは部長だ、
[八つ当たりするように、吐き捨てた]
……これで君も。
物見櫓とはいかなくなったんじゃない、
[少し楽しそうな声が囁きに響く。
ひと同士の疑い合いは、本当にどうでもよかったが。
そこに人狼がどう手を加えるかは、とても興味があった。]
……味方は、多い方が良い。
……本当に。味方、なら。
[警戒はまだ解いていない]
……ねえ。ベネット。
これでもまだ、レティーシャは、お気に入り、
[素朴な疑問を囁きで問うた]
…イヤ。
ベツにレティがお気に入りナワケジャ、ナイサ。
……デモ、アイツはチガウナ。俺とハ、「違ウ」
マ、ドウセシヌヨ。コノチョウシだとサ。
……違う、の、
[その感覚は、多分ひとには分からないもの。
そう思ったとき、無性に自分に腹が立った]
……うん。
死ぬね、
[複雑な感情を囁きにこぼす。
ひとにはどこまでも冷たくなれるけれど。
「人狼」に対しては、どうしても感情が先んじてしまう]
ミッシェルは、力は人狼だったけど、心はひとだった。
そして、レティーシャは。
…………。
[煮え切らない感情を持つ自分に嫌悪を覚え、ひそかに歯噛みした]
ベツにレティが人狼だろウガナニモ変わらナイ
[切り捨てるコトに躊躇もしないし、
今ここでかばっているのは演技以上の何者でもない]
何イラついてンの、オマエ?
[囁きに乗る微妙な感情の変化に僅かながら疑問を乗せて。
そろそろ進展のない不毛な言い争いに飽きが着ているようでもある]
……別に。
……嫌になっただけだよ。
ひとの自分に。
イツデモ食ってヤルヨ
エンリョなく言うとイイサ。
コレダケ俺の近くにいて。「ヒト」を保ってるお前はアルイミ人間離れシテルと思うケドナァ。
やだよ。
死んだら君を見られない。
[即答を返す]
……そう、
君が一番、楽にいられるけど。
[とても不思議そうに言った。
それはきっと、「ひと」がほとんどいないから。]
……。
ヒトは、ドウナッテモ「ヒト」ダロ。
[ミッシェルの死ぬ間際だって。
彼女はやはり「ヒト」であったから]
ツマラナイノハ、イラナイ。
俺はコノママダヨ。オマエもソノママでイレバイイ。
ソレダケ。カンタンなコったロ?
[そも自分が人狼なのだし。
理論で攻めてボロを出すよりは感情だけに留めておいたほうが後々楽。
人間そこまで割り切れるものでもあるまい]
…お前ハ俺のカワリに
シネよ。
[じっと見つめるレティの瞳。乗せる感情はやはり「ケモノ」以外の何者でもなく**]
……どうなっても、ひと。
[ベネットの言葉を、口惜しそうに反芻するも
……君がこのままなら、確かにそれでいいけど。
[事実、レティーシャへの複雑な感情よりも、ベネットの「このまま」な反応への安堵の方が強かった。
……僕もこのままで、いいの。
……。
…オマエはドーシタイワケ?
俺にクワレタイノカイ?
[なんとなく煮え切らない幼馴染に、少し強い口調で問い詰める]
マダ、俺はコタエが見つからないンだヨナ。
「ドウシテヒトヲ殺してはイケナイノカ」サ。
…オマエ食ったらワカルかネェ?
[食う気は勿論、「まだ」ないけれど]
[少しイラっとした声色はすぐに消える]
…アトで、絵、ミセロよ。
今日ノ、分
[イアンの絵はまだ見ていない。
そしてバーナバスを描いたものは存在自体しらない。
随分長く彼の絵を見ていなかった気がした。
声はぷつりと途切れる。
不機嫌そうな赤色だけを名残にして**]
全然。
[自分が喰われることには、即座に否定を返す]
僕は、僕がひとであることが一番嫌だけど。
死ぬ気はないよ。
[きっぱりと言い放つ]
…………。
いっそ。レティーシャを殺してみれば、すっきりするかな。
色んなものが。
絵なら、いつでもどうぞ。今も持ってるし。
ちゃんとコーチのも、描いたよ。
[不機嫌そうな声には、いつも通りの冷めた声を返す。
彼の内心は窺い知れず。特別、知りたいとも思わない。
ただ、「人狼」で在ればそれでいい**]
……あなたも、ひとで在りたいのですか、
[単なる確認の問い。
たとえ、どんな答えが返ってきても。
彼女は「違う」から、きっと自分の味方にはなれない。
それでも、その答えを聞くことに、恐れがあった]
――304号室――
[レティーシャの前か後か。
ベネットの部屋の扉を、静かにノックする。
部屋に通されれば、どうぞ、とだけ言ってスケッチブックを渡した
……最後には。
この旅館、全部を「絵」にすればいい、
[部屋の中をぐるりと見回し、最後に窓から見える外を見て、眼を細めた]
[
相変わラズ、面白いコトこの上ナイネ。
心配シナクトモ、絵の題材ニコマラセルコトハシナイサ。
[悪趣味な絵。特に、ゴヤのサトゥルヌスのような不気味なそれ]
…イイ絵。預かっテモ?
……いいよ。
[絵を本体から静かに切り離すと、彼に手渡す。
自らの血も使った絵を改めて見ると、昨日の傷が疼いた。無意識に手が伸びて、絆創膏の上から傷を掻く]
……僕も、題材作り、頑張らないとね、
[自分に言い聞かせるように言う。
少し堅い声音とは正反対に、緩い笑みを見せた]
死ネバイイ。皆、死ネバイイ。
困らせるカヨ。俺がツマラナイ。
[彼の絆創膏の下、少し目を細めてまた食いついた]
…イアンヲ殺しテヤルヨ。ソレデ、マダ絵はカケル?
コンドは、アイツの血だけノ絵ガ見タイ。
ココにイル連中ハツマラナサスギル。
…………あ、
っ、
[ふたたび食い付かれると、不意をつかれて声が漏れる。
途端、平静だった表情を一変させて、射殺すような視線で彼を見た]
……もちろん。描けるよ。
[恨めしげな視線は残っていたものの、イアンを、と言われるとすぐに頷く。
イアンを喰えば、自分の立場は今以上に悪くなるけれど。それでベネットが愉しいのならば、それでよかった。
無為に死ぬ気は、まったくないが]
……ふうん。
「賭け」も、面白くないの、
[つまらないと聞くと、興味深そうな表情で問うた]
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