158 雪の夜に
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[ヒューの重たい言葉に、ハナは色を失って震えていました。 セレストに背をおされるがまま診療所をあとにして、一層その温度が下がったようでした。
少女は焦点の合わない瞳で、みじかく速く呼気を吐き出していました。 白いもやが小刻みに、口元から吹き上がっていきます。
いやいやと眉を寄せて、首を振ります。 困惑したようなセレストに応える余裕は、ありそうにありませんでした。]
(54) 2013/12/27(Fri) 00時頃
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そうだな。
[向こうも、自分以外の人狼の存在に気付いて良い筈なのだが。
何らか理由があるのだろうと、想像を巡らす位しか出来ない。]
んー? あぁ。
……どうして? 安心でもした?
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やっ……!
[弾かれたように、少女はふたりと距離を取りました。 その表情に浮かぶのは紛れもなく恐怖の色でした。 がちがちと歯を鳴らし、みっともなく身をすくませます。]
やだ…… やだ! ハナじゃない わたしじゃないよう! あれは! じんろうがっ
おかーさん! おかあ……っあ、 あっ
[頼るべき母を言葉にして、少女は表情を凍らせました。]
わ、わああああ!?
[恐慌に陥った彼女は、そのまま逃げ去ろうと背を向けました。]
(60) 2013/12/27(Fri) 00時半頃
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……そうね、
勝手だと思うけれど少し安心したわ。
[視界の中に、青年の姿を映しながら囁きを乗せて]
死ななかったらまだ罪が軽いってか?
だとしたら、そりゃちょっと解らねぇけどな。
[だとしたら、それはどこまでも人間くさい感情だと思う。
囁きの響きに、ふと気配のようなものを感じて、
一瞬背後を見遣る。]
結果は大差ないんじゃないか。
[船乗りを船から引き摺り下ろしたのだ。]
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あ、ああああッ!?
[冬支度に厚着した衣服――その先を男に掴まれ、激しく身を踊らせます。 雪の上、石畳を転がり、それでも男がハナを放すことはありません。]
は、放して! 放せ! やあ……! た、助けてェ!
あ、あ、あっ
[少女はそれとは思えないほどの強い力で、男に抵抗します。 片腕とはいえ、肉体労働に従事する男に7歳の子どもが敵う道理はないのです。 やがて。
ぱっ。
雪の中に紅い華が咲き、少女の肌に色を散らしました。]
(64) 2013/12/27(Fri) 01時頃
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え、あ、え
[わけがわからない、そんな表情で少女は男を見返します。
少女の腕が。
爪が長く伸びて。
男の手を切り裂いていました。]
(65) 2013/12/27(Fri) 01時頃
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そうね、
結果は変わらないかもしれない。
……だとしても、
死んでしまうより、よかったと思うわ。
……あんたがそれを言うか。
[苦笑らしき揺らぎがそこに乗る。]
……、そんな風に聞こえていたの。
そうね、わたしにはそれはないものだわ。
[それを求めるには、女の心は老いていた。
失われたものへの怒りも悲しみも、理由にはならない。
ただ朽ちていくことを無為に待つ身であるのなら]
だからきっと、
生きるのも死ぬのも、
おなじようなことね。
……それでも、死んでしまうよりは良い、か?
[蒸し返すように口にする。]
実際、あんたが生きてた事で助かった奴がここにいる訳だしな。
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[脂で汚れためがねが、雪の中に落ちていきました。 氷色の少女の瞳がまるく、自らの腕に注がれています。 雑貨屋でもらったばかりの手袋は裂け、ぎんいろの毛並みに覆われた腕にわずかな抵抗を残すのみでした。
そう。爪のみならず腕さえも。 狼のものへと変わっていたのです。]
ひ、あ、う。 ちが、ちがっ……
[血が。違う。 どちらとも取れるような言葉が口からこぼれ落ちていきました。 男と、血相を変えた女。 ふたりの大人が自失したハナの身体を押さえつけます。 男に腰まで組み付かれ、ハナは荒い息を吐きました。]
(80) 2013/12/27(Fri) 02時頃
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[くぐもった声で言われたそれを、ハナはぽかんとしながら聞いていました。 やがてその言葉を理解したのか、爆発したような声をあげます。]
う、うそだ!! うそだ! うそだうそだうそだ!!
わたしが襲ったんだ! わたしが、わたしがおかーさんを! きっと、きっとおとーさんだって!
[母親の言葉は、確かにハナを追い詰めていました。>>3:163 母のみならず、父すらも殺したのは自分だと、ハナはそう思っていたのです。]
あ、ああああああああ!!
[母の惨劇を思い出したのか、少女は悲痛な声を上げました。 それは高く長く、あたりに響いたのです。**]
(84) 2013/12/27(Fri) 02時半頃
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お使い ハナは、メモを貼った。
2013/12/27(Fri) 02時半頃
お使い ハナは、メモを貼った。
2013/12/27(Fri) 02時半頃
お使い ハナは、メモを貼った。
2013/12/27(Fri) 22時頃
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[セレストがあらん限りの声を上げました。 広場から、診療所の中から。なんだなんだと人が徐々に集まってきます。 その中にはよく見知った顔もいくつも、いくつも。]
あ、あ、あ!
[ふたたび、少女は歯の根を鳴らしました。
人狼だ 人狼だ。 人狼だ!
ひとびとの声が、視線が、戸惑いが、恐怖が、悪意が突き刺さります。 ハナの中でいくつもの景色が弾けて消えました。
やがて母親の呪いと朽ちた首つり台がからだにとけて。
『ころされる!』]
あ、あ、ああああアアア!!
(97) 2013/12/27(Fri) 22時頃
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るうううぅううう ァァアアアア!
(98) 2013/12/27(Fri) 22時頃
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[ついには、牙をむき出しにして、暴れだしたのです。]
(99) 2013/12/27(Fri) 22時頃
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[既に人が集まっている、この状況を覆すのは難しい。]
[昨晩の船乗りなら時間も場所も選ぶ事が出来ていた。
小さな子供の行きそうな場所を、例えば、
隠れ鬼などに使いそうな物陰なんかも含めて見回って、
風除けのある暗がりでその背に狙いを定めた]
[ぴしゃりと霙まじりの雪を踏む足音に振り返っても、
既に逃げおおせることは許さない間合いに入っている。
血の色が弾ける中にあって、それとは似て非なるもの、
夜闇でも光る鮮紅の瞳を男は見ただろうか。
倒れ伏す船乗りから点々と、血の色が通りへ続いていた――]
[一般論は他人事だ。
女の語る言葉は、常に自分自身を除外する。
自らがどこにも属さない者であると知っていた]
ありがとう。
[それは在ることを肯定してくれる言葉だ]
……優しいのね。
[かつて許される場所のあったことを、思い出す]
俺が優しかったら世の中の奴らは8割がた優しいけどな。
[根拠は割愛した。さして愉快な話でもない。]
考えちゃいるがこの状況大分ムリあるぜ……!
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[少女が身を捩るたびに、足元の雪は汚れていきました。 大人二人の力には敵わないのか、体勢が悪いのか、組付かれた男の姿を、荒れ狂うかいなを止める腕を引き離すことが出来ません。 狂乱の中少女の瞳に宿っているのはどこまでも――怯えでした。
やがて武器を持った男たちが示し合わせ、ゆっくりと場を包囲していきます。 少女に逃げ場はどこにも、ありませんでした。]
(107) 2013/12/27(Fri) 23時頃
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私に、優しくしてくれたと思ったのだけど。
……違ったかしら?
[と、戯れのような言葉を交わす時ではなかったが]
そうね……、
人目を集めすぎている。
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[友達、と呼んだ男が両腕を拡げます。 しがみついていた女の力が抜けたころ。 進路を奪われた自警団の面々も怯え怯え、武器を振りかざしていました。 大きく、怯えに濡れた眼が開かれました。
打突音。
悲鳴が高く、辺りに響き渡りました。]
(114) 2013/12/28(Sat) 00時頃
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[少女が最後に見た景色はなんだったのでしょう。
力なく落ちていく眼の光は、ヒューを、セレストを、ヤニクを捉えていました。 離された腕は空を泳ぎ、やがて力を失っていきました。
仕留められた人狼に、野次馬は大いに沸き、どよめきが辺りを支配しました。
自警団の面々は場の状況にかかわらず、少女の身柄を要求したことでしょう。]
(120) 2013/12/28(Sat) 00時半頃
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……つっても俺、何だかんだで
我が身が一番大事なタイプなんだが。
[銀鈴の声に対して、ぼやくような調子でいる。
衆目があるこの場所では、あからさまに人狼を庇えば
立場が悪くなるのは明白なのだった。
ヒューやセレストがそうするのは人間の勝手だが。]
……いいえ、
無理を言ったのはわかっているわ。
ごめんなさいね。
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