299 さよならバイバイ、じゃあ明日。
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[――どうやってこの街に来たか。
死んだ後、生まれ変わる先は狐には決められない。
つまり、たまたまです。としか答えようがないのだった。
そうやって渡り歩いてきた世界の中でも、この街は特におもしろく居心地がよかったので。]
――わたくしは死んで、生まれ変わるためにこの街に来たのですから。
[祈祷の準備は済ませてあった。
榊の枝も仕入れてあったし、朝起きて禊もした。
狐はこの八度目の生が終わりに近付いていることを予感しつつも、他者のために祈り願うこと――即ち狐の思う善行は、死ぬまで続けるつもりであったから。]
[一度目の狐の死は、苦痛と怨嗟に満ちたものであった。
死の間際、手を差し伸べたあの人間がいなければ、それこそ怨念が石と化していたかもしれない。
かつての狐はそれほどの悪狐、八つに分かれた尾を持つ化け狐であった。
悪狐であったが故、狐は数百年にわたり人の世で悪を為し続けた。
狐の尾はその生で悪を為せば増え、善を為せば減る。
かつての狐は九尾に成ろうとして、あと一歩のところで遂に、退治された。]
[致命傷を負いながらも山中に逃げ込んだ狐は、しかし最早命が尽きるのを待つばかり。
そんな狐を見つけたのは、毬栗頭の少年だった。
狐のことなど何も知らない少年は、ただ弱った獣を哀れだと思い、たどたどしい手つきで傷の手当てをし、食べ物を狐の元に運んだ。
少年の手当てはヘタクソで全く功を奏さなかったし、置かれた食べ物を口にする力すら狐には残っていなかったが。
狐は初めて、人の無垢な善意というものに触れた。
それはただ弱っていたからこそのことで。
普段の狐であれば、迂闊にも近付いてきた少年を食い殺して成り代わるくらいのことはしていただろう。
身動きがとれなかったからこそ、狐は初めて善良な人間の顔を、間近でまじまじと見ることとなったのだ。]
[数日後、狐は事切れた。
天寿を待たずして死んだため、それまで生きてきた九尾への長い道のりは全て水の泡、最初からやり直しとなった。
もう一度九尾を目指すか、そうではない道を選ぶか。
狐は最期に見た少年の顔を思い出して。
そういえば礼を言いそびれたな。と思った。]
[以来、狐はあの日の少年にもう一度会うために生き、死に、生まれ変わることを繰り返している。
彼は善き人間であったから、会いにゆく狐もまた善き狐でなければならない。
狐は狐なりの理屈でそう結論し、空狐を経て善なる狐の高み、天狐を目指すことにした。
そうして八度目の生で、狐はこのまぼろしのような街にやってきた。
あと一度。九度目に生まれ変わった時、狐は遂に天狐へと昇る。
そうしたら、あの日の少年に会いにゆく。
そのはず、だったのだが。]
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