190 やどかりさまの、暇潰し
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――部室――
[また、くらりと軽いめまいを覚えては 震える自分の手を見て]
くしゅん!!
[盛大なくしゃみ一つ。]
……え、えと
[エイリとミナカタが、その場で――また例の 仮死状態になっているようだった。]
(0) 2014/08/21(Thu) 00時頃
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[――――いや]
目の錯覚か。 エイリさんは、いる、のな?
[とりあえず倒れたミナカタの側に近づき 呼吸がなく、脈があることを確認した。]
……どうすっかね、もう医務室もいっぱいだろう。 大学側もこんな状況じゃ黙ってない……かもしれない。
(2) 2014/08/21(Thu) 00時頃
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[オレの祈りも、彼女の小さな呟きも。
まるで嘲笑うかのように。
意識は一瞬、鮮明な ア カ イ ロ を見せる。
安曇ちゃんのグラスを握っていた時も、そうだった。
そうだった事を、怖くて、口にしなかった。]
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――部室の外――
[正確には、部室の外だった。 倒れているミナカタを壁に凭れさせる。 ひとりでこの男性を運べるか微妙だったので]
……もうちっとで、解決すりゃいいんですけどね。
[しかしどのくらい寝てないのか。 体が危うい。]
くぁ。
[あくびを一つ漏らし、部室に戻ると 扇風機の前で猫のように丸くなる。]
(3) 2014/08/21(Thu) 00時頃
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[だって、オレなんかが儀式の鍵だなんて。]
───…、…そ だろ。
[もはや自分の体が仮死状態である今、
元に戻れる望みは薄かったが―――]
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[キミタチハ]
俺は
[ダレダイ]
誰だろう―――
(7) 2014/08/21(Thu) 00時半頃
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[オレが白馬の王子なら。
倒れた姫を颯爽と助け出しに行くだろう。
たとえ茨の道であろうと、何も顧みることなく。
オレが魔法使いなら。
身体と魂を繋ぎとめる魔法をかけに駆け出すだろう。
走れば間に合う、そう信じて。
オレが なら。
オレが なら。
オレが なら。
オレが なら。
嗚呼、ああ、唖々、アア。]
[ ───“オレ”は、いつだって物語に登場しない人物。 ]
[眉間に触れたとき()、重なった視線を思い出す。
たった数秒もなかった、長い永い、それ。
部屋を出て確かめにいく事も出来ない。
透けた姿の誰かの声が。
或いはどうしてだろう、俺の声のようにも聞こえる。
紡がれる、紡がれる。
『誰にも、届きやしないんだよ。』
…───と。]
……ごめんね。
[折角、せっかく願ってくれていたのに。
オレが触れなければ、きっと水は満たされていただろうに。
井上さんの方を向いて、一言告げて。
会長を見て、安曇ちゃんの姿の誰かを見て、シノを探して。]
どうすれば、いいん、でしょうね。
[ゆっくりと、視界をめぐらせる。]
[塩なんて効き目がないと、会長や安曇ちゃんがからかっていた。
清める効果も、守る効果もない、ただの食塩。
それでも、そんな食塩を猫のように撫でて離さなかった姿が
あまりにも愛らしかったから。
──その箱が握られたままだと、まだ知る由もなく。
透けた姿が見えないのなら、きっと部屋の外だろう。
王子でも魔法使いでもないオレに、迎えになど行けるはずもなく。]
オレが、────…
[この怪奇現象という物語から“消えて”しまえば ──いい?]
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……ピーコ?
[小さく呟いて、きょろ、きょろと辺りを見回す。 飼い主の身体についていってしまったのだろうかと思いつつ 窓を開けた。]
うおっ!!!
[途端、吹っ飛んでくる極彩色の羽を持つ鳥。 自分を見上げて、餌を強請るのだ。
……。 少しだけ涙ぐみそうに、なった。]
(20) 2014/08/21(Thu) 01時半頃
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エイリ先輩が、キーパーソン――。
[もしそうなら。 グラスになみなみと注がれた水を見て]
……でもそしたらエイリ先輩は どうなるんすか、ね。
(21) 2014/08/21(Thu) 01時半頃
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―――つまり
[そっとグラスに触れる。 エイリ先輩のグラス、水がたくさん入ったそれを]
移していいっすか?エイリ先輩。 今はベッキーさんって言ったほうがいいっすかね。
(34) 2014/08/21(Thu) 02時頃
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オレ一人、“消えた”ところで。
[オレが描く漫画の世界と変わらない。
そこにオレは居ない。
膜に阻まれた人差し指の事も
どこかで鳴らした心の音も
オレは何も、知れていないから。]
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……足りない、ってことは 誰かが
[犠牲に、なるなんて いやなのだけど。 グラスの水をじっと見つめて]
(35) 2014/08/21(Thu) 02時頃
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うっ……
[頭を撫でられる。 そうだ、その通りだ。 エイリ先輩の水を全員に注ぐことで ほかの人々は目を覚まし―――エイリ先輩だけ――]
まじすか。 じゃ、じゃあ、 一応聞いておきたいっす。 誰のキスで――目、覚めたいですか?
[グラスを手に、最後の問いとばかりに小首をかしげた。]
(40) 2014/08/21(Thu) 02時半頃
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『他の何者かになりたいと、一度は考えた事があるだろう。』
杉山 恵に。
井上 恵都に。
月読 鈴に。
菅原 紅子に。
風祭 拓に。
白戸 紫乃に。
安曇 渚に。
御名縣 宗一郎に。
山田 雄一に。
一番なりたがっていたのは“オレ”なのかも、しれないな──…
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―――そっすね。
[微笑んだが前髪で隠れて口元だけに笑み。 エイリ先輩は愛される資格を持っている。 俺は男同士の趣味はないけど。]
……じゃあ、注ぎます―――
[エイリ先輩のグラスから、慎重に均等に そして―――エイリ先輩のグラスは、 空っぽにして**]
(44) 2014/08/21(Thu) 02時半頃
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