56 いつか、どこかで――狼と弓のワルツ――
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―回想:撤退直前>>123― [駆けつけてきたミッシェルに叫ぶ]
駄目だ、ミッシェルさん、一人で敵う相手じゃない!!
[しかし、走りだした馬は、無情にもその場から彼を遠ざけて行く。 声は、届いただろうか。*]
(135) 2011/07/01(Fri) 23時半頃
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ベネット…
[地を駆けてゆく狼の足は、オスカーも驚くほど素早いもので。
敵の合間を縫い、ただ、貪欲に得物を求めて、前へと。
その姿はまさに『狼』其の物。]
姫様がどうかしたのか?
[彼が言いかけたその先を促すように聞いてみたが、士気を高める為の演説へ意識が行っていた。
きちんと聞いていれば良かったと後に後悔するかもしれないが、今はまだわからない。]
こうなってしまっては……それはできないだろうな。
[ムパムピスの願いに、小さく答える。
もっと早い段階で話し合いが纏まっていたらそれは叶ったかもしれないが、それはもう無理だろう。]
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[ムパムピスの発する濁った嗚咽。 そして少年の視界も、最早霞んで全てが二重に見えた]
……こんな、死、
………ゴボッ
[這いずる。 手を伸ばす指先は、震えていた。 もう少しで、届く。 そうしたら、彼の肩を揺すって、しっかりしろ、傷は浅いと言わなくては。
だが、指先はほんの数センチの処で、届かぬまま崩れ落ちる。 まるで叶わぬ片思いにも似た、切実さで。
ダスク、ヴラズィ、アモネス…戦場に居る馬たちのことを思う。 もう鬣を梳いてやれないことに、胸中でごめん、と呟いた]
(147) 2011/07/02(Sat) 00時頃
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[砂と汗と血が舞う。
敵味方問わず聞こえる怒声の中、不意に聞こえてきた声に、矢を番えたまま固まった。]
なんだ?
今そんな話をしても仕方が――おい、どうした!
返事をしろ!!
[急に途切れた声に、嫌な予感が胸を過ぎった。]
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[>>151 しっかりしろ、そうかけられる声には聞き覚えがあった。 確か、そう、物資を頼む際によく聞いた]
……
[薄く唇を動かしたが、言葉を紡ぐことはできなかった。 代わりに、再びごぽりと肺から溢れた赤が、口から零れた]
(159) 2011/07/02(Sat) 00時頃
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[負傷の衝撃で途切れた意識が息を吹き返した。
しかし、それは再び、少しずつ細っていくだろう]
あ、あああ……
神様、どうかフィリップ君をお守りください。
私はどうなっても構いません、この子を助けてください。
……お願いします、お願いします――っ
[心の声は、苦痛と恐怖にがたがたと震えていた。]
[息が、言葉が、詰まった。
一瞬の出来事に、崩れ落ちる彼の身体に。
自分を覆う全ての『音』が、止んだ気がした――――]
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[既に血を失い過ぎた身体は、 目は光を失い、外界の音すら拾うことができない。 バーナードが衛生兵を呼ぶ声も
蒼褪めて土と血に塗れた顔、薄く開かれていた瞼は重く落ち。 痙攣するように震えていた身体が、完全に沈黙した。]
(172) 2011/07/02(Sat) 00時半頃
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何があった!
お前はこっちに来ていないんだろう?
なのにどうして、そんな――
[震える声に、何が起こったのか分からぬまま必死に声を掛ける。]
何があったのか分からないが、大丈夫だ。
お前が祈るのなら神は聞き届けてくれる。
お前ほど祈っている奴なんて他にいないじゃないか。
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―ガイル・カノッサ>>171― [自分を誰かと勘違いしている様子の女騎士に、面白くもなさそうな冷やかな視線を投げた。 通り魔などと言う、事実は彼にはなく、彼女にも見覚えは無い。 一頻り剣の相手をしたが、機を見て打ち込むと、剣を払うように突っぱねる]
『…下らん人違いだ』
[再び騎乗すると、その場を立ち去る。 しかし、ヴェスパタインの姿が見えれば、翡翠を細めて、そちらへと駆けた]
(179) 2011/07/02(Sat) 00時半頃
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これからなのに……
……ごめんね……?
[漸く覚悟を決める事ができたばかりなのに。
もう、こうして死ぬことになるなんて、残念。
もう視えないイアンに聲を向ける]
……君は 生きてて……
[だから、せめてイアンが生きてくれる事を祈る]
[最期に溢す思いは、たったいま思いついた。
純粋な願い、もしくは僕の夢……]
夢が叶うなら……
また……君とこうしていたいな………
[一人きりの重責を分け合ってくれて。
その、僕を不甲斐無いと思っても]
うれし……かったんだ……
[この夢の続きを。
次がもしもあるなら、もし立場が変わって居ても良い。
どんな出会いでもいいから…… ]
まってても………いい……かな………
[あぁ……頭の中もぼやけてきた。
瞼が消えて、心が融けて行くような不思議な感覚]
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