142 紅月の村【人狼vs吸血鬼RP】
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[一体どれだけの時間、そうしていただろうか。 青年は涙を服の裾で拭い、開いたままの玄関の扉に触れる。
本性を知られた青年の心は絶望で今にも砕けてしまいそうになっていた。 ―けれど自分にはやらなければならない事がある、と己を繋ぎとめる。]
…サミュエル。
ルーカス…。
[闇の中に彼らが‘居る’のは獣の感覚で察知していた。
邪魔な自分を村から追い出すなり、殺すなりするのはいい。 けれど同族と村人を守れるよう、自分に出来る最善の行動を取ろうと。
青年は一度踵を返して書斎に血石の包まれた布を取りに戻ると、彼らを探しに夜闇の中へ足を踏み入れる。**]
(44) 蒼生 2013/09/04(Wed) 01時半頃
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保険調査 ライジは、メモを貼った。
蒼生 2013/09/04(Wed) 01時半頃
―― 敵は排除するだけ。
ねえ、そうでしょ、 "ママ"
―― ライジさん、
[この聲は彼には届かずとも、
背後で牙を剥く魔性には気づくだろう、と。]
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[―オクト村には、バートレット家以外にも人狼が居た。
同じ罪を共有する者として非常時には手を組んで乗り切る事が出来るよう、彼らには交流があった。 バートレット家の血脈には人間が入る事はなかったが、彼が人間と交わる事で同族の絆が消える事は無かった。
十数年前、その家に一代置いて人狼の子が生まれた。 人間の両親から生まれたその子供は音を持たず、仲間の声も聞く事が出来なかった。
アルフレッドはか弱き子供を哀れに思った。 人狼としての力に目覚めなければ、宿敵に対抗する手段を持たないのと同じ。
吸血鬼と人狼は互いを知覚する事が出来る。 この音を持たぬ子供も、きっと吸血鬼に捕捉されるだろう、と。]
(53) 蒼生 2013/09/04(Wed) 12時半頃
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[一方で、先に生を受けていた彼の息子は‘人間’らしく成長していた。 自分で狩りをさせるようになってから、息子が苦悩するのにアルフレッドは気付いていた。
アルフレッドは二人の子供の将来を危ぶんだ。 果たしてこの子たちは家族の庇護を受けなくなってから生きていけるのだろうか、と。
けれど友人を殺した経験から、吸血鬼に対抗する手段を息子に伝える事には躊躇いがあった。 その時には、自分の罪を告白せねばならない。 命を奪う事を畏れる傾向にある息子に自分がどんな目で見られるのか。
―アルフレッドはそれが恐ろしかった。]
(54) 蒼生 2013/09/04(Wed) 12時半頃
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[アルフレッドは音を持たぬ子供を他の村の子供と区別はしなかった。 彼自身に罪はなく、この村の教師として人間に注ぐのと同じ愛情を持って接した。
アルフレッドの息子は内向的な性格で、外に出て遊ぶ事は少なかった。 それは好意的に村人に受け取られてはいたが、人狼として…村の護り手としては彼の性質は心もとない。
けれど年が離れているものの、二人の子供は本を通して交流し、屋敷にも訪れるようになっていた。
それをアルフレッドは良い傾向だと思った。 自分達もずっと息子と一緒にいられるわけではない。
持つ力が弱くとも、協力すれば難所を切り抜けられるかもしれない、と。]
(55) 蒼生 2013/09/04(Wed) 12時半頃
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[暗雲が彼らを覆い始めたのは、音もたぬ子の祖父が同族と彼を引き合わせようとし始めてからだった。
老い先短いであろう老人の心配は身に染みるほど分かった。 けれど、引き合わせる同族の全てが善なる心を持ち合わせているとは限らない。 何度か対話の機会を持って説得を試みたが、老人は首を縦には振らなかった。
アルフレッドは村人に害が及ばぬよう、彼らの動向に目を光らせる事にした。 幸いにも、客人たちによって村が荒らされる事態はなかった。
しかし、アルフレッドは不慮の事故による怪我が原因で、息子に吸血鬼への対抗手段を告げぬまま、妻の後を追うようにして逝った。 残された息子は何も知らぬまま、三年の時を膨大な本に満たされた屋敷の中でそれらに埋もれるようにして過ごした。*]
(56) 蒼生 2013/09/04(Wed) 12時半頃
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[吸血鬼の間で交わされる声は人狼の青年には聞こえない。 けれど闇夜に突如浮かび上がった宿敵の気配>>52に獣の本能は敏感に反応し。
いつもの青年ではありえない速度で振り返り、相手を視認すれば名前が零れ落ちた。]
…っ…、サミュエル…。
[じわりと冷たい汗が背中を伝う。
彼が此処にいるという事は、攻芸はどうなったのか。 四肢が緊張で強張る。]
(63) 蒼生 2013/09/04(Wed) 21時頃
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[青年は彼の姿を目に収め、距離を取りつつも手話を交えながら質問を投げ掛ける。 暗闇への配慮は、恐らく闇の眷属には必要ないだろう、と。]
攻芸さんには会った? …彼は無事なのかい。
[彼から返事が返ってこなかったのは、返り討ちになった所為なのか。 出会ったのならば、戦いは避けられなかっただろう。
どうか無事であって欲しい、と祈りを込めて彼に問う。]
(65) 蒼生 2013/09/04(Wed) 21時頃
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[サミュエルから返事はあっただろうか。 宿敵を前にして、昂ぶる獣の本能を理性でねじ伏せて更に質問を重ねる。]
サイモンを殺したのはルーカス? それとも君?
この村から離れていた間に何があったんだい。
…ずっと吸血鬼だったわけじゃないだろう。 だって君は…。
(66) 蒼生 2013/09/04(Wed) 21時頃
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[もし何かあっても、彼は味方だと思っていた。 サミュエルからは、薄らとだけど同族の気配を感じていたから。
けれど今対峙するサミュエルからは同族ではなく、宿敵の気配を感じる。 …それも先日に感じたものよりもずっと濃い気配が。
―村を離れている間に、何かがあったのだ。 彼の在り方を覆すような何かが。]
(67) 蒼生 2013/09/04(Wed) 21時頃
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[青年は父の教え子達と他愛もない話をするのが好きだった。 中でも、サミュエルといると妙に落ち着く。 それは彼が同族の気配を纏っているからだと青年は思っていた。
彼と初めて会った時に分かった。 サミュエルは自分と近い存在だと。
けれど彼に‘声’を飛ばしてみたけれど返事は返ってこなかった。 何度か繰り返した後に父に尋ねたが、そういう子もいるのだと言われた。
―青年はサミュエルを人狼に限りなく近い存在として認識した。]
(68) 蒼生 2013/09/04(Wed) 21時頃
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何で君が…
吸血鬼なんかに。
[血を吐くような思いで言葉を紡ぐ。
知ってしまえばもう、後には戻れない。
獣の本能が告げる。 ―人狼と吸血鬼は共には在れない。 どちらかが倒れない限り、平穏は訪れないのだ、と。
鉄色に薄らと涙が滲んだ。]
(70) 蒼生 2013/09/04(Wed) 21時頃
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保険調査 ライジは、メモを貼った。
蒼生 2013/09/04(Wed) 21時半頃
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[サミュエルの手が紡ぐ言葉に青年は意識を集中させる。 闇夜の中でも、獣の瞳は彼の手の動きを容易く捉えられていた。
>>91やっぱり、と彼は言った。 違うと偽る事はせず、けれど肯定の言葉も紡がずに青年は僅かに目を伏せる。
同族の安否を尋ねる問いに対しての返答は「無事かどうかは知らない」。 つまりは彼は他の者の手によって害されたか、囚われているのか。 一人で行かせるべきではなかった、と青年は唇を噛む。
ややあって、一度唇を引き結んでから更に問いを投げ掛けた。>>66]
(96) 蒼生 2013/09/05(Thu) 18時半頃
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[>>92青年はやっとサミュエルの碧眼に怒りが、そして明確な敵意が滲むのに気付いた。 ―変色した瞳はまるで血のように紅く、纏う殺気は皮膚を刺すようで。 昔馴染みから発せられるそれは青年をじりじりと消耗させる。 彼をそうさせたのは自分だ。
けれど仲間を、という言葉にはどうして、と言葉が漏れそうになった。 ―この村には、父や母や自分もいた。 それでは足りなかったのか。 信用出来なかったのか。 父と彼の祖父との間にあったやり取りを、青年は知らなかった。]
(97) 蒼生 2013/09/05(Thu) 18時半頃
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[>>93続く言葉が躊躇うように感じたのは、気の所為だろうか。 青年は彼の言葉を読み取ろうと涙が滲む目を凝らす。
…いつか離れる事があったとしても、まだ「戻れた」?
まだ、「繋がって」いられた?]
―…っ。
[青年は鉄色を大きく見開く。
「殺した」。 自分が、サミュエルを?
けれどその言葉に衝撃を受けている暇もなく。]
(98) 蒼生 2013/09/05(Thu) 18時半頃
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[―信じていた、という彼の‘言葉’が青年の胸を深く貫く。 人狼と吸血鬼は宿敵なのに、彼は自分を信じていたというのか。 …自分は彼の信頼を裏切ったのだ。]
―っ…。
[サイモンの遺体が人狼の仕業のように偽装されていたと聞いて、青年は吸血鬼が邪魔な人狼の所為に見せかけようとしているのだと思った。 青年の本性を知るのは、かつては同族の気配を今は吸血鬼の気配を纏う昔馴染みだけ。
どうしてこんな事をするのだ、と思った。 自分達はこの村で静かに暮らしたいだけなのに。
実行犯は他にいて、サミュエルがした事ではないと思いたかったが、結果として青年は攻芸に彼の家を教えた。 彼は吸血鬼だと、本能が告げていたから。
それが村人たちを守る事なのだと疑わずに。]
(99) 蒼生 2013/09/05(Thu) 19時頃
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[先に手を離したのは、
自分の方だったのだ。]
(100) 蒼生 2013/09/05(Thu) 19時頃
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[一族がそうしてきたように、青年もまたこの村を、村人達を愛した。 …否、正体がばれたと分かっても変わらず愛している。
けれど‘仲間’一人守れずに、村が守れる筈もない。]
……。
[絶望的な面持ちで、青年は立ち尽くす。]
(101) 蒼生 2013/09/05(Thu) 19時頃
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…僕を罰するべきは君だ。
[心折れた青年は宿敵の前で膝をつき、力なく座り込んだ。 本能は今も戦えと叫ぶけれど、青年はその声から耳を塞ぐ。 人狼ではなく、‘ライジ’として。 彼の怒りを、罰を受けなければいけないと思った。
人狼の身体は人間より頑丈に出来ていて、簡単には死なない。 このまま切り裂かれようが、命尽きるまで痛苦を味合わされようが。
それでも構わない。]
(102) 蒼生 2013/09/05(Thu) 19時頃
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保険調査 ライジは、メモを貼った。
蒼生 2013/09/05(Thu) 19時頃
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―…。
[青年は無言でサミュエルを見上げる。 座り込んだ青年からは、彼の顔は遠い。
まるで自分達の間に出来た距離のようだ、と青年は思った。
サミュエルは紅色の双眸を細め、諦観と、深い哀しみを秘めた微笑みをその顔に湛えている。
あぁ、 自分は彼の事も大事で、守りたかったのに。
――壊してしまった。
青年の鉄色の瞳から、涙が一滴零れ落ちた。]
(110) 蒼生 2013/09/05(Thu) 21時頃
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[>>112青年は、サミュエルが自分の前に膝をつくのを昴と眺めていた。 涙を湛えた瞳はほんの少しだけ熱い。]
―…。
[>>114抱き締められ、告げられた言葉。 ―サミュエルの肉声を聞くのは久しぶりかもしれない。 首筋に息がかかれば、‘終わり’を感じて鉄色の目をゆっくりと閉じた。 溜まっていた涙が、目尻を伝う。]
(115) 蒼生 2013/09/05(Thu) 22時半頃
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―さよなら。
[それはサミュエルには届かない言葉。
もしかしたら、仲間には届くかもしれないけれど。]
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[―首筋に吸血鬼の牙が付き立てられる。 走った鈍い痛み、血を吸われる感覚に喉が震え、口から呻き声が漏れた。]
う、ぁ…っ…。
[獣の本能は暴れ回ろうとする。
―宿敵に命を奪われる事を許すな、戦えと。
けれど青年は爪が食い込む程に拳を握りしめてそれを抑え込んだ。]
(117) 蒼生 2013/09/05(Thu) 23時頃
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―逃げて下さい。
少しでも遠くに。
この村は貴方の故郷ではないのだから。
[だから吸血鬼に捕らわれぬよう、早々に立ち去れ、と。
血が吸われて遠のき始める意識の中、仲間に声を飛ばす。
彼は生きているだろうか。
この声は届くだろうか。
―そこまで考える余裕はなかった。]
…生き、て。
[人狼の生は人間と同じく終わりあるもの。
それならば、彼の思う生を生きて欲しい。
何処まで形になったかは分からないが、青年は意識ある限り繰り返した。*]
―― もう、 人狼はいなくなったよ。
[同胞に告げて、口元を拭う。]
―― わかってる。
[ゆるりと、青を取り戻すまえに、小さく呟いた*]
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