223 豊葦原の花祭
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-いくばくかの時間のあと-
[空になった甘酒の鍋の残りを杯に流し込みながら、つぶやく。]
お狐様の予言、当たったにゃァ―――。
[小さな小さなお狐様を思い返して>>1:90、少しだけ口元をほころばせた。 桜の花びらが舞い散る中、あの小さなお狐様は探し人に逢えただろうか。]
『その甘酒、くれるかい?』
[誰かがおもんに声をかける。手の中の杯を少し見つめてから。]
……悪いにゃァ、これはもう予約済みだにィ。
[あの小さいお狐様がもしも戻ってきたら渡そうと―――白く灰がちになった火鉢の横、少しぬくもりの残る場所におもんは甘酒を置いた。]**
(1) sainos 2015/04/22(Wed) 01時半頃
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-屋台にて-
[淡墨桜の花びらが舞う。
花びらがおもんの肩に触れると、ぢぢ、と小さな音を立てて灰になる。
――化けるのは苦手だ。 肩を少し払うふりをして、内側から顔を出そうとする鬼火を消す。
干物をあぶる香りに、飲兵衛が寄ってくる。]
……あィ、うるめ上がったにゃァ!
[売り尽くして帰り支度をしている屋台もあるが、おもんはまだ終い支度をしていなかった。 今日持ってきたものを売り切るまでは。
―――桜が散りきるまでは。]**
(15) sainos 2015/04/22(Wed) 18時頃
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[一分。一秒。
長く咲きたい。
それは淡墨桜の望みだった。
散ってしまうのは、終わりが来るのは、どうしたって仕方が無い。そういう風に出来ているから。
だが、散ってしまえば自分の姿は人目からは掻き消えてしまう。
理由なんて分からない。けれど、葉桜や、落ち葉や、冬枯れの桜を愛でる者などそうは居ない。
恐らくそういう事なのだ。
そういう、役割、なのだろう。と。
だからこそ、一秒、一瞬、ひと目でも。長く咲いていたかった。散ってしまうのは、終わってしまうのは、仕方が無いことだ。
仕方が無い、けれど、]
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[空の端が薄い紫から白く染まりつつあった。]
―――時間かにゃァ。
[すでに辺りに人気はまばらで、背負子の中の食べ物飲み物もおおかた出尽くした。
名残惜し気にのろのろと片づけに入る。 杯を集めて重ね、食べた後のゴミは頭陀袋に詰めて村の衆が集めているゴミ置き場へ。 一息ついて、取っておいたマタタビ酒の杯を見ると花びらが浮かんでいた。]
乙なもんだにィ。
[淡墨桜はすでに大方散りかけているように思える。それでもなお、桜を振り仰いだ。 もったいなげに、ちびりちびりと酒を飲めば、徐々にその春の魔力が薄れてきたのか、指の先、つま先にほんのりと青い鬼火が揺らめき、触れる花弁を焦がした。
すっかり消えてしまった火鉢の横、一杯だけ取っておいた甘酒はまだそこにあった。]
(73) sainos 2015/04/25(Sat) 15時頃
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あの子はどっちかにゃァ。
[生者であればおそらくは己がいるべき場所へ帰るのだろう。 だが。]
―――あっちの仕事はしたくないんだよにィ
[死者であれば、火車の自分は見過ごすわけにはいかず。 まして年端もいかないあのお狐様は、きっと賽の河原にお連れしなければならなくて。
この桜の下だから許される死者と生者の邂逅は、つまり桜が散ってしまえば許されざることで。 酒のせいでまとまらない頭を振って、杯に残った最後のマタタビ酒を飲みほした。]
(74) sainos 2015/04/25(Sat) 15時頃
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[かしゃり、かしゃり。
背負子の中身が歩くたび音を立てる。 大股で歩くたび見える白い足は、ほのかに青い燐光を帯びていた。]
―――着物が焦げちゃうにィ。
[ねぐらに戻る前に脱いでしまおうか。そうも思ったが、名残が惜しくて。
かしゃり、かしゃり。
朝焼けの道を青い鬼火の跡がふわりと通る。]
(81) sainos 2015/04/25(Sat) 23時頃
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[ねぐらについたのは、朝日が昇り切る前だったか。 慌てて帯を外し、着物を脱いだ。
薄暗い穴倉の中が、鬼火の光で照らされ、黒い闇のような毛皮が現れる。
ああ、今年も。]
楽しかったにゃァ―――。
[あの恋い焦がれた膝の持ち主には今年もやっぱり会えなかったけれど。]
(82) sainos 2015/04/25(Sat) 23時頃
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[前脚に力を入れぐっと体を伸ばし、大きくくぁあと欠伸をした。
一晩中商売していたのだ。 心地よい酔いも手伝って、毛布のような眠気が体を包んでいた。
くるりと丸まり、来年は何を作ろうかなどと考えているうちに、意識はするすると夢の中へ溶けていった。]
-了-
(83) sainos 2015/04/25(Sat) 23時頃
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[死というものがなんなのか、木である己には分からない。
だから、葉桜の夏も、落ち葉の秋も、木枯らしの冬も。待ち続けた。
途中、違う場所に植え替えられる事になったのは、とても困ったけれど。どうすることも出来ないから、せめて人目につくよう、大きく育ては良いと思った。
慎重に枝葉と根を伸ばし、光を沢山浴びて、色を幹の内に溜め込み、春には精一杯、美しく。
一番きれいに咲いたなら、己を見間違えずにきっと見付けてくれる。
だってあのひとは帰ってくると言ったのだ。
それは、己がこの世に生じて一番最初の約束だったのだ。
そうやって帰りを待つ間に、気が付けばたくさんの人との約束が積み上がっていた。
また来年。
また来年。
きっと見に来よう。
果たされる約束と、果たされない約束。幾重にも積み重なって、そうしてとうとう古木と呼ばれるほど年輪が重なった頃。
自分が『何』なのか、ようやく気が付いた。]
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