270 食人村忌譚
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巫女 ゆりは、メモを貼った。
gurik0 2017/12/04(Mon) 08時半頃
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嫌うわけ、ない。 こうしてまた姉さんと話せる日を 私は、ずっと待ってた。
姉さんの部屋だって、あの日のまま、ずっと――……
[>>7:+23きっと村を優しく吹き抜ける風は、 神社の一室の障子窓をも揺らすのでしょう。
ふたりが暮らした場所。 ふたりがひとつだった場所。 ふたりが帰るはずだった場所。
少女は優しく姉を抱きしめ、 そうして求めていた温もりを手に入れたのでございました]
(33) gurik0 2017/12/06(Wed) 11時頃
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うん、“次”も。 私は姉さんの妹に生まれたい。
[やくそく、と。 その幼い指を、姉の小指に絡ませるのでした。
ぽろぽろと流れ落ちる涙は、悲しみからではありません。 死してやっと、姉妹はひとつのなれたのですから。
さやさやと、優しく風が木々を揺らしておりました]
(34) gurik0 2017/12/06(Wed) 11時頃
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だから。行こう。
また、私たちは生まれ変わって。姉妹になって。 たくさんたくさん一緒に遊んで。 一緒に大きくなって。 きっと喧嘩もして――……
だけど次は、もっと早く仲直りするの。
[僅かに滲む後悔。 ですが、遅すぎたなどということはありません。 死ははじまりなのですから。 姉妹はまたひとつになれたのですから。
あの日のように、姉の手を引いて 少女は村を駆けだすのです]
(35) gurik0 2017/12/06(Wed) 11時頃
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[あたたかい場所へ。ひかり射す場所へ――……*]
(36) gurik0 2017/12/06(Wed) 11時頃
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そうして、村の人たちは みんなみんな死んでしまいました。
めでたしめでたし。
[幼子に昔話を語る母のように、優しく優しく。 風は櫻子の頭を撫でるのでしょう]
死は幸福なのよ、櫻子。 ほら、死した私たちはこんなにも幸せでしょう。 だから、こんな物語の最後も悲しむ必要はないの。
[慈悲深き笑みを浮かべ、風は優しく櫻子を包むのです]
(37) gurik0 2017/12/06(Wed) 11時半頃
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さて、これで物語はおしまい。
[そっと風は櫻子の瞼に手をかざします]
よい子は寝なくてはいけないわ。 さあ目を閉じて。
[風がさやさやと歌います。 永遠に目覚めぬ眠りを誘う子守唄を。 櫻子が眠るまで。ずっと、ずっと――……**]
(38) gurik0 2017/12/06(Wed) 11時半頃
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[生温い風に四つ足は目を覚ます。
本来なら雪解けもまだ先、鼻先を掠めるのは
生木を凍らせる張り詰めた大気。
だが今、四つ足の鼻を湿らせるのは温度を持った風。
命の気配を湛えているくせに、ぼたぼたと零していく。
にぃ、と嗤った四つ足の口は深く裂けて、
赤い舌が鋭い牙を研ぎ直すように舐め拭いた]
グルルルル……。
[低い唸り声が喉の奥から漏れる。
前後に動く耳は片方しかないが、四方から聴こえる音を
逃すことは無い。
匂いと音を頼りに四つ足は雪に足を沈めながら
慎重に進めていく。
後ろから付いてくる仲間たちも真似ながら進む先に。
遠く遠くに雪に埋もれてある動物が
群れて住まう場所があった。
普段余程腹を空かせない限り、獣は近付かない場所]
[だが離れて動くドングリの様な影が見えて。
四つ足たちは動きを止めた。
そうして風下になるようにゆっくりゆっくり位置を変え、
雪の溜まり場に身を潜め。
茶褐色の毛並みの四つ足が距離を詰める。
どうしてその動物達がここにいるのか。
四つ足には関係なかった。
ただ、腹の膨らんだ柔らかそうな肉の匂いを
運ぶ動物たちに目をぎらつかせ。
道標のように赤い筋を付けた雪の上を、
一拍置いて一気に駆け抜けた]
ガルルルルッッッ!!
[この動物たちは群れになっても牙はなく、
時として火を噴く道具を使うのは知っていた。
だからまずその群れの首領を狙い、顔を潰す。
たちまち統制を失った動物の群れなど
後は好きに食い殺すだけだ。
これだけあれば暫く群れは生き抜いていくだろう。
早速柔らかで栄養満点な
腹の中身から食らい付いて気付く。
この血も肉も、この動物独特のものか。
何処かで口にした覚えがあった]
[何処でだったか。
牙を深紅に染めた獣は少し悩むような素振りを見せたが、
すぐに邪魔が入らぬうちにと、ガツガツと
食い進める。
何一つ変わっていない。
獣が家畜を食い殺しては生きる話**]
[崩れ落ちた、短い刀の刺さった身体
最期の鳴き声に触れて、ススムは眼を閉じる。
望みは叶わなかった。
人として生きる事
獣のように、喰って交わり死ぬだけの一生ではなく
誰ぞの役に立てる事、知識を追いかける事
身体だけでなく、情のある交わりを持つ事
どれ一つ成し遂げぬまま
意識が薄れていく]
[その後、何年経っても
ススムのような青年が
村に生まれる事は無かった**]
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―― いつかどこかで ――
[おぎゃあ、おぎゃあ。 村のどこかで赤子が産声を上げました]
頑張りましたねえ、双子ですよ。 どちらの子も女の子です。
[産婆が母親に笑みを投げかけ、そして その目が大きく見開かれたのです]
あら、これは。
[真白な布団に寝かされた双子の小さな掌。 その小指と小指が絡まり、まるで――……]
(72) gurik0 2017/12/07(Thu) 00時半頃
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指切りしているみたいですねえ。>>34
[風が吹き込み、 ふわりと真白い窓のカーテンが揺れました]
生まれてくる前から きっと姉妹は仲が良かったのねえ。
[温かな日差しと、穏やかな風。 命は巡ってゆくのです。いつまでも、いつまでも**]
(73) gurik0 2017/12/07(Thu) 00時半頃
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