219 FESを強いられし非戦場
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− 次元宇宙の揺籠 −
[不機嫌そうな獅子の唸り声に狼と山羊の頭が目を覚ます。
同時に獣を父と呼ぶ天狼が身じろいだ。
全てを腐らせ、死を齎す漆黒の霧と焔の体毛は、
眠る天狼の為の敷物でもあり被せ物として、星が瞬く
天空の彩をしたビロードの様な肌触りのモノへと変わっていた。
たしたし、と天狼を護る様に彼女の身体に被せていた
尾で軽く彼女を叩くようにあやす。]
『なんでもない』
『まだおやすみ』
『おやすみ』
[眠い目を擦り、起き掛けた天狼の瞼を狼の舌がぺろりと舐める。]
『上手くいかなかったか』
『上手くいかなかった』
『上手くいかないのだな』
[不機嫌な獅子に狼と山羊は小さく嗤う。
幾つかの世界から分離した戦士達を封じ込めた世界。
その世界から滅ぼしていけば、他の世界も雪崩を打つ様に
壊れて行くと考えたのだが。]
『未だ抵抗するか』
『未だ抵抗するな』
『未だ抵抗がある』
[結果は戦士達の願いが勝った形]
『未だその時ではないか』
『未だその時ではないな』
『未だその時は来ていない』
[力の一部だけでは彼らを抑える事は出来ない様だった。
本気で滅ぼすならここで眠り続けている本体で出る必要がある。]
『だが未だイイだろう』
『未だ良いのではないか』
『未だ寝ていようか』
[自分たちの世界が滅びるとしても、慈悲よりも
自分たちの世界で生きようと言う強い意志がある限り。]
『俺達が動くまで、もうちょっと時間をやろうじゃないか。』
[それまで寝ていよう。
一般人の様に関われて楽しい夢も見れた事だし。
狼と山羊の欠伸に釣られて獅子もくわぁぁと口を開ける。
そしてそのまま誰も介入する事を許さない終焉の揺り篭に
天狼を抱いて獣は再び永い眠りに就く為に、頭を垂れた**]
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――――新しい宇宙が生まれる。
そこにあった一塊の質量が、エネルギーへと変じる。
そこから、光がみじろぎもできぬ間に、あらゆる物が生まれる。
大いなる爆発。事象の始まり。
世界はどこまでも広大な陰を帯びた空間と、それによって生じる、大海の一滴のような陽の熱によって、満ちる。
(17) (so) 2015/03/30(Mon) 21時頃
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ああ……これが世界なんだ。
[一つの宇宙の始まりを目にして、自分の全てを取り戻した一介の女教師は思った。]
宇宙というのはこういうものなんだ。果てのないものだけれど、その中のほんの一滴に、人間の思いが宿る。希望の熱が宿るんだ。
そういう事、考えもしなかったな。 ……まあ、いい。ここでの生活も悪くなかったが、私は元の自分に戻ろう。 今度は陽のいるあの世界で、また普通の物理教師に戻って平穏に暮らすんだ。同朋達が監理してきたあの星々を、私はいつまでも、最後の超上位種として見続けていこう。
(18) (so) 2015/03/30(Mon) 21時頃
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万愛子も、エリアスも……獣《ベースティア》も。 そういう事を思い出させてくれたのだから、少しは感謝していこう。 ありがとう。そして……さらばだ。 ここで出会った者達の全てに。
[その姿は、光の中へと跳んで、消えていった**]
(19) (so) 2015/03/30(Mon) 21時頃
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あ〜、失敗したぁ。
[刻の奔流の中、本が漂う。
ページに浮かぶ文字は、少年だったものの意識]
何が足りなかったのかなぁ。
学校も、ちゃんと綺麗に作ったはずなんだけどなぁ。
[呟きの文字が流れてゆく]
心臓も、星の魔女に残してきちゃった。
どうしようかなあ。
[浮かんでは消える、文字]
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