人狼議事


158 雪の夜に

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ホレーショー! 今日がお前の命日だ!





……喰い裂かれることを望んでいるようだわ。


 ……? 何が?

[唐突に零された囁きの、意図は察せないまま。]


― 昨夜 ―

[ティモシーの雑貨屋を訪れた後のホレーショーは、
 恐らくはその足で、墓地に出向いただろう。

 墓前の祈りを妨げる事はないが、その後のどこかで、
 旅人は船乗りに声をかける。]

[それは、ハナとはぐれてしまったために、
 探すのを手伝ってほしい、と言ったものだった。]


 居る。

[確信だった。
 一夜に二人、それも一方は"己のものでない"襲撃。]

 けど、あの男が騒ぐまでは、人狼なんていないみたいだった。
 どう言う事だ……?


[ハナの事はホレーショーにとっても、そう簡単には
 放っておける事でもなかったに違いない。

 やがて陽が落ち、人を探すにも難しくなった暗闇で、
 狼は人知れず牙を剥いた。**]


[実際、この人狼にとっては、
 普通の狩りでもなく最低限の摂取でもない、
 生きている範囲の最大限、という加減は、
 初めての事であった。]

[とは言え、人間の生死の境はよくよく把握している。
 壮健な船乗り、余程の不幸が重ならなければ
 命を落とす事はない。]


(――陸の上でも、何があるか解ったもんじゃないからな。)




一人は、あなた?
……もう一人は、別の子の仕業?


 よっぽど手の込んだ偽装じゃなけりゃ、そうなる。

[軽く肯定した。]

 ……二人目の方は、死体を見れてないんでな。
 けど、医者に運び込まれた上で『喰われた』っつってるんだ、
 ちょっとやそっとの見間違いじゃないだろう。


声も聞こえないのに、……不思議ね。

[こんな風に同胞に遭遇したら、
どうするものなのか、少し気にはなったが]

ということは、
……あなたは殺さなかったのね。
襲った、相手を。

[どこか安堵のようなものが声音に混ざる]


 そうだな。

[向こうも、自分以外の人狼の存在に気付いて良い筈なのだが。
 何らか理由があるのだろうと、想像を巡らす位しか出来ない。]

 んー? あぁ。

 ……どうして? 安心でもした?


……そうね、
勝手だと思うけれど少し安心したわ。

[視界の中に、青年の姿を映しながら囁きを乗せて]


 死ななかったらまだ罪が軽いってか?
 だとしたら、そりゃちょっと解らねぇけどな。

[だとしたら、それはどこまでも人間くさい感情だと思う。
 囁きの響きに、ふと気配のようなものを感じて、
 一瞬背後を見遣る。]

 結果は大差ないんじゃないか。

[船乗りを船から引き摺り下ろしたのだ。]


そうね、
結果は変わらないかもしれない。
……だとしても、

死んでしまうより、よかったと思うわ。


 ……あんたがそれを言うか。

[苦笑らしき揺らぎがそこに乗る。]




……やっぱり、可笑しいかしら。


 ――だって、生きる理由が欲しいんだろう?



……、そんな風に聞こえていたの。
そうね、わたしにはそれはないものだわ。

[それを求めるには、女の心は老いていた。
失われたものへの怒りも悲しみも、理由にはならない。
ただ朽ちていくことを無為に待つ身であるのなら]

だからきっと、
生きるのも死ぬのも、
おなじようなことね。


 ……それでも、死んでしまうよりは良い、か?

[蒸し返すように口にする。]

 実際、あんたが生きてた事で助かった奴がここにいる訳だしな。


[既に人が集まっている、この状況を覆すのは難しい。]

[昨晩の船乗りなら時間も場所も選ぶ事が出来ていた。
 小さな子供の行きそうな場所を、例えば、
 隠れ鬼などに使いそうな物陰なんかも含めて見回って、
 風除けのある暗がりでその背に狙いを定めた]

[ぴしゃりと霙まじりの雪を踏む足音に振り返っても、
 既に逃げおおせることは許さない間合いに入っている。

 血の色が弾ける中にあって、それとは似て非なるもの、
 夜闇でも光る鮮紅の瞳を男は見ただろうか。

 倒れ伏す船乗りから点々と、血の色が通りへ続いていた――]


[一般論は他人事だ。
女の語る言葉は、常に自分自身を除外する。
自らがどこにも属さない者であると知っていた]

ありがとう。

[それは在ることを肯定してくれる言葉だ]

……優しいのね。

[かつて許される場所のあったことを、思い出す]




……助けて、あげられないかしら。


 俺が優しかったら世の中の奴らは8割がた優しいけどな。

[根拠は割愛した。さして愉快な話でもない。]

 考えちゃいるがこの状況大分ムリあるぜ……!


私に、優しくしてくれたと思ったのだけど。
……違ったかしら?

[と、戯れのような言葉を交わす時ではなかったが]

そうね……、
人目を集めすぎている。




……その子を連れて、逃げられる?


 ……つっても俺、何だかんだで
 我が身が一番大事なタイプなんだが。

[銀鈴の声に対して、ぼやくような調子でいる。

 衆目があるこの場所では、あからさまに人狼を庇えば
 立場が悪くなるのは明白なのだった。
 ヒューやセレストがそうするのは人間の勝手だが。]


……いいえ、

無理を言ったのはわかっているわ。
ごめんなさいね。


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