17 吸血鬼の城
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――墓地―― [それから長い時間を掛けて墓地へと辿りついた。
本当なら、ヘクターを城外の陽の当たる場所に埋葬したかったけれど、それは不可能で。墓地の一角に何とか埋葬できるだけの穴を掘る]
(179) 2010/06/23(Wed) 04時半頃
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[名を呼ぶ声に、
それは100年の眠りから覚めたかのように、 ゆっくりと重たげに目蓋を開く 常と変わらぬ天の色]
[けれど高い天より堕ちるほど、闇はより深く濃い] [白薔薇をセラフと呼んだのは、誰だったか]
……いかがなさいました、お嬢様。 私は、今、とても気分が良いのですよ――
[―――――そして、白薔薇は嫣然と微笑う**]
(180) 2010/06/23(Wed) 04時半頃
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ヘクターは、私にいろんなものをくれたのに、 ……私からはこんなものしか、あげられなくてごめんね。
[寂しそうに呟き、狼皮の帽子を頭の横に置いた。 そして亡骸を運ぶ際、隠しに仕舞っていたロザリオを取り出した。視線を落とし、硬い表情でしばし逡巡するが]
……魔物の召使の贈り物なんか、一緒に埋葬するのは……本当は嫌なんだけどね。でも、これをどうするかは、私の決めて良いことじゃないよね。
[組んだ手にロザリオを握らせる] ……おつかれさま。ゆっくり、休んでね。
[労わる様に髪を撫で、最後に額に口付け、ヘクターの亡骸に別れを告げた**]
(181) 2010/06/23(Wed) 04時半頃
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靴磨き トニーは、奏者 セシルに話の続きを促した。
2010/06/23(Wed) 04時半頃
靴磨き トニーは、水商売 ローズマリーに話の続きを促した。
2010/06/23(Wed) 04時半頃
ああ……
[目覚めの吐息がひとつ]
――気のせい……
左様でございますか、ならば結構、
――お可愛らしいことですね?
[囁くそれは、砂糖菓子のような甘い聲]
靴磨き トニーは、メモを貼った。
2010/06/23(Wed) 05時頃
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[再び開かれた天の色の双眸に安堵したのは一瞬。 時が経つにつれ違うのだと思い知らされる。 男の顔に浮かぶ笑みは女が好んだそれとは違って]
如何もしないわ、セシル。 貴方が無事ならそれで良い……。
[薔薇の香気に誘われるかのように 女は白薔薇の唇に自らの其れを重ねた。 常なら甘い血の味が酷く苦く感じられ ツキ、と痛む胸を押さえながら女は儚く微笑む**]
(182) 2010/06/23(Wed) 05時頃
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[城主の甘く優しい囁きが鼓膜を震わす。
幾度となく繰り返された言葉がじわと染みて]
やはりお兄様にお任せすれば良かった。
[求めた白薔薇の変貌に女の心は追いつかない]
お兄様――…
私はまた、間違えてしまったのでしょうか。
[甘い白薔薇の聲に心が震える]
可愛くなんて、ない……
偽りは、…やめて……
[これは違う。
違うのだと自らに言い聞かせながらも
途惑いは隠せず上擦る音色]
[上ずる声音を聞けば、吐息に笑みが混ざる]
……ああ、ではどんなお言葉でしたら、
信じていただける?
あなたのお望みのままに、
謳って差し上げますよ、お嬢様――……
[その声は耳触りだけは、まろやかでやさしい**]
奏者 セシルは、メモを貼った。
2010/06/23(Wed) 05時頃
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[言葉を聞く眼差しは、どこか気だるげに]
――…お可愛らしいことを仰られる。
[冷たく柔らかな唇が重ねられれば、 舌に残る血の甘さに、うっとりと笑んで。
残るそれをも味わおうと、女の紅い口唇を一度舐めた**]
(183) 2010/06/23(Wed) 05時半頃
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−執事控室:黒薔薇の部屋−
[無慈悲なダガーの手入れをし、自ら捩った右手首の傷を手当し、一息つく。傷口が空気に触れるたびに、血を流すたびに、命の危機にも似た感覚を呼び覚まされるのだ。]
……生きている。 私の肉体は生命を持っている。 なんという悦楽だろう。 肉を捩り、血を噴き出し、痛みを感じる肉体がある……
[死体となった者の肉を思い出し、包帯を巻かれた自分の肉が血を流している様子と見比べ、思いを馳せる。]
……もっと、痛みを。 私の生きている証を。 極限の痛みの果てにある、理屈抜きのエクスタシーを。
(184) 2010/06/23(Wed) 07時半頃
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[手当てを終え、返り血を浴びた服を着替えると、白薔薇の部屋に続く扉を開いた。]
……白薔薇、入りますよ。[3度、扉をノックする。]
先程、私は旦那様に仕事を申し付けられましてね。手伝って欲しいというわけではありませんが、旦那様とお嬢様の護衛を……
[と、部屋の中を覗き見る。そこには、唇よ寄せる男女の姿があり、その周囲にはえもいわれぬ程に薫る薔薇の瘴気が広がっていた。]
………成る、程。成る程。よく分かりました。そういうことなのですね。 [喉を鳴らして小声で笑う男は、その様子をまじまじと見つめる。]
堕ちた天使とはよく言ったものです。私は神など見たことはありませぬが、天使たらいうものは今この場で初めて拝見致しましたよ。
「なんとも神々しいお姿だ」。
いいえ、天使様のお手を煩わせる訳には参りません。「従者は私ひとりになった」。その事実は、今ここにありましょう。
それでは、お嬢様、「白薔薇様」。ご機嫌うるわしゅう。
[くつくつと笑って一礼すると、黒薔薇はその場を後にした**]
(185) 2010/06/23(Wed) 07時半頃
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[ふと、
声が増える
増えた。]
――……セシル?
薬屋 サイラスは、屋敷内を彷徨っていたが、ふと、立ち止まる。
2010/06/23(Wed) 08時頃
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―屋敷内・いずこか― [マーゴに口付けた後、好きだという衝動が
悲しくも、この身は欲望に変換する。 そのままでは、彼女を傷つけてしまう、そう思った時、 もう、逃げるしか、思いつくことはなかった。 どんなに彼女が自分を受け入れる言葉を言ってくれるとしても…… それで、彼女を屠ってしまえば、
もう、自分は完全に、違うものになってしまうような気がしたから。
いや、 もう、黒い衣服をつけ、城主のように生きるのであれば、 きっとそれが、この血に流れる記憶に沿って、生きるための方法…であると、
わかっているのに。]
(186) 2010/06/23(Wed) 08時頃
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[そして、頭を振り、壁に背を当てて座り込む。 やっぱり荒い息遣いなのは、
息吹いた欲望が治まらないから。
同時に、頭に響いてくる声が増えたのも感じていた。]
――…白薔薇が……染まったか……。
[眼は閉じられる。*]
(187) 2010/06/23(Wed) 08時頃
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薬屋 サイラスは、メモを貼った。
2010/06/23(Wed) 08時半頃
[声ならぬ聲が混じる。
よく知ったおと
瞼を閉じれば、其の先に
手元に置きたいと思った蒼天は色を変えて]
ふ……ふふ
[吐息の間で笑みを浮かべ、可笑しなことだと囁き零す]
私のローズ
お前の望みは叶っただろう?
……セシル……目覚めたか
[愛しい
そんな感情が魔物に存在するものか。
是は執着
朱に交わり染まる蒼がただ惜しいだけ
胸に渦巻く甘い痛みの説明を
誰も城主に授けてはくれぬ**]
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─廊下─
わたくしも…、お伽噺だと思っていましたわ。
ずっと。 ──このお城に来てからさえ。
[兄の訴えを半信半疑で聞いた日のことを思い出します。 僅かに目を伏せるのは、続いて呼び起こされる記憶の所為。]
まあ、そうでしたの。 でも──…だから。
…あたたかい。
[伏目がちに懐かしく微笑むのは、ドナルドの優しさが心に沁みるから。 ふわりと優しく、手から心までも温もりが伝わるようで。>>142 痛ましげに向けられた微笑に、哀しい笑みが返りました。>>150]
(188) 2010/06/23(Wed) 10時頃
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そうですわね。銀…。
[ベネットの言葉に思案するように小首を傾げ、やがて困ったように向けられた双眸を見つめます。>>145]
…ベネットさま?
───それは。
[青年が取り出したのは、華奢な装飾の銀のナイフ。]
(189) 2010/06/23(Wed) 10時頃
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…っ、そんな大切な───!
[語られる由来に、はしばみの瞳が瞠られます。
──「この城に消えた」 その言葉は、何よりも雄弁に彼の姉の辿った末路を示していました。 ふる。と、首を振って、銀のナイフへと視線を落とします。]
ベネットさま。
あなたは、他にご自分を守れるのですか? このナイフが、姉君の唯一つの護りならば───
(190) 2010/06/23(Wed) 10時頃
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花売り メアリーは、す。と、はしばみ色の瞳がベネットを見つめ
2010/06/23(Wed) 10時頃
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…わたくしは、あなたから姉君の手を取りあげられない。
──、…姉君さまが…、きっと哀しまれますわ。
[向けた表情は、同情に似たものであったでしょうか。 時は違えど同じ境遇にある者として、ベネットへと緩く首を振ります。 ナイフを差し出す青年の手に手を添えて、そうして彼を見上げたのです。]
(191) 2010/06/23(Wed) 10時頃
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ベネットさま。
…ありがとうございます。
[受取れぬと言いながら、顔に浮かべたのは精一杯の感謝と微笑み。 城内を満たす絶望と哀しみに抗うように、ただ儚い希望をのみ、強いて見つめて微笑んだのです。**]
(192) 2010/06/23(Wed) 10時頃
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花売り メアリーは、ランタン職人 ヴェスパタインの耳に会話が届いているなど露知らず──
2010/06/23(Wed) 10時頃
花売り メアリーは、執事見習い ロビンの笑みも未だ知らぬまま。**
2010/06/23(Wed) 10時頃
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― 白薔薇の間 ―
[サイラスが座っていた椅子に、腰をかけ サイラスがそうしていたように、薔薇に手を伸ばして――
しかし、その刺に触れる事は出来なかった。]
わたくしの血は、流していけない―― 「そのとき」まで、決して…
[繰り返し言い聞かせられた言葉を呟いて。 ぎゅっと、自分の身体を抱く。]
(193) 2010/06/23(Wed) 10時頃
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わたくしは、毒…だから――
[逃げるように去っていったサイラスの姿が 胸を酷く締め付ける。
人と触れあう事を避けてきたこの身体。 決して、誰も触れようとしなかった、この身体を 抱きしめてくれた、腕。
でも。その人もやはり去ってしまった。]
愛して…いただけないのですか……?
[俯いた、目蓋が熱い。 胸の奥が、痛い。]
(194) 2010/06/23(Wed) 10時頃
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小悪党 ドナルドは、花売り メアリーに話の続きを促した。
2010/06/23(Wed) 10時半頃
小悪党 ドナルドは、記者 イアンに話の続きを促した。
2010/06/23(Wed) 10時半頃
小悪党 ドナルドは、長老の孫 マーゴに話の続きを促した。
2010/06/23(Wed) 10時半頃
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[懐の、固い感触に気付いて。 そっと、硝子の瓶を取り出す。
手の中で傾ければ、さらさらと崩れる、淡いすみれ色。]
―― サイラス様は、わたくしに……
[もっと幸せに、と言った、その声。潤んだ青の瞳。 立ち去っていく間際の、苦しそうな、貌――
気付けば隣に、小さな匙をもった影がいて。]
……ありがとう…。
[匙を取って、瓶の蓋を開け 薄紫をひとすくい、口に含む。 舌の上に、苦さがじわりと広がっていく。]
(195) 2010/06/23(Wed) 10時半頃
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……サイラス様。 わたくし、あのお方を、殺めます。
そうすれば、あなたはもっと自由に、なれますか…?
[運ばれてきた水を口に含む。 苦みが、流れて消えると共に、心が、晴れていく。]
わたくしに、残された命を、 ――あなたのために、使いたい…。
[それは、"お勤め"を果たす事でもあり。 自分が生まれてきた意味でさえあった。
ゆっくりと立ち上がり、白薔薇を一本手にとって、 棘に気をつけながら、胸元に挿す。
そうして、確かな足取りで歩き出した。]
(196) 2010/06/23(Wed) 10時半頃
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>>185 [隣室の声も、ノックの音も聞こえていた、 けれど話しかける声に、漸く億劫そうに女に寄せた血の如く唇を離す。笑う黒薔薇へ返すものは、薄い笑み]
――よいのですよ、黒薔薇。 お仕事を一人でこなすのは大変でしょうし……、
あなたにそのように呼ばれては、 無用な警戒を招いてしまいます。
[首が枷をしゃらりとならし、 けれどそれに触れてももはや冷たさは感じない。]
(197) 2010/06/23(Wed) 12時頃
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―執事控室:白の部屋― [黒薔薇が去れば、白薔薇は立ち上がる。 女の前でも気にはせず、血塗れた装いを影に変えさせる。 白手袋まで常のまま、肌の冷たさは容易には伝わらない]
ああ……
[わずかな渇き、官能を宿すため息 その血への焦がれは今はむしろ心地いい]
――……少し、躯を動かしてまいりますね、お嬢様。
[流し見るような一瞥を寄せて、 白い燕尾の裾は羽のような残像と薔薇の香を残し、去る]
(198) 2010/06/23(Wed) 12時半頃
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[重なり響く己の名の音]
おはようございます、旦那様――…
嗚呼、心根のかろやかなこと、
―――…私は、今まで何に捕らわれていたのでしょう。
[失われたのは闇にあって尚、善美に焦がれる心
枷なき薔薇は、棘を恥らうこともない]
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>>197 ……左用ですか。
[「無用な警戒」……その言葉を耳にし、黒薔薇は自分の鼓動が高鳴るのを感じた。]
私の仕事は、私にこそ相応しい「汚れ仕事」にございます。 己の牙で血を取り込むことができぬ「ヒト」の身故に、剣を用いることでしか血の華を咲かせられぬ、憐れな「ヒト」の。
[グラス1杯分の血液を失った心臓がどくりと波打つ。 愉悦と嫉妬の狭間で、強く、激しく。]
それでもおいでになりたいのであれば、どうぞ。
それから、お嬢様。 随分と「お疲れ」のご様子……どうぞ安全な場所でお休みくださいませ。
(199) 2010/06/23(Wed) 12時半頃
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