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あっ。
[
いくら男同士とはいえ、パンツ半脱げなうえ、寝起きなせいでソッチまでちょっと起き上がった状態なのは、とんでもなく恥ずかしい。]
あっ、
いや、その
[さっさとパンツを上げればいいのに。
気が動転したせいで、赤くなったまま硬直してしまった。*]
[拭かれた髪の毛がぴんぴんと跳ねているまま、先ほどの頭拭きの気持ちよさを思いながら、ほうっと溜息をついた。
髪を切りに行って美容師にやってもらうような、専門の人に上等なことをしてもらったわけではないが、この雑さでも大変気持ちはいい。
宇原は無自覚だが人に頭を触られるのがちょっと好きな傾向があった。美少女が頭をぽんぽんされてポーッとなってくれるのだけではなく、美少女に頭をなでなでされて全て許されたい。そういう欲求を抱きながら大人になったせいもあるだろう。
生憎と頭を拭いてくれた美少女には複雑な設定がついてはいるが……(美少女:28歳会社員男性・冴えないオタク)]
[胃薬と風邪薬を用意してもらいつつ、食事の続き。
傍に岩動が寝転んだ。窓から差す午前の陽が、のろのろ部屋を暖めている。ひと時静かになった部屋に、ちくたくと時計の音がしていた。
食べ過ぎない程度に器にいれてもらった少量の粥をやっと平らげて、一息つく。
先に飲む数が分かっている胃薬から口に放り込んだ。
今度は飲むのに成功して、水をがぶ飲みすることもない。
次いで風邪薬。纏めて飲んでいいのかどうかとかは、1ミリも気にしていない。そもそも薬のことなど分からないし、岩動を雑に信用していた。
少し勢いあまって、口の端から水がこぼれて顎へ伝う。
それを手の甲で拭いながら、コップをことんとテーブルに置いた。]
のんだ!
なおる!
[と、岩動に無邪気に報告して、胃袋が重たくなったので、真似して近くに横になった。**]
[別に同性なのだから、見られたところで何の問題もない。
ないはず、なのだけど。
見られたことを意識してしまったし、されてしまった。
そのせいで、起きたばかりだからという理由以外の要素が、ちょっと加わってしまった件については、さてどうやって誤魔化したものか。*]
[顔が赤いのは、どうしたものか。
とりあえず、まだ少し熱っぽいせいだということにしておこう。
……風邪ひいてて、ちょっとだけ、よかったと思った。*]
[蒸しタオルは、むかぁしむかしに軽い肺炎に罹って、自宅療養をしたとき。
高熱が続いて風呂に入れずに居た岩動に母がしてくれたことだった。
ああ、あとどうしてくれていたっけ。]
[宇原の近くに寝転んで、目を閉じる。
午前の日差しはぽかぽかとほのかに暖かく、やわらかな光と食事の音が微かに鳴る空間は時が止まっているようで、時計の音の時を刻む音はまるで足踏みのように感じた。]
水も慌てて飲まないようにね。
[薬の包装されたシートがパキパキと音を鳴らすのを聞いて、忠告する。
確か昨日は薬を飲むときに水を飲みすぎて吐いたなどと言っていた気がしたので。
薄く目を開いて宇原の方を眺めると、薬を飲み終えて口を拭っていた。]
飲むの下手かwww
[軽口を叩くと、無邪気に笑いながら彼もそのまま近くに転がった。床は冷えるから布団で眠ったほうがいい、そう思うけれど。休日の食後、ごろ寝タイムは何にも代えがたい。]
早く治しなさいよ〜。
[そう言って手を伸ばし、彼の頭を小突いた。
…そうだ、ドライヤーなどもかけてやるべきだったか。
まあいいか、面倒だし。短い髪だし、すぐ乾くだろう。]
[それより後は、ほぼほぼ普段どおりに。
ゲームをしたり、オタクコンテンツを消費したり、お互いの性癖について語り合ったり。体調を考えたり考えなかったりして、少し大人しめにはなっただろうか。]
新式装備フルセットやっとできた。
[素材から集め始めて、コツコツと作っていた装備をようやく仕上げる。
宇原の言ったとおりに、時間をかけてタダで仕上げる方法で作っていたら思っていたよりあれやこれやと時間がかかった。]
そ〜したら、俺そろそろ帰ろっかな。
[随分具合も良くなったようだがまだ完全に治ったわけでもない。
これ以降は居てもかえって気を使わせることのほうが多いだろう。]
ちゃんとあったかくして、おかゆでもスープでも
食べられそうなもの食べて、薬も飲んでちゃんと寝ること。
いいね?ゲームログインしてきたらうるさく密談飛ばすからね。
[そう言って笑って、宇原の部屋を後にした。
完全に部屋を出てしまう前に、一度だけ乳首をつついて。]**
[さも覚悟しているようなつもりで切り出しても
やはり、おれはおれなもので。
返る一言から、言葉を濁らせる言い方>=75を確かに感じ
視線は対照的な動きで、相手に向く。
だけど、その続きは
恐れたような内容とは、また違う。
こちらを見ていない彼には知れないことだが、
それを聞いて、おれの表情は軟化する。
小さな手が不器用に頭に乗せられたあの日を、
その時かつての少年が言ったことを、思い出した。]
…… ああ、そうだったね。
自分で言ったのに、すっかり忘れていた。
[深く深く、息を吐く。狡いなと、心の中で呟いた。
先に言わせた自分も、その言い切りも。
憂いの無い笑顔を見て、また一度、胸が痛む
どうしようもなくその姿が愛おしく感じた。]
君がかっこよくて、本当に困っちゃうな。
その半分でも、おれもそうなれたら良いんだけれど……
今まで随分寂しくさせていたみたいだから、難しいね。
[小さなテーブル越し、少し身を乗り出すようにして
その手を引き寄せ、自分の頬を擦り寄せる。]
好きだよ、柊真。
おれには君だけだ、あの日からずっとね。
君と一緒にいられる選択なら、
後悔なんて、何一つ無いさ。
[昨夜口にした言葉に、どれも嘘はない。
名前を付けるには複雑な好意も、
許されないことだと示す、否定の一つ一つすらも。
その中から、夢中で告げた記憶のある二文字を改めて声にした。
潰えたあるべき未来が、今より純粋な色をしていても。
誰に何を言われても、君が隣にいてくれるのなら。]
[ああ、さっきは一緒にいたいとか言ったけど、嘘だ。
今は、今だけは、ひとりでいさせてほしい。
方徳さんが着替える間だけ。
自分も風邪を引いたみたいに熱くなったのが、落ち着くまでの間だけ**]
おれの新式ちゃん!
あんんんんんんんんんんん。
れっレン♡メイおにいちゃ♡♡♡♡♡♡
うれっちいぃぃ〜〜しゅきいい!
ウッどぴゅっぴゅっ!
[そう言って岩動のうしろ、PC用椅子のちょっと下、布団の上でごろごろしながら装備の完成を喜ぶ宇原の頭には、ばっちり寝ぐせがついていた。
[早く直せと言われ、頭を小突かれたその後。
宇原は風邪薬も少しは効いたようで、微熱は微熱のまま、吐いたり気分を悪くすることもなく、着実に元気を取り戻してきていた。
玄関先で少し口うるさく、今日の過ごし方について指示してくれる岩動に、うん、と素直に頷いた。
ちょっと寂しそうに、足先が床をつついて、羽織ったパーカーのポッケに手をいれて、]
ねー、メイさぁん。
胃なおったらさあ、ラーメンいこー?
[と、寂しさから次の遊びの約束を取り付けて、頷いてもらうとはにかむように笑っていた。
部屋を出て行く岩動に、手を振ろうとポケットから手を出す前に、乳首をつつかれて、何か言う前に去られた。]
[岩動の手元、スマホには
「おいピンポンダッシュやめーやwwwwwwww」
「ありがとね!」
とメッセージが届く。
再び二人の会話は、
文字と顔の見えない音声のみの日常に戻った。**]
そういうセリフはらぶ声通してもらえませんかねえ!?
あっでもスペキャちゃんはちんちんついてないから
どぴゅってしな…えっ
スペキャちゃん今度どぴゅって…言ってね……?
[ついに新たな可能性を見出してしまった。中の人間が男だからといってキャラをふたなりとしてみるのは無理がある、そう諦めていたが声がつけば、あるいは…?
寝癖頭の宇原をよそに、そんな無限の可能性に心躍らせていた。]
[帰り際、見送ってくれている宇原の様子は、いかにマイペースが過ぎる岩動でもわかるほどに寂しがっている様子で。自慢ではないが盆休みに田舎に帰り甥っ子としこたま遊んでやったにもかかわらず全く懐かれなかった実績がある。懐かれていない実績があるからこそわかることもある。これは懐かれている。]
いいよ。
治ったら行きましょう。
前ウツギくんと行きそびれたとこにしようね。
[返事をすると、相手がはにかむ。こんなに気分のいいことがあるだろうか。
そんな上ずったテンションで行ったのがピンポンダッシュだ。浮かれていたのだから、仕方ない。]**
ほんにちはー。
方徳、です。
[抱えた紙袋の中には、濃茶色の毛糸の帽子。
それと。
林檎を抱えた、猿のぬいぐるみ**]
[昨日からおかしいと思っていた。
喉がやけに痛いというか、べたべたひっつくというか、ざらざらしているというか。そこまで予兆がくれば流石に伊達に28年人間やってるわけでもないので風邪のひき始めだと察知し、ドヤ顔で風邪薬を飲み栄養ドリンクを飲み、万全を期して眠りについたはずだった。
ところがどうだ、明け方に寒さで目が覚めた。喉がパンパンに腫れた感覚で息苦しい。眠っている間に蹴り飛ばした布団を引きずり寄せながら、汗が冷えたのだと自覚する。ガタガタと震えながら痛みと倦怠感に襲われ、半ば気を失うように再び眠りについた。
アラームで目を覚ますと、今度は腹痛だ。夜の内に体を冷やしたのだろう。ベッドから起き上がると、振動で頭痛が響く。嫌な痛みを堪えながらトイレに篭っていると、また体が冷えて悪循環を起こし、辛さでと寒さで便座に座ったまま蹲った。]
[とりあえずこんな調子では出社は無理だと悟り、会社に電話連絡を入れようとしたときに、ようやく自分は声が殆ど出ないということにも気づく。普段から少しかすれた声は、もはや聞き取りが不可能だった。何度も痰を切り、ようやく少し声が出せるようになったタイミングで連絡を済ませ、病院へ向かうことにした。
死にたくはないので運転は避け、タクシーを捕まえて病院へ向かう。マスクをつけていると自分の息が眼鏡に掛かってレンズが曇り、心の底から鬱陶しい。ただマスクを外すわけにもいかずただただ、眼鏡を曇らせていた。
そんなこんなで潰れた午前。疲労困憊で帰宅するも症状はもちろん悪化して、現在に至るというわけだ。]**
……惚れても良いんだぜ?
[
冗談めかして、そう返そう。]
そうだな、お前
どっちかっていうと可愛いって感じだから。
…………怒んなよ。………っと、
[不意に、手に手を伸ばされて。
触れてはいけないと
あの日から幼馴染を避けていた手は
彼に引き寄せられる形で、その頬を感じていた。]
………っはは、
そんな事言い出すもんだから
お前は後悔してるのかと思った。
[
一つ一つ、空いた心を埋めていくようで。
刹那過った不安は、もう微塵も感じなかった。]
お前のそういう真っ直ぐな所、俺はかっこいいって思ってるよ。
[
何でもない事のように、自然と口をついて出る。]
なぁ、稜。
俺もだよ。
お前の代わりになる奴なんて、居なかった。
……俺は、どうしてもお前じゃなきゃ駄目らしい。
だから、
今度は頼まれたって、離れてやらねえから。
[互いを互いで補うように、傍にと願った。
あたたかさとつめたさを分け合うように、季節は溶け合う。
誰に何を言われても、お前が隣にいてくれるなら。]
………好きだよ、稜。
[まるでその二文字を引き合わせるように
頬を包み込んだまま、唇を寄せて
───深く、口付けた*]
[冗談めかす言葉
けれどその内容への否定は、決してすることは無い。
あの頃なら「子供じゃないよ」なんて、
拗ねて見せた例えにも、そんな様子は見せず。
一時交わされる軽口は、かつてのようでどこか違う。
なんでもないように告げられた
今は彼のお陰でしか無いけれど、なれたらいい、そう思う。
頬に感じる体温は、長細く骨張った五指を持つ大きな手から。
確かに彼が此処にいて、触れることを許してくれているのなら。
後悔なんて、ありはしない。]
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