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目が覚めたらお前が居て
お前が作った弁当を食べて
くだらねえ事言い合って
そんな日が一生続くわけ、ねえのにな。
………だって俺達は“男同士”だから。
[漏れたのは、僅かばかりの本音。
女であるというだけで
簡単に俺からお前を奪っていく誰かに向けて。]
ずっと一緒に生きて来たのに
お前を幸せにするのは、
俺の知らない奴なのが許せなかった。
………けど、もう良いんだ。
お前のヒーローじゃない俺じゃ、
お前の傍で、お前を守る事なんか出来ねえから。
[隣を奪われたくない。
そんな感情が育てたものは、酷く歪で
恋人に囁くようなそれとは違うのだろう。
それでも、きっと、一言で伝えるのならばそれは]
お前が好きだから
誰よりも、何よりも大切だから
───…… だから、もう俺に近付くな。
[本当は、近くにいて欲しい。
誰よりも近くで、その笑顔を見ていたい。
俺が、俺の手で幸せにしたかった。
けど、それはもう俺の役目じゃない。
何処に居ようと、お前が笑顔でいてくれるのなら十分だと
自分に言い聞かせ、醜い心を押し殺しながら、そう告げた。
その時の男はきっと
平気だと、幼馴染に強がっていた時に似た顔をしていて。]
………なぁ、俺が言ったら、何でもするんだろ?
だったら早く
今日の事は忘れて家に帰れ。
俺が、お前の事 無理矢理奪っちまう前に。
[そうしてくれなきゃ
きっと、止められない。
間違っているのに、こんなにもお前が欲しい。]
…………稜、頼む。
お前を、傷付けたくねえから。
お前には、笑ってて、欲しいんだよ。
─────ッ……げほ、 ゴホ、ゴホッ ゴホッ!!!
[喋り過ぎたせいか、込み上げた咳の予感に
彼の顔を避けて、隣へ顔を埋めながら大きく咳き込んだ。
喉が焼ける痛みを感じながら、卑怯な事をしていると思う。
こんな自身を置いて、幼馴染が帰れる訳がないじゃないか。*]
【人】 採集人 ブローリン[ざあざあ水を流しながら、こびりついて固くなる前に、鍋とお椀とを丁寧に洗う。 (93) 2018/12/01(Sat) 10時半頃 |
[方徳さんのもとに戻れば、作業を止めて横になっていた。]
……どうでした?
[すすいだペットボトルに水とポカリを入れて戻るまで5分少々。
体温計が鳴るには充分な時間かと、結果を問いかける。
素直に液晶が表示した数字を聞けば苦い表情をするしかないが、かといって眠れるか、回復するかは当人次第なので、あとは見守るくらいしかできない。
食欲はあるそうだし、薬も飲めているあたりは、不幸中の幸いか。]
何か、他に僕が力になれそうなこと、あります?
[彼が眠ってしまう前に、思い切って聞いてみた。
どうしたらいいやらわからず、思いつくことも尽きたが、本人はもしかしたら要求を抱えているかもしれないと*]
[寝起きの身体で強引に引きずり込まれて
十数年の付き合いの幼馴染は、知らない姿になってしまった。
きっと、沢山言葉を向けなければ駄目だ
こんな風に関係を歪ませたくないと、伝えなければ。
────そう思ったけれど、
ひとつ、彼が息を吐いたのが合図。状況は変わる。
すくう動きはまるで遠慮しているよう。
呟かれた謝罪とその続きには、罪悪感が込められている。
それは、嫌がられて止めた行為と矛盾しない態度。
ふと思う、先程もそうだった。
触れられたのは、少しの間。手はもう伸びなかった。
ただ服の上から触ることが目的で押し倒したのでは無いだろう。
おれは腕も掴まず無抵抗にただ顔を隠していただけなのに。
ああ、そうか。そもそも────
今まで何もせず、ずっと遠ざけていたのだって。]
柊真は、嬉しかった
おれが、一番……?
[唇は拒む言葉を繰り返すのを止めて、柊真の言葉を拾い
内容を解釈し、辿々しく声にする。
動揺は困惑に塗り替わって、
今はそこに理解が広がり始めるようだった。
視覚と聴覚が、至近距離から
「ヒーローではない鳴海柊真」を捉え続ける。]
っ……
[唇を噛み、表情が陰ったのは
自分で言った否定を、彼が口にした時。
傷つけてしまったような気がした。
そして、これはまるで柊真に拒まれた後
自分が感じていたことそのものだったから。]
[少しの胸の痛みを覚えている間にも、話は続く。
やはり、それもまた────許せなかったと言い切られた内容も
おれの抱えたものに、とてもよく似ている。
だから、直感的に過る焦燥
その続きを聞いてはならないような気がした。
けれど今更耳を塞ぐのは、あまりにも遅すぎて。]
……ああ、
[余すことなく、全てを聞き遂げてしまった。
吐いた息と零れた声は、嘆くような泣きたいような響きを持つ。
そんな顔で、あの時の君の姿で、……言わないでくれ。
[ああ、柊真は変わらない。
こんな状況でも、結局ずっと相手の為に行動している。
それなのに何もかもが間違っている。
幼馴染を帰そうとする彼は
そうならなければ、きっと本当におれを……
傷つけたくないという気持ちが、切実に伝わってくる。
さっきよりもずっと胸が痛い。]
ッ、柊真……!
[不意に幼馴染の身体が、動く。次いで傍らから聞こえる咳。
隣に顔が埋まることで、身体と身体はより近くなった。
大きい背に向けて、両手が伸びたのは思考より前の行動
そのまま抱き締めるように腕を回して。]
【人】 測量士 ティソ[弱った身体を労るように、その背を撫で摩って。 (94) 2018/12/01(Sat) 14時半頃 |
もういいんだ。
柊真はヒーローじゃなくても、いいんだよ。
一人で抱えるくらいなら、傷つけてくれていいんだよ。
ずっと気づかなくて、ごめんね。
おれ、やっぱり自分ばかり助けられていたんだね。
[撫で続け、決して離さないまま
ぽつりぽつりと語り掛け始める。
身体に負担を掛ける程に伝えてくれた内容に、
思ったことを一つ一つ、声に変えてゆく。]
ずっと、嫌われたんだと思ってた。
でも、……それが何故なのか、聞くのは怖かった。
直せるようなことじゃなかったら、
もういいって、やり直すことも拒まれたら。
そう想像すると、夢にまで出たんだ。
……あの日からずっと、辛かった。
[最後の一言は囁くように、か細く落ちる。
いい年をして情けないと、改めて思う。
そんな奴だからここまで追い詰めたのかもしれない。]
おれ、行けないよ。
柊真は今病人だからとか、そういうことじゃなくて。
自分がされたくないことを、君に出来ない。
柊真がいなくちゃ、ちゃんと笑えないよ。
[だから今は、向き合ってみようと思う。
────それがどれだけ間違っていても。]
【人】 測量士 ティソ[おれが鳴海家に来ることを望んだのは、星夏さん。 (95) 2018/12/01(Sat) 14時半頃 |
無理矢理じゃなければ、ここにいていいのかな。
【人】 測量士 ティソ[なんて恥知らずな言葉なのだろうか。 (97) 2018/12/01(Sat) 14時半頃 |
するのは怖いけど、……柊真は怖くない。
ヒーローじゃなくても、柊真はおれの一番大切な人だから。
[思考を声に出すことは、伝える他に自身の頭の整理にもなる。
どういう意味なのか、分からずに口にしているわけではないのだが。
今はその先を言わず、
自ら指摘していた問題から目を背ける狡さは、自覚している。]*
【人】 宇宙原理衆 ウツギ (99) 2018/12/01(Sat) 14時半頃 |
[涙で潤んだ目。下を向いていたせいか、頭に軽く血がのぼったかのように顔が若干赤かった。
トイレに座り込んだ体に力は入らず、へとへとだ。腹筋だかなんだかわからないところが疲れている。
手で触ってわかるほど熱があるそうだから、そちら由来の力の入らなさなのかもしれないが。
濡れた睫毛を瞬いた。顔が近い。
ひどく心配させたらしいことは、相手の顔を見れば一目瞭然というやつだった。]
[近すぎることを恥じらうように、少し目を伏せた。
臭いそうだからが6割、産まれてこのかた誰かと付き合ったこともないので、人間との接触にそもそも慣れていないからが4割という恥じらい具合だ。
腕を引っ張られて、驚いて、んく、と喉が鳴った。息をなるべくとめるのを諦めて、細く息を吐いた。
立てるかどうか返事する間もなく、腕は肩に担がれていて、腰に手を添えられる。少しそわそわした。
肩に乗った腕に力をこめるような形で、よたよたと立ち上がり、また小さく咳をした。
きっと一人でも立てたと思うけれど。多分一人でも歩けるとは思うけれど。せっかく焼いてもらった世話を無下にするのもなんだし、ついつい甘えたくなってしまう。]
【人】 宇宙原理衆 ウツギ[岩動に支えられて便所を出た。] (101) 2018/12/01(Sat) 14時半頃 |
[流しのフチに手をついて、カップにいれた水を口に含んで濯ぐ。
水を吐き出した。
ねばつく唾液が唇からぷらりと糸をひいている。
それを隠すように手の甲で拭って、また一口。
小さな溜息をつきながら、何度か口を濯いで、冷えた手を洗った。
口を濯ぎ終わった後も、また岩動の肩に腕を回す。
今度は遠慮が薄く、へへ、と照れ笑いのようなものを浮かべた。]
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