88 吸血鬼の城 殲滅篇
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[そうして紅の露を結んだ薔薇を供え、「南」の塔を振り返る。 風が剣戟の音を伝えていた。
暗い空の下、翻る鋼と金は、あの剣士のもの。 それと渡り合うのは──]
……。
[軽く助走をつけ、ヒューは切り立った盾壁の上に立った。]
(89) 2012/05/03(Thu) 18時半頃
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構わん。しばらく相手してやれ。
―――そいつがどうするか、見たい。
[闇を揺らして届く声は気弱な──否、これは相手を思いやる響きだ。
今、その相手の姿を認める。]
名を 知りたい。
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>>80 ……俺はドナルドだよ、坊っさん。
[ジェフリーに目を向けたまま、 柔らかに苦笑を零す]
呪われた存在でも、 ヒトでなくなっても、
誰に赦されなくても、……生きてる。
[だから痛む。 苦しみに身を捩る。
……だがそれまでは口にしない。 己の主が彼に何をしようとしているのか、 気づいてしまったから]
(90) 2012/05/03(Thu) 18時半頃
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…りょうかい。
[『声』の赦しを得てジェフリーに向き直り]
遊んでもらって、いいそうだぜ。
[地を蹴り、漆黒のレイピアを構えて ジェフリーへと飛び掛った。
一気に間合いを詰めた。 本来は刺突に向いたその刃は闇の血にて補強され、 彼の長剣へと振り下ろされる]
(91) 2012/05/03(Thu) 19時頃
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――ドナルド・ジャンニ。
[短い答えと、肩を竦める様な可笑しげな気配。]
そっか、名乗ってなかったな。
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引く気はないか。 ……ならば、お前が先だ。
[戯言に付き合う気はなかった。 再びドナルドの間合いに入ろうと、足を踏み出し掛け
――ドナルドから向かってきた刃を咄嗟に受け止めて。 激しいぶつかり合いに火花が散った。
この間合なら――。 さっと片手を長剣から離すと、 銀のダガーを彼の腹に突き刺すべく、懐に手をのばした]
(92) 2012/05/03(Thu) 19時頃
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ジェフは、ドナルドに話の続きを促した。
2012/05/03(Thu) 19時頃
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[がきりとした鋼の感触。 激しい金属音が、びりびりと肩まで響く]
…っ、と――
[長剣が離されてバランスを崩し、 崩れかけた姿勢を狙う銀のダガーに舌打ちした]
甘ェ、ってんだよッ!
[咄嗟に上体を背後に倒し、 男の肩を蹴りあげるようにして背後へと跳ねる。
ジェフリーが手放した長剣ごと、 からんとレイピアが音を立てて床に転がった]
(93) 2012/05/03(Thu) 19時頃
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…なぁ。
[のんびりと戦いを眺めているようで、 構えた剣は僅かばかりにも動かず、 修道士の首に鋭い圧迫を伝えている。]
おまえの命が惜しくば剣を捨てろ、 ―――なんて命じたら、 あいつ、どうすると思う?
[修道士を見ないまま、彼だけに届く声を投げる。]
(94) 2012/05/03(Thu) 19時頃
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[ドナルド・ジャンニ。
クラリッサを「クレア姉ちゃん」と呼ぶ男。
そして今は──血の兄弟。
そのドナルドが、金髪の剣士と舞っているのが見える。
かつて絶妙のコンピネーションでヒューの動きを妨げたふたり。]
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くっ!
[突き出したダガーはドナルドの身体に届かず、 飛び退りながら、蹴りをいれた箇所は、 レオナルドの薬でかろうじて痛みを抑えている ヒューの攻撃を受けた場所]
うっ……
[度重なるに顔をしかめて、肩に手をやった。 手元には間合いの短いダガーだけが残っている]
(95) 2012/05/03(Thu) 19時半頃
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命が失われた者は戻ってこない… だから貴方は…
[ドナルドの姿をした偽物…こう、断言しようとしたが、あまりに静かに、心を乱されそうになるほど前と変わらない口調で語りかけられた為に、途中で口を噤む。>>90 人を惑わす魔物の戯言、と聞き流そうとするがその言葉は妙に意識の中に残っていった。]
(96) 2012/05/03(Thu) 19時半頃
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[戦いに意識が向いている間に、相手の隙を探そうとするが、剣の位置はまるで変わらず、少しでも詠唱を唱えるとそのまま切り落とされそうな錯覚に陥る。 声を出すのも躊躇われたが、話しかけられた内容>>94にはさすがに黙っていられなかった。]
……愚問です。
人間一人の命と、今後もっと多くの者に害悪を与える吸血鬼… 重さなんて、比較するまでもありません。
それに…どちらにしても、私を生きたまま返すつもりはないのでしょう? ジェフリー様は歴戦の戦士。 甘さが命取りになること位、存じていないわけがありません。
(97) 2012/05/03(Thu) 19時半頃
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オレがおまえにくれてやったのは呪いじゃねぇ。
[修道士に語るドナルドへ、確たる響きを送る。]
" 祝福 " だ。
[ 闇の。
人間が、忌む。
眷属にとっては喜ばしい、 それ。]
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[身軽にとんぼ返りし、トンと石床に降り立つ。 飛ばされたふたつの剣は、 ジェフと己の中間に絡み合って落ちていた。]
……案外、アンタも手癖悪ィな。 センセイも同じだったけどよ。
[判断力の速さは流石歴戦のヴァンパイアハンターか。 だが、レオナルドとの戦いの際の記憶が ジェフリーの片手に警戒を抱かせていたのだとそう笑み]
……さて、どうする?
[カフスに手を掛け、ゆっくりとワイヤーを引き出す]
(98) 2012/05/03(Thu) 19時半頃
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どうかな?
[反問する修道士に向けた笑みは、 邪悪と称するに相応しい。]
なら、試してみるか?
[先程自分が口にした通りの内容、 それよりもなお抗し難い要求を突きつけるつもりだと、 口調の端から滲んでいる。]
(99) 2012/05/03(Thu) 19時半頃
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……嘘、吐いてんじゃねえよ。
[苦笑を届ける。
この力も。思慕も。渇きも。
――全ては祝福であるのだと
そう届ける彼の其れは、
恐らく本心ではあるのだろう。
だが自分だけは、
それが欺瞞であることを知っている。]
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あるものは有効に活用する。 当然のことだろう?
[口にしながら、長剣と己の距離。 それからドナルドの距離を冷静に測る
魔物との戦いには慣れていた。 だが、ドナルドが簡単に行動を避けたのは、 吸血鬼だからではなく、 元々の戦士としての資質なのだろう。
今までと同じようにはいかない――]
ならば……!
[剣が重なって落ちている中間地点まで駆け出した]
(100) 2012/05/03(Thu) 20時頃
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――…試す必要はありません。 どうせ、碌でもない内容だと目に見えて…わかりますから。
[吸血鬼の笑顔。猛獣が獲物を喰らわず弱らせて遊んでいるような様子に悔しげな表情が浮かぶ。]
……… [視線は自分を向いていないが、剣は今にも喉に突き立てられそうな位置のまま。 影を祓う為、一時的にでも首を守る防御術が使えないかと、杖の固い部分で石床を掻き文字を書こうとする。]
(101) 2012/05/03(Thu) 20時頃
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捜査官 ジェフは、メモを貼った。
2012/05/03(Thu) 20時頃
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ま、そこは同意。 ――魔物狩りより、傭兵が向いてんじゃねえの?
[楽しそうに唇を引き上げ、 ジェフとの間合いを慎重に目視する。
吸血鬼と化したといえど、 元より失った目までは戻らない。 左側の死角は如何ともし難かった。 なるべく死角をつくらぬよう、 彼の動きに応じてゆっくりと体勢を変え]
――、…ッ
[ジェフリーの行動は、意外な程迅速だった。
彼が手を伸ばした中間地点へと向け、 引き出したワイヤーを蛇の様に撓らせる]
(102) 2012/05/03(Thu) 20時頃
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[鞭のようにしなやかな動きで飛来するワイヤーを 避ける気は最初からなかった。 自分の動きに向けて、行動する彼の隙をついて 銀のダガーを投げつけた。
同時に伸びてきたワイヤーは剣をとろうと伸ばした右手。 更には厚手の服で防護していた腹部さえ切り裂き、 みるみるうちに血が溢れだしてくる]
(103) 2012/05/03(Thu) 20時頃
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…ッ、…捨て身かよ…!!
[手ごたえはあった。 ジェフリーの右手を鋼糸は捉え、 腹部はざっくりと抉られて 濃厚な血の匂いを撒き散らす。 しかしダガーは正確に 男の失われた左眼を眼帯ごと貫き]
(104) 2012/05/03(Thu) 20時半頃
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――グ、…ッ、…ぁ、…っ、
[燃える様な熱さと苦痛によろける。 転がりまわりそうになるのを堪え、足を踏みしめた。
清浄な銀を、掌が爛れるのにも構わず掴む]
(105) 2012/05/03(Thu) 20時半頃
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[南の城塔を望む北の物見塔の上。 狭い盾壁の上に立ち、二人の戦いを見ていたヒューの膝が撓められる。
だが、まだその場を動きはしない。]
(106) 2012/05/03(Thu) 20時半頃
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[ダガーを抜けば、びしゃり、と流れる血。
投げ捨てた銀製の武器は黒ずんだ色に染まり、 金属的な音を立てて床にぶつかった]
…っ、…、……っは、…
[息を荒げ、破れた眼帯を其の侭にジェフリーを睨んだ]
(107) 2012/05/03(Thu) 20時半頃
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[名を求めた相手。
そして、クラリッサに血を捧げて魔に堕ちた男だ。
「認めて」いる。]
おまえの名誉のため──呼ばれぬ限りは、介入せぬ。
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はぁっ……はぁっ……
[身体を引き裂いた痛みに、息が乱れる。 血が流れだし、ぬらりとした手で、長剣を掴んだが、 滑ってしまって、再び取り落としてしまった。
だが大ダメージを追ったのはドナルドも同じだった。 正確に眼帯の奥を貫き、苦しむドナルドを睨みつける]
(108) 2012/05/03(Thu) 20時半頃
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負傷兵 ヒューは、メモを貼った。
2012/05/03(Thu) 20時半頃
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はっ…… しぶ……といな……。 [投げ捨てられたダガーは魔に触れた証として黒ずんでいて、 浄化をしない限り二度は使えない。 心臓を狙ったはずなのに、ワイヤーの曲線的な動きに阻まれたのか、 逸れてしまったことが致命傷になるかもしれない]
ムパムピス……。
[まだ囚われているだろう修道士の名を呼ぶ。 彼が動けさえすれば、再びダガーは祝福を受けられるのだ]
(109) 2012/05/03(Thu) 20時半頃
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