162 絶望と後悔と懺悔と
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周りを見回す。まだ頭が混乱していて、よくわからない。
これこそ夢じゃないのか。おきたらまた低いベッドの天井が見えて、すっぱい林檎がテーブルにあって
堪えていた涙が溢れそうになって深呼吸してまた堪える]
誰か…いないの?ねぇ、誰か…
[1人にしては大きな部屋のようだ。きょろり、部屋を見渡せばちらほらと倒れているような人影が見えた。
けれどそれらが死体のようにも見えて、怖くて声がかけられない]
|
[吸血鬼にとっては取るに足りない破壊だったかもしれないが>>0:449。まだ子供のマドカには酷い衝撃だったらしく、あちらこちらに怪我を負ってしばらくは安静に…という事だったらしいが。 体の痛みよりも何より、それから毎日見る夢にうなされた]
(103) 2014/02/08(Sat) 09時半頃
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[丁重に扱えという命のため、寝かされた寝台で
馴染みの声に重たい瞼を上げた。
返事をしたつもりだったが漏れたのは少し呻き声]
……理依、くん ?
[身に馴染まないふかふかの感触や見慣れない景色より
家族の声の出所を探している。]
[かすれたような声が聞こえて、はっとそちらを向く。
聞きなれた声。柊だ]
柊?いるの?俺だよ。理依だよ
[因みに彼の名前を苗字で呼ぶのは他人行儀ではなくて
ただ柊という響きが好きなだけ。
部屋を見渡せばすぐにその姿は認識できた]
柊…!よかった、生きてた。怪我とかはない?大丈夫?
うん……
[頷いたのは惰性で、自分の状態を把握した訳でなく。
間があいて、場違いといえば場違いな挨拶が続いた]
おはよう。
オハヨ。
なんか疲れてるっぽいね…当たり前か。
[くるりと周りを見渡し、他に寝台にいる家族もきっと生きてるんだろう。
まずは安堵のため息を一つ]
…ここどこだろうね。吸血鬼が住んでるとかかな。
あのさ、なんで孤児院に吸血鬼なんかがきたのか知ってる?
俺実は…
[裏路地で吸血鬼に出会ってしまったこと、数え鬼のこと、
鬼ごっこに勝ったはずで、孤児院に戻ったらあんなことになってて…
予想ついていることを否定したくて、あえて聞いてみた]
[柊は冬の木と書くと零瑠に教わった事がある。
それを理依に話した時、少しだけ楽しそうな顔を
していたような記憶があった。
どこだろう、と言われて、良く解らない顔をする。
今、理依の後ろに見える室内は確かに孤児院の寝室じゃない]
……吸血――鬼?
[そう、理由も良く解っていなかった。
やはり沈黙が挟まった。]
サミュエル、帰って来た……あ
[目覚める前、自分はどうしていたか? 最後に見たのは赤い]
――あ、う……
[もぞもぞと首を横に振る。]
サミィが、先に…
[そうなんだ。それじゃ、あのきんいろは
俺をおいかけるとかいって…。
彼は約束は守るといっていたけど、確かに自分は殺されていない]
は、はは……俺も原因の一つだったのかな…
なんていえば、いいんだかね…
と、どうしたの。大丈夫?
[幸いというか、自分はそこまであの孤児院の惨劇を長く見ていたわけじゃない。途中から記憶すら曖昧だ。罪悪感がそうさせているのかもしれないが]
少しゆっくりしてなよ。
そうすぐに殺されるってことはないと思うから。
そんなつもりなら、こんな綺麗な場所に入れたり市内と思うしね。
[きんいろの本音は知らないけれど今悲観的になってもしょうがない。
ぽん、と上掛けの上から優しく叩き]
[優しく置かれる手で鈍い痛みを覚えたものの、
幸いそれはあまり顔に出なかった。
ゆっくりして、といったことが聞こえたが、
頭の中は恐ろしい混迷でいっぱいになっている。
硬い無表情の中、視線だけは日常のあった印を、
つまりは理依を、珍しく頼るように追った。]
部屋の外、出てみようかと思ってるけど…
柊、大丈夫?ここにいる?
俺は…あのきんいろの吸血鬼が俺を殺さないっていってたから多分大丈夫だと思うんだ。
[それは全くの希望的観測でなんの保証もない。
でもここから逃げられるようなきっかけが見つけられるなら外に出るのも大事だと思う
柊はその約束の適用外なのだから
何かあるのは怖い。けれどこう怖がっている家族をそのままほっておくのも気が引けた]
大丈夫……
[自分の事はそう答えるが、
部屋の外に出るという声には少し難色を示した。]
…………理依君、大丈、夫?
――お願い。大丈夫?
[出て行って、それきり帰って来なくなったりしないか。]
うん…大丈夫。それに、ここがもし食べられちゃう前にいれられるような部屋だったらそれこそ早く逃げなくちゃ。
大丈夫だよ。なんだったら柊は皆を見ててあげてよ
[思い込みがいつしか本当だと思えてきてしまう。
無意識にあの金色をもう一度見たかったとも思っていた
柊がついてこないなら自分ひとりでいくつもりで]
……うん。
行ってらっしゃい。
[皆を見ててあげる事。役割を与えられればそれに頷く。
かける声だけはいつも通りだ。
部屋の外に出ようとする理依を見送るように、
のろのろとベッドの上で半身を起こした]
|
─ 孤児院 ─
[>>)2女の爪は過たずリカルダの肩を切り裂いた。
花吹雪のように鮮血が散り、地面を赤く染める。]
はなして……! はなしてぇぇぇ!!!
[叫びながら、非力で小柄な躰がいくら暴れようと 屈強な守備隊員の腕は解けない。 が、運ぶには支障を来すその荷物を大人しくさせる方法に 守備隊員は手刀を選んだ。
首筋に感じたのはごく軽い衝撃。 踏みつけられるリカルダを泣きそうな顔で見ながら 少女の意識はそこで一度ぶつりと途切れた。]
(104) 2014/02/08(Sat) 12時頃
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[孤児院を舐め尽くした炎は 轟々と音を立てて窓という窓から赤い手を伸ばす。
撤退を開始した守備部隊の一人の腕の中、 目を覚ました少女が見たものは 炎に包まれ黒煙を吹き上げる我が家の姿と、 地面に転がった誰のものとも知れぬ無数の屍体と──
──ジョージの首。
自分たちを守ってくれていると信じていた 黒い門が遠ざかるのを眺め 少女はまた意識を失った。]
(105) 2014/02/08(Sat) 12時頃
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うん。行ってくる。
[柊の言葉に頷いて、それから部屋の中…マユミの姿らしいものを見つけてまずは安堵し、そして小さい声で]
マユミちゃん、帰れる手段、探してくるからさ
ちょっとだけ待ってて。
俺にも責任あるし。
[それから目が覚めたらしい直円に顔を向ける。
あの孤児院で彼が叫んでいた言葉は聞こえていない。
だから今は純粋に安堵のため息]
直円、俺ちょっと出て行くから。
みんなのことお願いね。
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─ ─
『贖いをなさい』
[女が言った。 流れ落ちる黒髪の、美しい顔をした女だ。]
(106) 2014/02/08(Sat) 13時頃
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『贖いをなさい──菖蒲』
[女は──母は繰り返した。
──違う。 これは鬼だ。
母ならこんな風に、 父の首を抱えて穏やかに笑ったりはしない。
だから──これは鬼。 母の顔を真似た、怖ろしい鬼なのだ。]
(107) 2014/02/08(Sat) 13時頃
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[夜風が強く吹き付け、桜を舞い上げる。 少女は眼を瞑る。 鬼も──鬼が抱えた首も、一瞬視界から消えた。
眼を開けた時、少女の手には一振りの小刀が握らされていた。 鬼は小刀を握らせた少女の手を上から握りこみ]
『贖いなさい』
[また、そう言った。
鬼が近づくと、生首の──父の白く濁った虚ろな眸も近づく。 少女はそれが厭で、首を振る。]
(108) 2014/02/08(Sat) 13時頃
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[母が──違う。鬼が首を捨てた。 父の首が転がってゆく。 首はすぐ傍の桜の木の根本で止まった。
少女はほっと息を吐き出す。
一瞬意識の外へ追いやられていた手が持ち上げられる。 小刀を握らされていた右手が。 少女の意志に反して、鬼に導かれ。
──鬼の喉を、貫いた。]
『贖いなさい菖蒲。
───産まれて来たことの罪を』
[鬼は──微笑っていた。]
(109) 2014/02/08(Sat) 13時頃
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─ 春雨の降る日 ─
[孤児院の養母に助けられてすぐ、少女は気を失った。
目を覚ました時、最初に見えたのは着物の少年>>96 自分を見下ろす眼差しの空ろに、何か──記憶を刺激されて 少女は片目を瞑って、こめかみに走った痛みをやり過ごした。
菖蒲──。 その時浮かんだ名は、すぐに記憶の底に沈んで行った。
そんな名前は知らない。 その名は酷く怖ろしいものだ。
自分は──そんな名前では呼ばれていなかった。
目を覚ました少女に気付いた少年が養母を呼びに行ったか あるいはその場で名を尋かれたか。 だから少女は、もう一度『あや』と繰り返した。 哀しいことの起きる前、呼ばれていた二文字を。]
(110) 2014/02/08(Sat) 13時半頃
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[まだ冷たい春の雨に長時間晒されていた幼い躰は、 それから数日、高熱に苦しんだ。
再び目を覚ました時には、 微かに残った朧気な記憶さえ真っ白に塗り潰され、 生まれたての赤子のような無垢さで、 歳よりも幼い笑みを浮かべ、傍にいた人の手を握った。*]
(111) 2014/02/08(Sat) 13時半頃
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[柔らかに過ぎて行くパステルカラーの日々を、 暴力的なまでに鮮やかな赤が嘗め尽くしてゆく。
黒鉄の門も、庭に生える草木も、血と炎に飲み込まれた。
リッキィが泣いている。 いつもはしっかりもののリッキィも 一旦泣きだすと、撫でてあげなければ眠れないのに。
どうして離してくれないの。 彼女の傍に行って、その手を握ってあげないと。
わたしは──“また”、失ってしまう。]
──…!!
[夢の中で伸ばした手は、現実の空を掴んだ。
そこは寝台の上。 目の前に広がる景色は、いつもと違う見知らぬ天井──。]
(112) 2014/02/08(Sat) 14時頃
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― なまえ ― [ここにきたのは物心ついてから、 突然たくさんの家族が出来た。
とにかく自分は世間知らずで、 あまり外で駆け回ったり遊んだりしたことなどなくて、 はじめは慣れないことばかりで、とても戸惑っていた。
だから一人の女の子と共通点を発見したのが嬉しくて、 全力で一緒に遊んでそれから孤児院に馴染んでいけたのだと思う。彼女の名前にそんな小さな意図があったのかは、わからない>>78
弓矢ごっこ、はびっくりしたけど、 はじめて抱えた小さな子は、あたたかくてやわらかくて、 とても優しい気持ちになれた。 あの橋の向こうにいるという顔も知らないきょうだいとも、 いつかこんな風に遊べたらいいな、と思ってた*]
(113) 2014/02/08(Sat) 14時半頃
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―回想― [何が起きているのか、 目と頭に薄もやがかかっていたようだった。
先ほどまでの食堂でみんなの帰りを待っていたのに、 絢矢に手を引かれて食べかけのシチューもそのままで。
外に――あの橋の向こうに行きたいなんて、思っていたせいだろうか。まるで自分が吸血鬼を喚んでしまったような、そんな気持ちになっていた。 行っちゃだめ、と引き止められた手の感触がずっと残る。 真剣な表情の絢矢の言葉に、いつになくしっかりと同意を示した明乃進の頷きも]
[守備隊の軍人さんたちもやられてしまったのだろうか、 安吾はどうしたのだろう、ジャニスの白い軍服はもう紅く染まってた。あの黄金の闇のもたらす絶対的な畏れ、抵抗しても適うわけが無い。 >>52 視線が向けられただけで、動けなくなる。 あれは人間の捕食者で、自分たちはその前に圧倒的に無力なのだ]
(114) 2014/02/08(Sat) 14時半頃
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[今、彼らが去るのであれば、 少なくともサミュエルはここで殺されない。 制服のスカーフをはずして、踏みにじられて傷ついた彼の手に巻いた。
――制服を着始めた頃から、 女の子だから、そんな扱いをされ始めたようで、 すこし、さみしかったのを思い出す。
キャロラインや、円や、リカルダや、明乃進や、涼平や、直円、 近くにいたみんなと小さな子たちは、いつの間にか見えなくなっていた。
戻らなかった零瑠は、どうしのだろう。 こんな風に血を浴びてしまったら、どうなるか。 周は我慢できただろうか、抵抗したらきっと簡単に殺される。 絢矢はここからちゃんと逃げられるだろうか、 外へ出るのもあんなに怖がっていたのに。
何も出来ない、運命に手は届かない、 無事を祈ることも意味があるのか、わからなくて]
(115) 2014/02/08(Sat) 14時半頃
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[それから――、 >>101 聞こえた声に顔を向けた。 どうして?と問うような、悲壮な顔。 けれど音にすることは出来なくて、 ただ漆黒の少女に従った。
燃え落ちていく家、家族の家。 みんな家族だから苗字は別に要らなかった。
円はまだあのハンカチを持っていただろうか、 刺繍されたイニシャルは『Mayumi.S』
――白兎真弓、 それがその日行方知れずになった子供たちの一人の名前**]
(116) 2014/02/08(Sat) 14時半頃
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―城内―
[――夢はなにもみなかった、
見たような気もするけど忘れてしまった。
柔らかなものに包まれて、泥のように溶けていた意識は、
小さく交わされる声にくすぐられる]
……、
[覚醒までは届かない、
ただ柔らかなものが寝具だと気づいて、
――昔の家に戻ってきたのかと一瞬錯覚する。]
――………、、ん、
[まどろむ意識は、もういない人を呼ぶ音を紡がせた]
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