17 吸血鬼の城
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[魔性として新たな生を受け目覚めた時には 想いも記憶も全て失っていた。 うまれたばかりの雛が親鳥に懐くように 力を分け与えてくれた者を慕った。
私のローズ。 そう囁く魔性の聲が女を甘く縛る。
何時しかその魔性を心酔し ただ傍にあることだけを望むようになっていた]
(79) 2010/06/24(Thu) 02時頃
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[だから――。 メアリーの見つけた日記は熱に浮かされ 人であった頃の記憶を夢に見た時にでも記したのか、 それを記したことさえ記憶はないのだけれど。
それはとても短い日記。 想いだけが記された頼りない手記。
人ではなくなってしまった。 もう戻ることができない。
さいご、どうか、もう一度だけ、 大切な人たちに逢いたい、と。
夢の記憶をおぼろげに綴った儚いもの――**]
(80) 2010/06/24(Thu) 02時頃
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良家の娘 グロリアは、奏者 セシルに「そう。有難う」と薬の手配の礼を言った。
2010/06/24(Thu) 02時頃
[幾度も幾度も囁く言葉。
其の意味を真に理解していなくとも
似た色が惑わせて行くのだろう]
――…
[傍にあれと言う癖に
城主の傍には見えぬ壁が立ち塞がっている。
其処を越えようとするものは
数百年の歳月のなか、現れた事が無く
何時しか己自身ですら、忘れ果てていた]
[悦楽に身を委ね
人を恐怖と憎悪で歪め壊し
満ち足りた其の後に襲う虚無
孤独に苛まれ
消滅の恐怖に怯え
取り憑かれたかのようにまた人を襲う
負の連鎖は
たとえ周囲に薔薇を散りばめようと
埋まる事は無いのか]
[宴の最中であると言うのに
何時に無く胸の内が酷くざわめいている]
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[>>78 白薔薇は小さく首を傾いだ。 いまだ銀の枷はそのままにある]
私が魔物になった と、 ……おかしなことを仰られますね?
でも、もしそうだとして、 私とあなたが同じなら――
あなたも、魔物になってしまうかも、しれませんね。
[両腕の亡骸を抱えなおせば、 白薔薇は弔いを果たすべく再び墓地へと、眼差しを滑らせる]
(81) 2010/06/24(Thu) 02時頃
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>>72 [首輪の下、爪を立てられた場所がゆっくりと血を流す。 今この場で熱い吐息を遠慮無く吐き出すことも、短く声を上げることも許されぬことに、どうしようもないもどかしさを感じて溜息をつく。
息も声も上げることを許されぬ中、一筋の血だけが悦びとして出ることを*許された*]
(82) 2010/06/24(Thu) 02時頃
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>>76 ……。
[この城主がいるところではまだ姉の形見のナイフは出していなかった筈だが。何故、自分が刃物をもっていると分かったのだろう……? いや、カマをかけたのかもしれない。まだばれてはいないと自分に言い聞かせて落ち着かせる]
残念ながら、そんな危ないもの持っていませんので。
[嘘の下手な自分が何処まで嘘をつき通せるものか。どうすれば見つかる前に部屋から出てくれるのか――あれこれ考えるが自然に出て行ってもらうのは無理がある]
(83) 2010/06/24(Thu) 02時頃
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あら、そう。 ではその抱きかかえているその方は、果たしてどなたの慰めなのでしょうね。
[破けた手の皮からの血の香りに反応したセシルを見つつ]
私、宴とは主催が客人をもてなすものと思っていましたけれど、 連れ込んだ客人に興を殊更強請って、 褒美をちらつかせるものもそう呼ぶとは――
[明らかに突然巻き込まれた感じのリンダの顔をチラリと見て]
寡聞にして知りませんでしたわ。
[嘆息した]
(84) 2010/06/24(Thu) 02時頃
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[――愛しいお兄様。
そう口にする事はあれど
私のお兄様。
私だけのお兄様。
そんな台詞を聲に出す事を憚られた。
所有を示して良いのは兄だけだと思っていた。
それを口にして嫌われてしまうのが怖かった。
だから女はただ想うだけ――]
[婦人に向けられた言葉]
[ざわめきのようなものを感じて呟く]
旦那様――…
[立ち並ぶ墓標、その慰めは誰のためのものか]
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そう――…大人しくしておいで 私の黒い薔薇。
[つ、と流れる深紅へ、一度だけと唇を寄せる。 其のままちらりと視線だけをベネットへ向けた]
ベネット 私を誰だと思っている……? この城で私の知らぬことなど、何も無いぞ。
そう、例えば今 弱き人間が己を棚に上げて拗ねている事も 願い叶わぬからと皮肉を並べていることも
全てお見通しだ。
(85) 2010/06/24(Thu) 02時半頃
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水商売 ローズマリーは、ランタン職人 ヴェスパタインに話の続きを促した。
2010/06/24(Thu) 02時半頃
嗚呼、聞こえている。
[白薔薇の囁きに、溜息混じる聲を零す]
己の――人間の尺度ではかろうとするのは愚かな事だな。
此処を何処だかも知らぬらしい。
たかが食事と、同族の死を同じとするはずが無いだろう。
ひとと我等は違うのだから。
其れとも人は食事のたびに墓を立てるのか?
慰めかどうかなど、愚かなことを問う。
眷族なれば墓に入れる
食事を終えた後のゴミは捨てる
それだけの事だと言うのに。
伝えておけ。
……此処は私の城。
お前たちの世界とは、違うのだと。
[魔の城で人の常識など通用するものかと。
嘲りを含む聲を投げた]
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[>>84 一度彼方へ向けた眼差しをもう一度戻せば]
――ええ、私も ちょうど、それを疑問に感じていたところです。
[ふと眼差しを落とせば、表情は消えて。 嘆息する婦人へは、一言]
人の世の理など、 人ならざる者の領域で、通ずるはずもありませんでしょう。
(86) 2010/06/24(Thu) 02時半頃
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[白薔薇の魔性は、紋様の反応から間違いないはず。 ならば、何故彼はそのことを隠すのだろうと疑問に思ったが、口には出さず]
私が、魔物に――。 [それもいいかもしれないと――本当に少しだけれど、そんなことを考えた。 城主やその眷属たちのような力が得られたならば、誰からも苛められることはなくなるだろう。 これまでのように迫害に怯えながら、日々を生きなくても済む]
(あは、ばかみたい――)
[どうせ、このまま魔物たちに踏み躙られる運命。
せめて弱くても怯えていても人間のまま、城主なんかに屈する前に死ねればと、妄想を振り払う]
(87) 2010/06/24(Thu) 02時半頃
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[目覚めたときの昂揚は遠く。白薔薇は憂う]
――…はい、それは。
然りと、お伝えいたします。
[言いよどむような間の後]
……ただ、わたしはふと……
あれほどの同胞の死を、旦那様が見つめておられたこと。
今までそれに気づかずにいたことを、知りました。
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ふふ、御免なさい。 年甲斐も無く拗ねてしまって。 そのヒトは、私の知己。 彼だけでも弔ってくれて、有難う。
[口先とは裏腹に思い描くのは過去の記憶。
神が己を模したヒトを作ったのなら 人を模した存在は――
私を残したあのヒトは、 果たして人だったのか、人ならざるものだったのか]
私にもわかる時が、くるといいのだけれど…。
[自分の中だけで結ばれていく言葉と話と記憶の糸を脳裏に浮かべつつ、そんな言葉と共にセシルを見送った]
(88) 2010/06/24(Thu) 02時半頃
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>>85 ……っ!?
[その声にびくりとして。誰かがどこかで皮肉を並べているのかはわからないが――どうやら、何処にでも現れるだけではなく、何処にいてもすべて情報が筒抜けらしい。思った以上に厄介だ]
……。
[軽く睨んで銀のナイフを枕の下から取り出す。が、それを城主に向けることはせずにハンカチに包んでポーチにしまいこむ]
……貴方は許せないですけど。 僕は此処を生きて出るって決めましたから。
ウサギ2匹を追って両方逃がすくらいなら ちゃんと片方にしぼりますよ。 2匹捕まえられるのが一番いいですけれどね。
(89) 2010/06/24(Thu) 02時半頃
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[>>87 人ならざる耳は その鼓動が少しだけ乱れるを聞く、一度目蓋を閉ざして
婦人が言葉にうすい笑みを返した]
ああ、知己……そうだったのですか。 貴女の慰めになるのでしたら、幸いです。
――…では、失礼いたします。
[そして、白薔薇が墓地へと歩みされば。 ――中庭からは薔薇の香気は消えるだろう]
(90) 2010/06/24(Thu) 02時半頃
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――…嗚呼
[何の事かと、ふと思い出す]
もう、数えることも止めてしまった。
あれは……宴に招き眷族としたもの
街で浚い、血をわけたもの……
眷族を幾人か傍においた事はあったが
皆先に逝ってしまうのでな。
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……ロザリオ。 ヘクターと一緒に埋葬したから。
[今のセシルには、どうでもいい事かも知れないと思いつつ、 墓地へと歩み去る背中にそれだけを告げ、薔薇の香気が消えるのを見送った]
(91) 2010/06/24(Thu) 03時頃
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……おや
[ナイフを仕舞い込む様子に、一度瞬いた。 黒薔薇を解放し、仕事へ戻るよう言いつけながら]
私を消し去る気は、無いのか。 そうか……生きて此処を……其れがお前の望みか? お前一人くらいなら、叶えてやろう。
仕度を終えたら、一度鏡の間へ来るが良い。 場所は影に案内させよう。
[城主は薄い笑みを浮かべて甘く囁く。 魔力を帯びた血色の瞳が、有無を言わさぬ圧力をかける。 しまいこまれた銀で何処まで魔除けとして対抗出来たか。 彼の返事を待たず、城主は踵を返した**]
(92) 2010/06/24(Thu) 03時頃
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[眷属とした者の死に心は痛んだけれど
死は人であった頃の記憶と近くて
触れることを出来るだけ避けていた]
――…私も死んだら其処に眠るの?
[城主と白薔薇の聲にことりと首を傾げる]
出来ることなら……
私は海の泡になりたいわ。
[見たことない青を思いながらそんなことを呟いた**]
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[>>91 聞こえた言葉に振り返る]
―――…、埋葬?
ああ、あれは……ああ、そうですか、 そういうことなのですね。
[廊下の痕、余り聞いていなかった黒薔薇の言葉 ―――繋がれば、ふと微笑う、青の和らぐ色]
それは、ありがとうございました。
[深く――適う限りに、 深く一礼をしてから背を向けた]
(93) 2010/06/24(Thu) 03時頃
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奏者 セシルは、立ち並ぶ墓標に彼方を見やる
2010/06/24(Thu) 03時頃
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>>92 ……な、
[てっきり何時もの調子で笑われて終わりだと思っていたが、返ってきたのは意外な答え。でも]
……自分一人……それじゃあ意味がない……
[それでも鏡の間に向かわなければならない気がするのは何故だろう。部屋から出て行く城主を――彼の銀糸がゆれるのをどこかぼーっとして*見送った*]
(94) 2010/06/24(Thu) 03時頃
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――……ただそれが、
とても寂しいことだと思ったのです。
[並ぶ墓標をみやれば、
主が声に応えるように呟いた]
……お前は……どうだろうな
此処に眠るは、眷族ばかり
幾度も私と交わったお前は、若しかしたら
純血の我等と同じく
灰となり消えるのかもしれぬ。
[幾度か見た、同じ純血の一族の死
最後に立ち会ったのはもう思い出せぬほど昔]
嗚呼、だが私のローズ
死ぬなどと……お前まで私を置いて何処へ行くのだ**
本屋 ベネットは、メモを貼った。
2010/06/24(Thu) 03時頃
寂しい、か……
[最早感じるこころなど
凍てついて久しいと、思うのに]
私には、解らぬ。
[己の胸の内が、解らない。
ただ、墓が一つ増えるたび
帳面に名前が一つ増えるたび
胸の何処かを風が吹き抜けていくだけ**]
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――中庭――
[自分の何気ない言葉に向けられた、和らいだ青と混じり気のない微笑みに、少女は当惑する]
どうして、そんな顔するの。 ……わかんないよ。
[此方に深々と頭を下げ、どこか嬉しげに去る姿は、まるで――]
何が、友達じゃないかも、だよ。……嘘つき。
(95) 2010/06/24(Thu) 03時頃
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