158 雪の夜に
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―海を臨む坂道― [目的の場所に行く前に、 ――彼の孫娘はどうしているのか。 それがふと気になって、坂の途中で足を止めた。
2人きりの家族、 人狼の容疑をかけられて、 そして、帰らなかった]
……、
[それはあの頃の自身に重なる]
(48) 2013/12/26(Thu) 23時半頃
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よっぽど手の込んだ偽装じゃなけりゃ、そうなる。
[軽く肯定した。]
……二人目の方は、死体を見れてないんでな。
けど、医者に運び込まれた上で『喰われた』っつってるんだ、
ちょっとやそっとの見間違いじゃないだろう。
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[なにより、これは、嘘をつくべき相手ではない。 ヒューは目を逸らさず、ハナの大きな目を見詰めている。 ハナが震える姿を、ただ、見下ろしている。]
誰がやったんだか、わかるな。
[だってだってと繰り返すのを、聞き続けた。 少女の言葉に、ヒューが驚く様子はなかった。]
……ああ。
[宿に帰ろうというセレストの提案に、低く応じる。 ホレーショーの病室を背にして、ハナとセレストの傍へ歩く。 膝から下は、走ってつけた雪で、湿っていた。]
(49) 2013/12/26(Thu) 23時半頃
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[雑貨屋の扉が叩かれた頃、ソフィアの顔は涙で濡れていただろう。 ドアを叩いているのがティモシーではない事は明白で、ソフィアはドアを開ける事がひどく恐ろしかった。]
……
[暫く様子を伺う。 けれど、ドアの外の人物が帰って行く気配もない。 嗚咽に肩を震わせながら、ソフィアはドアを開けた。]
(50) 2013/12/26(Thu) 23時半頃
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うおっ……
な、何だ。もう聞いてたのか?
[出て来ていきなりの泣き顔に、旅人は狼狽えた。>>50 てっきり、ホレーショーの件が耳に入っての事かと思う。]
(51) 2013/12/26(Thu) 23時半頃
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[ヒューとハナの会話に、やはり難しい顔をして]
なあ、それは…、 あたしが聞いててもいい話かい?
…話してくれるんならいいんだけどね。 あんたらの知ってること…。
[ハナの小さな背を押して診療所から出ながら 確認を取るように言葉を向けるのはヒューに対して。
診療所を出ると寒くて震えた。 外套を外したヤニクは今、女よりも寒いに違いない。]
(52) 2013/12/26(Thu) 23時半頃
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[そこに在ったのは、ヤニクの姿だった。 後になって振り返れば、いつも着ていた外套を身につけていなかった事に気付き、すぐに中にいれてあげるべきだったかもしれない。]
おじ…、おじいちゃ…ん、が…っ、、 きのうから、かえってこなく……っ、て…
[ぼろぼろと涙が零れ頬を伝う。 ヤニクの顔を見て気が緩んだのか、そのままへたりと玄関先に座り込んだ。]
(53) 2013/12/27(Fri) 00時頃
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声も聞こえないのに、……不思議ね。
[こんな風に同胞に遭遇したら、
どうするものなのか、少し気にはなったが]
ということは、
……あなたは殺さなかったのね。
襲った、相手を。
[どこか安堵のようなものが声音に混ざる]
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[ヒューの重たい言葉に、ハナは色を失って震えていました。 セレストに背をおされるがまま診療所をあとにして、一層その温度が下がったようでした。
少女は焦点の合わない瞳で、みじかく速く呼気を吐き出していました。 白いもやが小刻みに、口元から吹き上がっていきます。
いやいやと眉を寄せて、首を振ります。 困惑したようなセレストに応える余裕は、ありそうにありませんでした。]
(54) 2013/12/27(Fri) 00時頃
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―雑貨屋近く― [近づくごとに、女の足は鈍った。 褪せた町並みと裏腹に鮮明になる記憶。 小さな手をひいて、この店をよく訪れた。
お茶を出してもらった後、あの子が昼寝をしている間に、 彼の風景画の素描を見せてもらった。 どうして人間を描かないのかと訊いたのは、 彼が自分を描いてはくれないかと期待してのことだった。
店構えは彼と同じように流れた年月を刻み、 けれどよく手入れがされていて、大切に扱われていたのだと思う。
――その大切に刻まれた時を、 誰に壊す権利があるというのか]
(55) 2013/12/27(Fri) 00時頃
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[少し距離を置いた場所から、 女はあの旅人たる青年の背と、 その背の向こう、少女の姿を見つめていた]
(56) 2013/12/27(Fri) 00時頃
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――え。爺さんが? 昨日から?
[予想と別方向からの返答に、思わず棒立ち。>>53 娘の方からへたり込むので合わせるように屈んだが、 そこから先が続かない。]
それ、誰からも知らせは来てないのか?
(57) 2013/12/27(Fri) 00時頃
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[先ほどから難しい顔をしつづけているセレストを一瞥する。 ヒューはセレストに、ひどく疲れた声で答えた。]
……自分できめてくれ。
話して聞かせたい事でもないしな。
[そう答えてから、ヒューは少し屈む。 ハナは酷く震えている。焦点のあわない目をちらりと見てから、動くほうの手を、ハナの冷たい小さな手へ伸ばした。 手を、つなごうと。]
(58) 2013/12/27(Fri) 00時半頃
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そうだな。
[向こうも、自分以外の人狼の存在に気付いて良い筈なのだが。
何らか理由があるのだろうと、想像を巡らす位しか出来ない。]
んー? あぁ。
……どうして? 安心でもした?
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[不安に打ちのめされながら、家族の帰りを待ったのだろう。 娘の様子をじっと眺めて――それから口を開いた。]
爺さんの方は知らないけど。
……宿には、今朝連絡があってな。
[それをどんな心地で聞くのかと、想像してみる。 最早家族のない自分には追い付かない世界だ。]
ハナのお袋さんと、ホレーショーが襲われた、 ――喰われたんじゃないかって。
(59) 2013/12/27(Fri) 00時半頃
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やっ……!
[弾かれたように、少女はふたりと距離を取りました。 その表情に浮かぶのは紛れもなく恐怖の色でした。 がちがちと歯を鳴らし、みっともなく身をすくませます。]
やだ…… やだ! ハナじゃない わたしじゃないよう! あれは! じんろうがっ
おかーさん! おかあ……っあ、 あっ
[頼るべき母を言葉にして、少女は表情を凍らせました。]
わ、わああああ!?
[恐慌に陥った彼女は、そのまま逃げ去ろうと背を向けました。]
(60) 2013/12/27(Fri) 00時半頃
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[自らは口を開こうとはしないヒューに眉を下げた。 ハナへと手を伸ばす姿を眺めるだけだ。女はハナとは手を繋ごうとはせずに震える白い息を吐いた。ぐす、と寒さで鼻が鳴る。]
……話しておくれよ。 さっきの口ぶりだと、あんた知ってるんだろう。
…事件の犯人のこと、何か知ってるんだろう。
[ヒューとハナの姿は見ることができず、 前を向いてから雪の積もる地面へと視線が落ちる。]
あたしの勝手な推測だけど、 あんたの怪我も関係してるんじゃないのかい? ―――ホレだってやられた、 無関係って顔をもうしてられないんだ。
……なあ、話しておくれよ。 何もわからないままだと、考えることだってできや…
[ハナが、怯えるような声をあげたのはその時で、]
(61) 2013/12/27(Fri) 00時半頃
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―――…じんろう、
[ハナの言った言葉を繰り返すように、 女はハナの目を見て呟いた。]
(62) 2013/12/27(Fri) 00時半頃
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[ハナが弾かれたように距離をとった。眉根を寄せる。]
……。
[歯を鳴らしながら、悲鳴をあげるように「いやだ」と繰り返すハナを見て、心底、悔いた。 やはり、やってはならない失敗だったのだ。 何があってもハナの母親は、守ってやるべきだった。 昨夜見つけられなかった事を悔いても、昨夜には戻れはしない。 舌打ちをして、ハナが背を向けるのに、乱暴に腕を伸ばした。 多少痛かろうが、転ばせようが、気にするつもりはない。 片腕では届かず、逃がしてしまったなら、追いかけるつもりで。]
(63) 2013/12/27(Fri) 00時半頃
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……そうね、
勝手だと思うけれど少し安心したわ。
[視界の中に、青年の姿を映しながら囁きを乗せて]
死ななかったらまだ罪が軽いってか?
だとしたら、そりゃちょっと解らねぇけどな。
[だとしたら、それはどこまでも人間くさい感情だと思う。
囁きの響きに、ふと気配のようなものを感じて、
一瞬背後を見遣る。]
結果は大差ないんじゃないか。
[船乗りを船から引き摺り下ろしたのだ。]
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あ、ああああッ!?
[冬支度に厚着した衣服――その先を男に掴まれ、激しく身を踊らせます。 雪の上、石畳を転がり、それでも男がハナを放すことはありません。]
は、放して! 放せ! やあ……! た、助けてェ!
あ、あ、あっ
[少女はそれとは思えないほどの強い力で、男に抵抗します。 片腕とはいえ、肉体労働に従事する男に7歳の子どもが敵う道理はないのです。 やがて。
ぱっ。
雪の中に紅い華が咲き、少女の肌に色を散らしました。]
(64) 2013/12/27(Fri) 01時頃
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え、あ、え
[わけがわからない、そんな表情で少女は男を見返します。
少女の腕が。
爪が長く伸びて。
男の手を切り裂いていました。]
(65) 2013/12/27(Fri) 01時頃
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そうね、
結果は変わらないかもしれない。
……だとしても、
死んでしまうより、よかったと思うわ。
……あんたがそれを言うか。
[苦笑らしき揺らぎがそこに乗る。]
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……
[ヤニクの言葉 >>59 にあげられた顔は、何の表情もうつしてはいなかった。 時が止まったかの様に、虚ろな瞳でヤニクの顔を見上げ、そして項垂れる。]
(66) 2013/12/27(Fri) 01時半頃
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ともかく……立てるか。 爺さんの事も、自警団か誰かに聞いた方が良いだろ。
[ここに来るまでに被った雪が、振った頭からぱらりと落ち、 また少しずつ水滴に変わり。 手を伸べるが、ソフィアは立てるだろうか。
背後の女にはまだ気付かぬようで、振り向く事はない。]
(67) 2013/12/27(Fri) 01時半頃
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ホレーショーの兄ちゃんの方は、今は診療所だ。 面会謝絶らしいんで、どんな具合かは見てないけど、 多分難しいとこなんじゃないかと思う。
[項垂れる娘に言い添えた。]
……それとも、ここで待ってるか?
[家族の所在、あるいは船乗りの容態の知らせを。]
(68) 2013/12/27(Fri) 01時半頃
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[しばらく後、 女はまたゆっくりとした足取りで、 その場所を離れていく。
行くべき先は自警団の詰め所だ。 ――そして]
………、
[>>64 助けを求める子供の悲鳴、わずか早足に なる*]
(69) 2013/12/27(Fri) 01時半頃
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