88 吸血鬼の城 殲滅篇
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[中庭へ向かうにはバリケードを再び越えねばならぬ。
そう思って振り返ったヒューの目に、レオナルドへ投げかけたテーブルクロスが先ほどまでとは位置を変えているのが映った。]
(47) 2012/05/01(Tue) 09時頃
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負傷兵 ヒューは、メモを貼った。
2012/05/01(Tue) 09時頃
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― 1階への階段―
[ムパムピスを背に、慎重に歩を進めるつもりだった。 だが、戦いは得手としていても、罠の類の感知は苦手分野なのか、 ヒューが設置したワイヤーに足元を引っ掛けた。
厚手の服を来ていた為、怪我をするのは逃れたが、 バランスを崩して、盛大な音を立てて階段を転がり落ちてしまい、 咄嗟に受け身をとった]
……つっ!
[それでも多少の傷みは避けられないのか、呻き声をあげた]
(48) 2012/05/01(Tue) 09時半頃
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―大広間― [テーブルクロスの山は、先程よりは少し小さくなっていた。 良く観察すれば、布の下の石床に血に混じって小さなガラス片が散乱しているのに気付いただろう。 だが、燃え広がった炎が、じりじりとテーブルクロスをも端から焼き焦がしつつある。 小山の下を確かめようと思えば、炎に近付かざるを得ないだろう。]
(49) 2012/05/01(Tue) 10時半頃
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― 4F:物見塔屋上(27) ―
[生まれ落ちたばかりの夜の子供が 備わった力を確かめるように、階下へ消える。
羽の生えそろったばかりの雛鳥が 自分は飛べるのだと気付く姿にも似て、 微笑みを誘った。
"娘"を殺した男。 "娘"が心許した男。
クレアという娘の存在を縦糸に 奪い、与える血の絆を横糸に、 憎悪と支配と歪んだ情愛が綾をなす。]
(50) 2012/05/01(Tue) 10時半頃
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[ドナルドの姿が遠ざかってから 闇の中から器を掴み出し、 掌を爪で裂いて、血を注ぐ。
新たな血が加わり、より濃く力を増した己の血を器に溜め、 それを翻し、城へと注ぎ掛けた。]
クレア。オレのシェリ。 これは、おまえの分だ。
[血が城へ吸い込まれ、地下聖堂へと伝い落ちていく。 それをしばらく見送っていた。]
(51) 2012/05/01(Tue) 10時半頃
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[娘へと向けていた心に、別の感情が触れてくる。
ざわめき、混乱し、熱病に冒された心。
魔性の血がもたらす、熱い疼きに。
手に触れるがごとく、
その心の色を知り、"声"を聞く。]
―――― 心配すんな。
[意志をもって、"声"を飛ばした。
下僕の臓腑に、直接響かせるように。]
いつでも、見ていてやるよ。
[庇護であれ枷であれ、いつでも与えると、
それは、"子供"への情愛を真似た、残酷な宣言。]
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[約束を果たすべく、自分も階下へと向かう。 急ぐことのない歩調で歩みゆく先は、中庭。]
玩具をひとつ片づけたらしいからな。 あれにも褒美をくれてやらんと。
["娘"の騎士。"娘"の側に在ったもの。 地獄の犬の目を通して、その戦いぶりを知り、 瞳の中に、裡を灼く昏く峻厳な情熱の炎を垣間見て、 興味が湧いた。]
あれは、気に入った。
[ひとりごつ声を彩るは、満足の色。]
(52) 2012/05/01(Tue) 10時半頃
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[螺旋階段を下りながら、 無意識に首筋を指でなぞる。 間近で目を凝らさなければわからないだろう薄い筋が 首の周囲をぐるりと巡っていた。
一度、倒されたという印。 首と胴が、切り離された痕。]
(53) 2012/05/01(Tue) 10時半頃
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……あいつは、良い腕だったな。 名前、なんつったっけ。
[単なる獲物であれば、名前を聞くことなどない。 だが魔物狩人に対しては、違う思いを抱くこともある。
それは憎悪であり、恐怖であり、 時には敬意や、愛着であり、 友情や、親愛に近いものに発展することさえ、ある。
それほどの感情を抱く相手など、 長い生の中でも、数えるほどしかない。 そして]
(54) 2012/05/01(Tue) 10時半頃
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――― そうだ。
ガストン・ワイルダー。 貴様にまた会えたら、愉しいだろうになぁ。
[己を倒した相手は、 間違いなく、そのひとりだった**]
(55) 2012/05/01(Tue) 10時半頃
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[テーブルクロスは炎に炙られても動く気配はなく、あの喀血の様を見れば、レオナルドは自爆を最後の反撃として息絶えたのだろうと判断した。 ほどなく炎がすべてを焼き尽くすはずだ。
ラルフのエストックを拾い、墓標代わりに突き刺さんと盛り上がった部分へ投げる。
それから炎を迂回して大広間の端からバリケードを乗り越えて北へ向かった。 爆ぜ焼け落ちる木材の音と黒煙に紛れて、ジェフが階段を転がり落ちたのには気づかずにいる。
ジェフが呼び止めるならば踵を返して向かってくるだろうが、高座と柱の裏を横切って厨房へと向かうヒューの姿は、果たしてジェフの視界に*入ったろうか。*]
(56) 2012/05/01(Tue) 11時半頃
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負傷兵 ヒューは、メモを貼った。
2012/05/01(Tue) 11時半頃
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―厨房―
ハアッ、ハアッ ……
[壁に寄りかかり、崩れ落ちそうな身体をようやっと支えて立ち上がる。 階上から討伐隊の誰かが降りてきたらしきを好機と、テーブルの下を這ってバリケードを抜け、どうにかここまで来た。 邪魔になるからと背嚢をテーブルクロスごと捨ててきてしまったのは痛恨だが致し方ない。 止めを刺されること、人質になることだけは避けねばと言う判断が、正解だったかどうかは分からない。 ヒューの注意がこちらから逸れたのだけは分かったが、何より完全に回復するまでの時間が欲しかった。
とにかく今は急ぎ身を隠さねばならない。 ヒューは必ず止めを刺すために自分を探し出そうとするに違いない。 討伐隊のメンバーたちなら、運がよければ見つけてくれるだろう。 救援者が必ず勝つという楽観視はしていなかった。]
(57) 2012/05/01(Tue) 11時半頃
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[血まみれで焼け痕のあるローブとレンズにひびの入った眼鏡という凄まじい姿だったが、治療薬の効果で火傷や打撲傷は治っていた。 脱臼した左肩はそのままだが、今肩を入れている余裕はない。
壁伝いに進み、曲がり角を越えたあたりに扉を見つけた。 壁に寄りかかりながらノブを回す。鍵は掛かっていないようだ。 滑り込もうと僅か開いた時に、妙な感触を受け、隙間から中を覗く。 開けた瞬間に木箱が倒れるようになっていた。 普通に扉を開けて入ろうとしたら、倒れ掛かる木箱にぶち当たって怪我をしたかも知れない。 慎重に手で箱を押し戻してから、中に入った。]
(58) 2012/05/01(Tue) 11時半頃
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[念の為、木箱はそのままにして、更に簡単な障害となるよう樽のひとつを足で扉の前に押し出す。 そこでようやく幾分か安心感を得たのか、錬金術師の身体は糸が切れたように床に頽れた。
五体全てが不協和音を奏でていた。 生命力を活性化させる薬は怪我を治癒するが、同時に体内に巣食った病も進行させる。 苦痛を取り除き、支障なく身体を動かす為に、錬金術師は既に大量の薬を自分に投与していた。]
時間が、ない……
[血に汚れた頬を樽に押し付け、レオナルドは呟いた。**]
(59) 2012/05/01(Tue) 11時半頃
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―― 城主専用バスルーム(24) ――
[警戒していた影の魔物はいないようで、何事もなく3階へと辿りついた。 寝室の扉を開け、そのままバスルームへと移動する。
蛇口を捻り水を手の平で受けて飲み干す。 少しだけ気分が浮上したような気がして、ほっと息を洩らした。
本当なら火傷は冷やすのが一番いい。 頭から水を被ってしまおうかと考えるが、その後の事を考えると面倒だ。]
…飲んだら楽になりそうですが。
[レオナルドから渡された薬はまだ残っているし、ラルフから譲り受けた物もある。 立て続けに飲むと、体力のある者でも暫くは起き上がれなくなると聞いている。 元より体力の少ない自分だとどれくらい動けなくなるのか。 今は敵影もないが、動けない時に敵が来たら、そう思うと飲むは躊躇う。 幸いまだ動く事は出来る。 薬をもう一度飲むのは城を出る事が出来たらにしよう。 そう決めると薬をそっと革袋にしまった**]
(60) 2012/05/01(Tue) 14時頃
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病人 エリアスは、メモを貼った。
2012/05/01(Tue) 14時頃
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― 大広間 ―
[ようやく顔を上げてみたものは、全く様相が変わってしまった大広間の姿。 中央に集められたテーブルからは、勢い良く炎が吹き上がり テーブルから滑り落ちたクロスの端も燃えていた。 クロスの盛り上がった場所には、ラルフのエストック>.56が突き刺さっている]
ラルフ!
[嫌な予感が襲って名前を呼びながら、クロスをめくると、 エストックが突き刺さっていたのはレオナルドの背嚢>>57だった]
……レオナルド?どこだ?
……ムパムピス。消火を――。 それからラルフとレオナルドを探すんだ。
[行方のしれないエリアスは諦めるとしても、 彼らの所有物があるということはこの近くにいるかもしれない。 そう思うと、彼らを放り出したまま扉のほうに向かう気には*なれない*]
(61) 2012/05/01(Tue) 14時頃
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負傷兵 ヒューは、メモを貼った。
2012/05/01(Tue) 15時頃
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── 厨房 → 中庭 ──
[手当をしないままの左脇の傷からは、さほど多くはないものの赤い血が流れて床に痕跡を残していた。 ラルフとの戦いで傷を負った階段下の戦場から、テーブルを乗り越えて厨房へと。
レオナルドが身を隠しているとは知らず、ヒューは食料庫の傍らを通り過ぎて厨房北側の扉を開く。 右手には剣を握ったまま。]
(62) 2012/05/01(Tue) 16時半頃
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― 物見塔 ―
――― にしても、最初に感じたあれは、なんだ?
[未だ土と岩の下、形無くたゆたっていた時に感じた気配(>>0:129) その正体が未だ掴めず、首をひねる。]
ガストン・ワイルダーが帰ってきたのかと思ったが 違うらしいしな……
[どれほど年月が経っていようと、見間違うはずがない。 一度はその血を口にした相手だ。 ほんのひと口だったとはいえ。]
(63) 2012/05/01(Tue) 16時半頃
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[考えに耽りながら、歩くのに飽いた身体がずるりと崩れ 闇となって塔の窓より流れ出す。
塔の壁面を伝って滴り落ちた闇は 柔らかい草の上に溜まって、ゆるゆるとひとの姿に凝った。]
→ 中庭 ―
(64) 2012/05/01(Tue) 16時半頃
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負傷兵 ヒューは、メモを貼った。
2012/05/01(Tue) 16時半頃
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[暗さに目が慣れていなかったのだろうか。 闇がわだかまっているとばかり思っていた場所に、人間がいた。
あるいは、犬が消えたのと逆の魔法か。 魔法と割り切ってしまえばさもあらんと思う。 それよりも──]
(65) 2012/05/01(Tue) 17時頃
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[草の上に立つ偉丈夫の姿は、よく見覚えのあるものだった。 それでいて、会ったことがある気はしない。
どこで──と悩みかけ、答えに思い当たって、わずかに瞳孔が開かれる。]
先代──…
[城主の部屋に南接する画廊に掛けられた肖像画。 そこに描かれた先代城主の姿が今、目の前にある。]
(66) 2012/05/01(Tue) 17時頃
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― 中庭 ―
[犬のように首を振るい、髪に残った闇の残滓を払い落として 塔の影から歩み出る。
抜き身の剣を下げたまま現れた騎士を一瞥して、 可笑しそうに唇を上げた。]
どうした? 幽霊でも見たという顔をしているぞ?
[実際、幽霊とはさほど遠くないのだが、 冗談のように言って、歩み寄る。]
(67) 2012/05/01(Tue) 17時頃
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膝をつけ。
本来の城主の帰還だ。
[剣の間合いへ無造作に踏み込みながら 命じるのに慣れた声で、鷹揚に服従を求めた。]
(68) 2012/05/01(Tue) 17時頃
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おれが忠誠を誓ったのは、先代にではありません。
[そう言い返しながらも、中庭へと進んで背後の扉を閉めると、剣を左手に持ち替えて地面に拳をつき、その傍らに左膝を並べた。 かつて城主の座を占めていたと主張する者への礼を尽くして。]
(69) 2012/05/01(Tue) 17時半頃
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幽霊、とご自身で申されたが、 先代は…、生きてはおられぬのだろう?
[ふと口にしたのは、先代が肖像画の姿のまま齢をとらずにいることの奇異に気づいてのもの。 死してなお、霊魂がその地に留まり、守護あるいは呪いをもたらすという話はいくらもある。 それならば、城主クラリッサが殺されたこのタイミングで祖霊もまた復讐のために現われたのだろうと受け入れるのは、ヒューにとって難しいことではなかった。]
(70) 2012/05/01(Tue) 17時半頃
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[先代城主とクラリッサの具体的な関係は知らない。 クラリッサは町で育ったそうだ。 それはつまり、彼女が妾腹の姫だという事情なのだろうと憶測して、ヒューは領主の血筋については立ち入ったことは一切聞かずにきたのだった。 出生がどうであれ、クラリッサは至誠を捧げるに相応しい主君だと。
ただ、肖像画を前にした時のクラリッサの横顔は、悲しげにも甘やかにも見えたことを覚えている。]
(71) 2012/05/01(Tue) 17時半頃
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―貯蔵庫― [がくりと前のめりに床に倒れ込みそうになって、慌てて姿勢を戻す。 どうやら樽にもたれて座り込んだまま意識を失っていたようだ。
ふと改めて明かりのない室内を見回す。 闇に慣れてきた目に、吊るされた塩漬けの腿肉や、酒樽や木箱の輪郭がぼんやりと映る。 小さい樽に山と盛られた丸いものは果実か野菜の類いだろうか。 ここは食料を貯蔵する倉庫に違いない。 少なくとも当分食料にだけは困らないだろう。]
(72) 2012/05/01(Tue) 17時半頃
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― 中庭 ―
あれに忠誠を誓ったのなら その主であるオレに従うのは、当然のことだろう?
[普遍の理であるかのように説き、 望み通り膝をついた男の前に立って、見下ろす。 昏い炎を灯す瞳を覗き込んで]
―――良い目だ。
[犬に言わせた言葉を、もう一度告げた。]
(73) 2012/05/01(Tue) 18時頃
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ああ。死んだ。 だが蘇った。
[騎士の疑問へは、端的に答えた。 相手がなにか思い違いをしているだろうことは読みとれたが、 特に訂正はしない。]
―――あれの血が、オレを目覚めさせたのさ。
[そこに、さしたる違いはない。]
(74) 2012/05/01(Tue) 18時頃
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