25 花祭 ― 夢と現の狭間で ―
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…食ってみたい男でも、見つかったか。
[不意に投げてみる声。
特に目的があるわけではないが。
花祭に出入りする関係、
あの人食い花とは何度か面識もある。
当然、共に"食事"をしたことも、だ]
…乾様も、お父上同様…血は争えぬようで。
このまま色に狂うなら、容易に手の内に落ちましょう。
[嬌声に混じって聞こえる囁き声。]
良い体つきをしておりますし…寺にて節制しておられるのなら、味の面ではあなたのお気に召すのでは?
乾?
…ああ、あの色坊主の。
[小さくわらう。
引き締まった、と聞けば幾らかは
興味があった]
脂身が多いのは好かん。
わたしは悪食ですから…脂のしっかり乗ったものも嫌いではありませんよ。
それに…祭りにて喰らうはただのエサではないのですから。
[子息を送り込んできた家のいくつかは秘密裏に、その子ではない世継ぎを望んでいる場合もある。
当人たちはおそらく知るまい。]
[熱が身を侵食していく
満月が
近い
少年は夢うつつ
真っ赤に染まった先を垣間見る]
肉を――…喰らい、種を植えつけて
[裏の路地で
望まず生まれ、捨てられる子供たち
この世界に何故、底辺と呼ばれる其れ等があるのか
知っている
知っていた]
壊す
この世の理
[遠くに会話を聞きながら
さらに深く、夢の奥へと堕ちていく**]
…わかっている。
[食うだけではない。
その言葉がどういう意味なのか]
…ああ、もうすぐか。
[さざめくような声。
もうすぐ、またひとつ人喰らいの花が咲く]
|
[寝台の上、白い肌を見下ろす。 白絹へと指を滑らせ、口を吸い肌を合わせ]
貴方が花である頃に、出会いたかった。
[それは本心。 花主が、花の折になんと噂されていたかも知らず。けれど知ったとしてこの夜、手放すことは出来なかっただろう。
ほっそりとした白い腕。艶やかな髪色。壊れ物を扱うように軟く、肌を重ねていく。 僧の身とはいえ、人を抱いたことは幾度か有る。 花といえど同じ人。違いなど余りないと思っていた。けれど――]
貴方は、美しい。 枯れた私にですら、そう映ります。
[溺れぬように。 自制していても口から出た言葉。 一夜の夢ならば、*その間だけでも*]
(320) 2010/08/03(Tue) 20時頃
|
……イアンの心は主が亡くなった時に、
既になくなっております。
[ぽつり、そう零せど、すぐに小さく笑って]
なんて……殺されるようなへまはいたすまい。
[取って置きのの言葉には嬉しそうに笑みが零れる]
……殺すな等とおっしゃるから
太刀を拒否されるのではないかと危惧しました。
今、受け取りに参ります。
お時間よろしければ、部屋にお帰りください
ああ戻る。
だが、こころはな、なくならぬよ。
それにそういうことを奴は望まないと思うがな。
[それはさりげに、実は知っていること、告げた。]
……なくならなくても……いりません
それに……主の真意は今となってはわかりません……
[高峰の言葉同様に、主の意思を推測する言葉へは
そうとだけ零した]
――其は、幾多の言霊
其は、この世ならぬ鳥のうた
それから
其は、この私よ
愚かなロビン
[つかの間の歌は
途切れ
脳裏で
哂うこえが
する]
そうか。
じゃ、しばらくは、俺に預けておけ。
仕事中は、以心伝心しておかないとだからな。
[さらりと]
…………
[預けておけといわれて、はいそうですかと
言えるほど人に甘える性分でもなく
仕事も絡めば露に拒絶するほど頑なでもなく
返事に窮して俯く]
……先程触れて確かめるとも
申し上げましたし
[そう言って自分が軽口で交わした約束を
律儀に守ることを口にしながら話題をそらした]
[親は天性の誘惑者だった。
何故彼が裏町に居たのか、知る事は結局無く
教わった事といえば満月の夜毎行われる――
多才な芸妓を持つ花と
その稽古を身につけたのは少年なれど
型どおり
譜面どおりの所作
毒花咲かずしては凡才に留まる
噂のロビンは、少年の内で眠る朱いろの花
芽吹くときは、もうあと僅か]
お前は、本当に正直なんだな。
まぁ、いい。
[冗談交じりの件を、また新たに口にしたときは、小さく息をついて…。]
無理せずともよい。
俺なんぞ見なくても触らなくてもよい。
お前の手と目を大事にしてやれ。
[一途な花というものを感じている。]
……そのように、育てられております
[主を知っているならば、主が信仰する神と教義
それも主を通して知っているだろうと]
……無理を、しているつもりはありませんが……
[大事にしろ、そう言われても
大事にする意味を失っている青年は
頷くも否定も出来ず
また返事に窮しそれだけを零す]
ああ、そうだな。お前は何も悪くない。
亡くした主のため、すべてを込めていくのは、花として幸せなのかもしれん。
ああ、そのとおりだ。
余計なことばかりを言ってすまないな。
まぁ、気にするな。
[本当に見えぬのならば、だが、
見えて見ぬのなら、それは、何かが違うと思った。
そして、その事実は、ひさびさに気分を落ち込ませるものだったが、気にしても仕方ない。]
…………はい。
[眼前の仕事仲間の口にする言葉に
青年は何度も返事を窮し]
……例え、あの人が望まなくても
それでも私の咲き方です。
私が選んだ以上、私が悪くないとは申し上げられません
……が、おっしゃるとおり幸せだとは、思います。
[それでも、外を眺める刷衛を紅で見据えながら
静かにそうと告げて
例え己が目を塞ぐ様子が
他者の気を塞いでも……己に積はないとは言わないが
曲げることはない]
[ふと、こちらを見ているのに気がつくと]
おまえ、見ないといっただろう。
見たのなら、笑え。
見たのなら、貸した代償は払ってもらうぞ?
[今度はふざけた声になる。]
……見なくとも触らずとも良いと仰られましたが
見るなとは、触るなとは仰っておりますまい?
何故……?何故笑いを求めますか?
眼が二つあり、鼻が一つあり、口が一つある
皮膚があり、眉がある…けれど笑う要素が何処にありますか?
……それでも、笑えと言うならば笑います
代償をと言うのならなんなりと。
[ふざけた声にはそう、紅を細めながらも
座る刷衛を真摯に見詰た]
お前、結構屁理屈な花だな?
あれもさぞかし扱いにくかったろう。
[またおどけたように、かつての旧知にそう同情するようにわざと言う。]
ああ、目と鼻と口がついている。
歯はむき出しで、毛穴はでかい。
目は落ち窪んでて、鼻はつぶれているさ。
[そして、くくくっと笑う。]
[様々な考えの合間に思うことは多々あれど]
…何の騒ぎだ?
[鼓膜に強く響く音に、誰か理由ひとつ知らぬものかと。
笛の音であるということは、よく解るのだけど]
まぁ、代償も冗談だ。
心持たぬものを抱いても虚しいだけだしな。
まぁ、安心してあれを思って剣を振るうといい。
ちゃんと見守ってやろう。
[喋っている間も、きっと顔を触る手には、少しだけ心地よさげ。]
御存知ありませんか?
チャールズも普段は温厚なれど
神学と言うなの論争の場では名うての論客
……床では伽話の変わりに艶もない論戦に遊んだものです
[そう言って少し紅が遠くを見て
それから現在へと焦点を合わせる]
刷衛殿はそれで刷衛殿です。
そしてその眼は刃脈を真摯に見つめ、
その歯は熱される釜の前でも怯まず結ばれ
熱から守るため身体は汗を毛穴から流し
その花は上質な鉄を香りからも見極める。
右に倣えのモノばかりが良きもの等馬鹿げている
形なぞ様々だからこそこの世は面白いのです
[己が欠点をあげるような刷衛の笑いに
そう返してから、心地よさげな刷衛から
指を離し戸口に向かう]
心がなければ楽しめぬ御仁ならば
そればかりは、満たすことが出来ず申し訳ございません。
[ゆるりと戸口に向かいながら笑って]
……ありがとうございます
ああ、そうだ……明日の宴までには
封鎖と根回しは終わるとのこと。
明日の宴には告発をおこないます。
お見守りよろしくお願いいたしますね。
なるほど、
じゃ、その屁理屈は、あれ仕込みか。
[そして、泣く笛の音は己にも響いたか。]
本当に、普通の花祭にはないものがここにはあるな。
[そして、また考え込みつつ…]
あの月瀬も紅い月を描いていた。
あと、月のつく名前もなんと多いことよ。
やはり、まんまるは早く捕らえて何かを吐かせるべきだな。
ああ、頑張れよ。
[戯れに誰かを抱くなどということは、
昔ならば喜んでいたか。
だけど、年齢を経れば、それも、また、心なければ、終わり虚しくなる。]
ああ、見守ろう。
くれぐれも、用心だけはしろ。
[そして、去りいく花を見送った。]
これもまた、おもしろき音色よ。
[返す言葉は気怠げに。]
宴席はまだ続いているようだけれど…今少しは身を休めたくてね。
[ひとときの淡い眠りだけでは消えぬ甘い余韻に、今は酔うばかり。]
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