52 薔薇恋獄
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……さ、帰ろうぜ。
4人と、日向で。
[また、改めて弔いはしたいと思うけれど。
それだけ言って、あっさり手を離し。
加える名は、彼が当然、その欠片を連れ帰るんだろうという前提]
また、来るよ。
それまで、せんぱいたち、宜しくな。
[別荘が土砂に埋もれても尚、咲き続ける薔薇。
それは咲くまま、あるがまま。
やがて自然に癒されるその時まで、手を触れず静かに見守るのが良いのだろうと。
ふたりの、他からは見えざる友人たちの待つ場へと、踵を返した。
勿論、またふらっと何処かへ行ってしまわないよう、蛍紫の手をしっかりと握って。
その指先に、薔薇の棘で傷つけたんだろう傷を見て取れば。
眉を軽く潜めて、ぺろりと舐めとった]
そうだな、帰ろうか。
[あっさりと手放された彼女の欠片を、ハンカチに包むと鞄にしまった。ゆるっと歩きだせば、握られる手に、先程寄った眉間の皺が少し緩む。]
――……また、来よう。
[けれど己の代わりのように眉を潜めた楓馬の唇が指先に触れたなら、少しフリーズして、その後、ふっと笑って呟いた。
流石に、蘭香の前では出来ないから、掠める取る接吻けを唇に。
照れ隠しに見上げる空。
梢の間から青空が見える。
―――……止まない雨はない。
けれど、晴れ渡った空だからこそ、つんと胸を打つものがある。
空の青は、おそらく、雨(哀しみ)を知っているからきっと綺麗なのだと。
蒼穹に幾多の分岐の中で選んだ今の大切さが身にしみるから、
きゅっと取った手を握りしめ、歩きだした*]
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―― 春 ――
[4月。 ピンクの花弁がはらはら降って、生暖かな風が頬を撫でていた。 自分の手の中には生徒会が作った部活動紹介のプリントがよれていて、周囲は上級生たちの勧誘の声がざあざあとさんざめく]
……………。
[何かをかみ締めるように引き締めた表情で、そんな空間をひょいひょい潜り抜けていた。高校生男子とはとても思えないような小柄で華奢な肢体。完全にブレザーに「着られている」]
………いた。
[耳を澄ます。きょろきょろと周囲を探す。 目当ての声を遠くから聞きつけると、きゅっと眉根を寄せた]
『…ム部員募集! TRPG、マジック、ボドゲ他何でもできるよ』
[遠くから睨みつける。周囲を舞う花びらが邪魔だ。 駆け寄って、覚えてしまったいくつもの名前を呼んで、探して、殴りたい]
(498) khaldun 2011/05/29(Sun) 20時半頃
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[でも、足が動かない]
くそっ
[自分の頬を自分で殴った。気合を入れる。 胸を張って、ずかずかチラシを配る上級生に歩み寄った。 そこには誰がいただろう。数人、いるようだった。 ちょっとがに股で、思い切り睨みあげながら]
――俺、織部久生(おりべ・ひさき)。 話が、聞きたいんだけど。
(499) khaldun 2011/05/29(Sun) 20時半頃
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―― 春 ――
…………っ
[差し出されかけたチラシ。無言でひったくった。 チラシを差し出していた上級生を睨む。口の端下がった]
ハジメマシテ。 ……そう、聞いてくれるんだ? そりゃどーも。
[ぐっとチラシごと拳を握る。 暗記した名前を指折り数えるように羅列し始めた]
土橋成人、百瀬調音、珀楓馬、甲斐蛍紫 ……って、どの人?
(502) khaldun 2011/05/29(Sun) 21時半頃
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[舐められないよう顎を上げて、深呼吸]
兄貴置いて、助かった奴、誰?
[本当は、すぐにでも殴りこみにきたかった。 けれど、療養の名のもとに放り込まれていた遠くの中学。 両親を慰め、説得していたらこんなことになってしまった]
[単なる事故、未成年のプライバシー。 あの時何が起こったのか、遺族に知らされないことは多い]
(503) khaldun 2011/05/29(Sun) 21時半頃
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―― 春 ――
[よく見れば、顔立ちは兄と似ているはず。 ただ、浮かべる表情が、動作が全然違う]
――あんたが、モモセ
[探してた名前を口の中で転がした。拳にぎりしめたまま、睨む。 でも、相手がさびしそうな表情なんかを浮かべるから。 ちょっと困ったような表情に一瞬なって、盛大に舌打ち]
じゃあ、入部する。どうせ帰宅部代わりなんだろ。
――なぁ、なんであんた生き残ったのに、兄貴だけ死んでんの。
[本当は、「だけ」じゃないのだが。 とりあえず細かいことはどうでもいいらしかった]
(508) khaldun 2011/05/29(Sun) 22時頃
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―― 織部家 ――
[通夜も葬儀も、ひそやかに行われた。 発見の遅れた遺体。司法解剖に回された遺体。 両親や遺族は最初から学校側に冷たくて、何の連絡もなかった]
[だが、それもしょうがないのかもしれない。 父親も、母親も、息子の部活もクラスも担任も、友人も知らない]
[だから。寧人がしていたボランティア関係者、寧人の友人。 そういう人たちが話を聞いて手を合わせに来ても、きっと迎えられるのは、やつれた戸惑いの表情を浮かべる両親]
………………。
[それが、あの事故の「生存者」だったのならば。 真新しい仏壇の前に通されはするものの、きっとそれ以上の歓迎はない]
[その人が来たときも、変わらなかった。 ただ、一つ。仏間のふすまが細く開いて、そこから中学生くらいの少年がこわばった表情で覗いている以外は]
(513) khaldun 2011/05/29(Sun) 22時頃
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本屋 ベネットは、メモを貼った。
khaldun 2011/05/29(Sun) 22時頃
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―― 春 ――
……別に。どうせ俺も幽霊だし。
[兄みたいに言葉の出だしをちょっと貯めて、不機嫌そうに]
[残念だった、という悔やみの言葉。 紡ぐ相手の表情にも複雑な色が乗っている。 だけど、抑えきれない疳の虫。苛苛する]
なんだそれ! ………残念だった、じゃねぇよそんなの。
ごめんってなに。置いてったってなに。何だよそれ。 そんなんじゃわっかんねーよ。
[ちょっと大きな声になる。 周囲がこちらを振り向くのを感じた。ちょっとその視線にびくっとして、最後は少し声を潜めた。苛苛と足が地団太を踏む]
(514) khaldun 2011/05/29(Sun) 22時半頃
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―― 家 ――
[ふすまの隙間、そろそろと開けて中を覗く。 目の前では、中央で正座し、兄に手を合わせている人]
――――
[最上、って言った。 ぎゅ、っとふすまを強く握る。握りすぎて、ぎしっと音がした]
[手を合わせ終わるまで、一応は待つつもり]
兄貴の友達? あの事故にあったんだろ。 なあ、なんで? なん、で?
[何かが噴出してきそうになったから、肝心なところは言葉を濁す]
(520) khaldun 2011/05/29(Sun) 22時半頃
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―― 春 ――
[肩に上級生の手が置かれた。 もぞもぞする。けど、ちょっと振り払えそうになかった。 死んだ人数を訂正され、瞳を覗き込まれる]
――――っ!
[一度目を逸らした。自分が駄々をこねてることは分かってる]
………全部だよっ
全部、全部! 兄貴がどんな奴で、何考えてて、何で、死んだか。 なんで兄貴があんな、あんなぼっろぼろで、あんたたちが無傷だったのか。
[周囲の目はもう気にならない。 あまりに部活勧誘の邪魔になるなら、他の上級生によってどこか端に移動させられただろうか]
兄貴が、俺より先に死ぬなんて絶対おかしいんだ。
(522) khaldun 2011/05/29(Sun) 22時半頃
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―― 春 ――
[部室の方へと連れ出される。 話が聞けるなら否やなんてなかった。 追い出そうとする上級生をぐっと睨んで、それから移動]
―――――おかしいよ。
[話を聞いた。でも、どこかで納得がいかない。 どうして兄貴は残ったの。どうして教員が一人も残らなかったの。そんなにも危険だったなら、どうして無理矢理連れ出さなかったの。どうして、どうして、どうして]
[一つ一つ、突っ込んだ。 でも、何を聞いても納得なんか出来ないのかもしれない]
…………はっ
兄貴は。兄貴、は…………
[彼から兄の話を聞いた。ちょっとしか情報がないのを鼻で笑う。 けれど、自分は口を開こうとして――言葉が詰まった]
(530) khaldun 2011/05/29(Sun) 23時頃
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[………なぜだか目が潤む。鼻を啜った]
兄貴、は。手先が器用で、不死身で――
[手先が器用で、何だって出来るように見えて、両親からの信頼が厚くて、いつでも両親と一緒の家に住んでいた。入院していたころは、許される限り面会に来て、マッサージや手品をしてくれた。けれど、自分が退院してから後、療養を名目に家からまた追い出された後、急速に距離が離れて……]
[何も知らない、何も]
[いつの間にか大っ嫌いだと思っていた相手。自慢するように言葉を重ねながら、やがていつの間にか泣きだしていた。あの時からずっと、両親の嘆きの前では泣けないまま来ていたから]
(531) khaldun 2011/05/29(Sun) 23時頃
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[ そ ]
[ う ]
[ び ]
[ れ ]
[ ん ]
[ ご ]
[ く ]
[ お ]
[ し ]
[ ま ]
[ い ]
|
―― 家 ――
…………そうだけど。何?
[手を合わせている相手。生存者に名前があったから。 だから声音や表情は冷たくなる]
[目の前で、相手が泣いた。腹が立つ。 ――自分だって、泣けてないのに。 ぐいっとふすまを開けて、彼の目の前にたった]
何であんたが泣いてんだよ。馬鹿じゃないの。 ………何にも言わないくせに。置いてった癖に。
[いらいらした。ティッシュを箱ごと投げつける]
(534) khaldun 2011/05/29(Sun) 23時半頃
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[ *役目を終えた恋獄と娘は長く深い眠りに就く* ]
/*
日向のほうはこれで締めになります。
遅くなってごめんなさい……。
もう二度とこんな滅茶苦茶な縛りのト書きは書かないと誓います……(涙
/* 日向あああああ
って、先に蘭香に叫ばれてた。
ほんと日向だいすき! ありがとう!
そしてお疲れ様。(笑いながら、えあーなでぽふぎゅむ
/*
日向はお疲れ様でした。
癒されたようでなによりです(ほろり
と、いつものように反応は鈍い俺。
|
―― 家 ――
………………っ!!
[ゆっくり投げたのに、避けられなかったティッシュの箱。 線香をあげに、わざわざ来てくれて、兄のために泣いてくれてるのに]
[どうしよう。これじゃあ謝れない。 ぐっと唇かみ締めて、ちょっと沈黙が部屋を支配した]
………馬鹿じゃないの。俺は、これでその顔拭けって言ったんだよ。
[想うとか、生きてたとか、何なんだろう。 ほんと訳がわからない]
何も言わないなら、もういい。知るかよ。 ……俺はあんたが嫌い。
まあ、だけど、泣くくらい兄貴と仲良かったんなら、好きなだけ兄貴に謝っとけば?
(541) khaldun 2011/05/30(Mon) 00時頃
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[知らないから。兄が、誰を好きで誰を友としたのか。 わざわざ会いにくる相手は、もしかしたら大切だったのかもしれないから。さんざん意地悪して、拒絶して、そう立ち去って]
[でも、多分、拒絶しきれなんてしない。 もう少し、もう少しこの心が落ち着いたなら。 もう少しあの時の真実が分かるようになったなら。 ――いつか、ありがとうっていえる日が来るかもしれない]
[部屋から出ると、ぱたんとふすまを閉めた**]
(542) khaldun 2011/05/30(Mon) 00時頃
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本屋 ベネットは、メモを貼った。
khaldun 2011/05/30(Mon) 00時頃
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