56 いつか、どこかで――狼と弓のワルツ――
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…ん。
[空に浮かぶ満月を眺めていると、影から手をふる人物に気付いて。]
あぁ、預かった。
何処に行ってたんだお前…、あまり俺達の手を煩わせる様な事はするなよ。
[忠誠を誓った相手に対して、随分なものいいだった。]
…俺は、お前の傍にずっと控えている。
何かあれば、俺に命令すると良い。
[よろしくな、と言葉をかけられればそう返して。]
じゃあな。
[オスカーもまた、自室へと足を向けた。 **]
ヤニクさん……
今からでも……無血でとはいかないと思いますが、
なるべく双方流れる血の少ない形で、
この戦を収めることはできないのでしょうか。
[無謀な願いだということは分かっている。
それも、戦うために出陣した騎士に対してだ。
緊迫した空気に身を置いて集中を高める相手を妨げ、
叱責や怒声を浴びても全く不思議ではない]
[やがて、背後から感じる光に金が混じれば、ゆるりと光の差す方を振り返り。]
…てか、ちゃんと昨日の紙に目、通したよな?
[急に不安になってぽつりと呟きながらも剣の柄に手を掛けた。]
[狼達が咆える中、オスカーの呟きを拾えば]
…さあな。
[言いつつも、一通り目は通していて。
ただ、頭で考える事が苦手なだけだったりするのだ。]
お前こそ、んな軽装で死んでもしらねーぞ。
[彼女が甲冑ではなく、黒い服を纏う意味は理解していなかった。
嫌でも後に、理解することにはなるだろうけれど。]
そんな重苦しい甲冑着てる方が死ねるな。
[イアンの言葉にはそれだけ返して。]
何かあったら俺に言え。
ベネット、お前もだ。
[自分の前に立つ、二人の男に声をかけた。]
すみません、分かっているんです。
守るために戦う貴方にこんなことを言うのは筋違いで、
無理なんだってことは。
ですが公女さまが求めているのは平和なんです、
このまま……この戦が、
両軍どちらかが討ち果たされて終わってしまえば、
あの方のお心は二つに裂けてしまいそうなんです。
ヤニクさん、お願いします、
公女さまの味方になってあげてください。
今の彼女には支えとなる人がいませ、――
[ぷつっと、糸が切れるように声は途切れた]
ベネット…
[地を駆けてゆく狼の足は、オスカーも驚くほど素早いもので。
敵の合間を縫い、ただ、貪欲に得物を求めて、前へと。
その姿はまさに『狼』其の物。]
|
― 薄明:出陣前 ― [愛用の弓は左手に。 団長と副団長の鼓舞する声を聞く。
集まる前、ペラジーが用意してくれたであろう軽食を取った。 不味くても、と彼女は言っていた>>77が、用意されていた物は旨かった。 これから戦場への力となるべく残さず食べて、行って来る、と声を掛けただろう。]
(143) 2011/07/02(Sat) 00時頃
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姫様がどうかしたのか?
[彼が言いかけたその先を促すように聞いてみたが、士気を高める為の演説へ意識が行っていた。
きちんと聞いていれば良かったと後に後悔するかもしれないが、今はまだわからない。]
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――勝利を我等が手に!
[声を上げる。 弓を握り締め、鋭く敵が居る方へと視線を向けた。]
(145) 2011/07/02(Sat) 00時頃
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こうなってしまっては……それはできないだろうな。
[ムパムピスの願いに、小さく答える。
もっと早い段階で話し合いが纏まっていたらそれは叶ったかもしれないが、それはもう無理だろう。]
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神は我等と共にあり!
[出陣前、姿を見せた神父は砦で祈ってくれているであろう。 率いる小隊へ声を張り上げ、男も絶えず弓矢の雨を降らせる。 出来るだけ敵の進行を防ぎ、味方が押し上げる機会を得る為に。]
矢は決して後ろへは飛ばない! 引くな! 我ら緑の騎士は前にしか進まない!
[番えては放し、放しては番える。 もう何本の矢を射ったのか覚えていない。]
(157) 2011/07/02(Sat) 00時頃
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[砂と汗と血が舞う。
敵味方問わず聞こえる怒声の中、不意に聞こえてきた声に、矢を番えたまま固まった。]
なんだ?
今そんな話をしても仕方が――おい、どうした!
返事をしろ!!
[急に途切れた声に、嫌な予感が胸を過ぎった。]
[負傷の衝撃で途切れた意識が息を吹き返した。
しかし、それは再び、少しずつ細っていくだろう]
あ、あああ……
神様、どうかフィリップ君をお守りください。
私はどうなっても構いません、この子を助けてください。
……お願いします、お願いします――っ
[心の声は、苦痛と恐怖にがたがたと震えていた。]
[息が、言葉が、詰まった。
一瞬の出来事に、崩れ落ちる彼の身体に。
自分を覆う全ての『音』が、止んだ気がした――――]
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うあぁぁぁぁぁ!!!
[嫌な予感に矢を番えて僅か固まったが、それを払拭すべく声を上げ更に矢を射る。]
手を休めるな! 勝利の為に! お前たちが守るべきものの為に! 矢の雨を持って、奴らの血の雨を降らすんだ!!
[仲間を、何より己自身を鼓舞する為声を更に張り上げた。]
(170) 2011/07/02(Sat) 00時半頃
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何があった!
お前はこっちに来ていないんだろう?
なのにどうして、そんな――
[震える声に、何が起こったのか分からぬまま必死に声を掛ける。]
何があったのか分からないが、大丈夫だ。
お前が祈るのなら神は聞き届けてくれる。
お前ほど祈っている奴なんて他にいないじゃないか。
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