25 花祭 ― 夢と現の狭間で ―
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……血縁だしなぁ……
[色々複雑ではあれ親しいんじゃないか?
幻聴なのになんぞこれ?と
不思議そうに思いながら、わかったと頷いた]
血縁で、その片方が狼であったら、
どうするかのう?
[なるべく、話させるように、相槌を打つ。]
……庇う、といいたいのか?
そこが不安なら二人とも切るしかないではないか?
[きょとんと]
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[幾ら喰おうと、満ち足りぬ。 幾ら交わり抱かれても。
元より満ちる筈もない。 鏡写しの上弦下弦。 分かたれ生まれた双子月。
もしもひとりで産まれていれば、こんなに焦がれる事もなかった。
それは、あまりにも乞いしい…]
(138) 2010/08/08(Sun) 23時半頃
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[使いの言葉に目を伏せて、 その沈黙は、酷く長かった。]
…かりょう。
支度をして待って居なさい。 かならず"迎えに"戻ります。
[その言葉と、決意の色で、聡い雛は察するだろうか。
袖を通すは、白い薄衣。 髪も結わず、紅も差さず、そのままで。]
(139) 2010/08/08(Sun) 23時半頃
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ランタン職人 ヴェスパタインは、犬猿の仲などという言葉を、なんとなく思い起こしたりなどはしていない。
2010/08/08(Sun) 23時半頃
霞。
[時は大分遡る。
まだ、男がかろうじて息をしていたころの時間。
呼びかける声は、小さくもあり
けれどはっきりとした意思を以て]
やはり、力不足だったらしい。
後は、お前に任せることになるだろう。
……すまん。
…そなたがその命かけてでも取り戻したかったものが、いつか還る日が来ると良い。
[返す言葉はただ静かに。]
片割れが、未練を絶って来たそうです。
わたくしは、欲張りですから、
逝くなら色々連れて行ってしまいそう…。
…ああ、願っている。
[いつか。
其れを間近で見ることができないことだけが心残り]
片割れ?…高嶺のことか?
[そう言えばよく似ていると、そんな事を思う]
高嶺がそれを望むなら。
…お前がそれで良いと信じるなら、道を選ぶとよいと思う。
慾張り、か。
イビセラが聞いたら、何と言うだろう。
[ふと思い出して、笑った]
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[雛鳥の華奢な背を、一度そっと抱きしめて。
迦陵、花菱、愛しい私の傍の花。]
だから、良い子で待っているように。 [白い薄衣はまるで…
人目を避け、霞がごとくに向かうのは、その逢引の言伝の場所。]
(152) 2010/08/09(Mon) 00時半頃
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……ごめん、やっぱり、わかんないや
[背が消えるまで見送りはしたが
尾行する気には何かなれなくて
青年は幻聴にそう呟いた]
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…おぼろ……。 [名を呼ぶ声は、昔のものより艶と憂いとを乗せて。]
未練を絶って来たのだと、そう風の噂に聞きました。
夢は最初の一夜限り、二度目は現…獣が本性。 それでも…後悔せぬならば。
[抑え切れぬ因果な本性と、己が手で断ち切らねばならぬ切なさと。
されど、それに勝るは…分かたれた二つが漸く、あるべき姿になれる喜び。]
…抱いて、くださいませ。 [見つめて、そう恋しげに乞う。]
(158) 2010/08/09(Mon) 01時頃
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[薄衣の肌蹴た背には、鮮やかに彫られた月下美人。 白き月下美人の花は稀に、赤い果実をつけるとか。 それは、甘く甘く天上の味。
此方が白き花ならば、其方は赤きその果実。]
(161) 2010/08/09(Mon) 01時頃
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…えぇ。 分かたれて産まれたことがあやまちならば、
あるべき姿に、ひとつに戻ろう。
[求め求められ、重なる躰。 月の見えないこの夜に、白い身体がひっそりと咲く。 その肩へとそっと歯を立てて、赤は果汁が如くに散る。]
(165) 2010/08/09(Mon) 01時頃
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[あぁ、何故… 心も体もこんなにも満たされていくというのに、 胸の奥が張り裂けそうなほどに痛い……]
(167) 2010/08/09(Mon) 01時頃
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…おぼろ、…おぼろ…… [その熱き血潮を啜りながら、はらはらと溢れる涙。]
我らが最初から…一人であれば、良かったのに…
(169) 2010/08/09(Mon) 01時頃
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[白い肌が映えるのは、灯火の下だけではなく。 鮮やかな返り血に染まっていく、その姿がおそらく一番映える。
積年の渇望を満たすように、息を荒らげてその肉を貪る。 それでも別れが惜しいのか、心の臓と顔には手が出せぬ。
血の気の引きゆく片割れの肌は、己の白い肌と同じ色。]
(174) 2010/08/09(Mon) 01時半頃
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―――…おぼろ…
[見つめ合えば、きっと鏡写しの笑顔。 血濡れた唇で、血の気の失せた唇を彩る。]
(175) 2010/08/09(Mon) 01時半頃
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…あ、……あぁ、ッ!
[爆ぜる白、爆ぜる赤。 彼の灼熱をその身で受け止めながら、一思いに心の臓を握り潰した。]
(181) 2010/08/09(Mon) 01時半頃
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[最後に耳に届く言葉。]
されど、もう決めたのです…。 ひとつになった月は、共に沈むのだと…
愛しい雛鳥を迎えに行って、共にそちらへ旅立ちます。
(183) 2010/08/09(Mon) 01時半頃
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欲しいものは、全て手に入れたから。
わたくしに、未練などもうありませぬ…。
(185) 2010/08/09(Mon) 01時半頃
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