164 天つ星舞え緋を纏い
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これは……やりとうなかったがのぅ。しかしまぁ、儂とて死ぬときは畳の上で逝きたいものでなぁ。
[やれやれ、という風に頭を振うと。
座った姿勢のまま鋭く開かれた眼光が少女をとらえる]
お主も儂も戦向きではないようじゃ……攻められて平静を失うた相手の反撃ほど怖いものはない、忘れておるようではのう。
[―――ミシミシ、嫌な音が巨木の根元から響く*]
うるさい うるさい うるさい!
あなたなんかきらい じゃまする人はきらい
なんで なんでじゃまするの!!!
[地に座る沼太郎を憎憎しげに睨み、思い通りにいかぬ憤りを叫ぶ。
首へと伸ばした影が老人に届いていたことにも、感情のまま振り回した影が老人の足を薙いだことにも気付かない。
気付けるはずもない。
癇癪に身を任せたままの子供には。]
[違う。目を背けてる訳じゃない。
反論の言葉は頭に浮かんだが、それを口にすることは叶わなかった]
あっ……
[手を伸べた姿勢のまま、膝から地面に倒れ込む。
抉られた左の脇腹から、脈打つように血が飛沫いていた]
(……駄目だな、あたし)
[片腕を負傷しているから、傷を押さえては起き上がるのもままならない]
(どっちにしろ、負けたら相手の言った通りになるんじゃないか)
[どうにか上半身だけでも起こした途端、内に溜まっていたものが口から溢れて、ごぽりと泡立つ音を立てた]
[視界が暗くなっていき、そして、がくりと。
急に体の重さを感じなくなったのは、力が抜けたせいだと思った。
だが]
あ、……れ。
[浮かんでいる。
どうやら体ではなく、風の力が自身の体を支えているようだった。
背側を回り両腕にふわりとかかるそれは、日向の目には、お伽話に聞く羽衣のように見えた]
ごめん、雪さん。
……あたし、随分と諦めが悪いみたいだ。
[まるで漂うような、重さを感じさせぬ動きで体を起こし、足を柔らかく地に着ける。
意識を保てるのはほんの数瞬に過ぎないだろうけど。
その最後の機のために、纏う風の力をゆっくりと高めていく*]
[だって、子供の心はずっと、封じられたその時のまま、止まっているから。
知識を得ることも、成長もできぬまま、眠っていたのだから。]
いままでずっと ゆうがおが
おかあさまを ひとりじめしてきたんだから
こんどはわたしが おかあさまを
ひとりじめ する ばん なんだから
じゃま しないで !
[己の願いが既に叶わぬことも、胸の内に抑えこんだ心が痛み抱いているとも知らず。
大樹の根から響く音にも気付かぬまま、己の足元にある影を広げ、老人の立つ地へと伸ばした*]
|
― 墓地 ―
[現れた若者>>123からは、確かに己の内にあるのと同じ闇の気配がする]
お前は...
[誰だ、と、問う前に、華月斎の様子>>124と、若者の表情>>125から、その答えは知れた]
(126) 2014/02/18(Tue) 23時半頃
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[ありったけの力を込めて刀振るえば、手に伝わる感触は確かなもの。
けども、その代償に走る痛みに一瞬意識を手放し。右手の力も抜け。
からんと、刀は地面に転がった。]
……っ、はァ……。
ごほっ……。
[目が霞むのは、 止める術を知りながらもあえて流した血のせい。
刀を振るうどころか、動くことだってままならない。
なら、やれるのは一つだけ、うまく行くかはわからないけども。
地に伏せたまま、溢れていった血を思いながら、日向の声に耳を澄ました*。]
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― 墓地 ―
[じゃらん、じゃらん、と、振りもせぬのに遊環が、激しく鳴る。運命に従い、殺し合え、と、命じるように]
やれやれ、これも縁か。
[ぼそり呟いた坊主は、錫杖を握り直し]
(127) 2014/02/18(Tue) 23時半頃
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うぅむ。いろいろめちゃくちゃじゃのう……。”朝顔”…この振る舞い、何か思い出しそうなのじゃが……。
[邪魔するな、邪魔するなと相変わらず叫ぶ少女に、やはり頭を掻くばかりであったが。
おかあさま、という単語にピクリと眉が動く]
まさか……葬儀で見た……?
しかし今になって何故…
[思い当たる節にはたと顔を起こすも、再び伸ばされる影に舌を打ち、少女と自分の間の地面から影目掛けて矢鱈目鱈に根を突き出させて応じる。
木からまた、ミシリという音が不気味に響く]
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― 墓地 ―
吽!
[一喝すると同時に、鳴り響く遊環の音は鎮まり返る]
弔いの邪魔はするな。
[誰に向かっての言葉なのか、そう言い放って、静かにしゃれこうべの置かれた墓所へと向き直り、低く経文を詠み始めた]
(128) 2014/02/18(Tue) 23時半頃
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説法師 法泉は、メモを貼った。
2014/02/18(Tue) 23時半頃
ほれ、
死への恐怖はお在りかの?
[一際大きなみしりという音と共に、
雷門邸まえに聳えていた大樹が傾き、そのまま倒れていく
少女目掛けて]
[音を立て転がる雪客の刀。
得物を手放し、雪客自身も地に伏せているように見えるが、まだ終わりでないことは彼女の纏う『気配』から伝わっていた。
極限の状態にあるせいか、ひどく研ぎ澄まされた感覚で彼女の姿を捉えながら、柔らかく曲げた指で風の帯に触れる。
す、と軽く引く動きをすれば、それは雪客の周囲を廻る新たな風の帯となる]
――――舞え
[雪客の手足より、新たに伸びた風の帯を指に絡め、自らもゆるりと身を回す。
回転する風は、雪客を内に閉じ込める結界となり。
帯を引く動きは、旋風の内にて手足を切り裂く風の刃となる*]
じゃましないで って
いってるのに!
[沼太郎の変化に気付くことなく騒ぐ幼子は、母が死んだことを知らない。
潜む闇を危ぶんだ陰陽師によって封じられてしまった後のことだから。
そうして身の内、闇と共に眠ったことによってより馴染んでしまったとは皮肉だが、それは子供の知らぬこと。
変則に突き出る根に影を消されて、増す苛立ちがより冷静さを、奪う。]
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