64 色取月の神隠し
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[そのまま手は、自分を何かに連れて行くように引っ張っていく。]
この感じ。 さっきと同じような―。
[何故か引っ張る手の先から、慣れた空気が流れてきた。]
あ、わ、あ、ちょっと、まっ。
[咄嗟過ぎて、反応できず。明之進に何かを言いたい、言わないといけない気持ちが、しかし時間が残せず。
そのまま、また何かを抜けていく―。]
(23) 2011/09/19(Mon) 23時頃
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そう、今は未だ、な――
[芙蓉の含み笑いに答え]
兎も角、綺麗な花はいくらあっても良いもんさ。
第一、辰サンにだけ良い思いさせるってのも癪だろ?
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― 菊屋屋台 ―
え?
[周囲をきょろきょろ向いた。 引っ張られていたためか、尻餅をついてつきながら。
知り行く顔、知らぬ顔、その中で、立ち上がる。 漏れるは現状を知らず。]
どういうこと―?
[>>16見たことの無い女性に問われるには、ああはいそうですと、ほうけながら答え。]
(24) 2011/09/19(Mon) 23時頃
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[指の先、増えた影。 それが一平太だと知るや、安堵したような困惑したような複雑な表情が浮かぶ。]
“おかえり 一平ちゃん”
[狭間で友に届いた声も、此処では音を奏でない。 ゆっくりと唇を動かして一平太へと微笑みかけ、 傍らのたまこへと視線を向けた。促すように。]
(25) 2011/09/19(Mon) 23時頃
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[しん、と空気が鎮まったような気がした すっかり暗くなり、きっともう祭りの2日目は終わる頃 祭囃子の音も、人々の喧騒も、遠く過ぎた後で 空にはぽかりと上るお月様
けれど、冷たい月の光ではなく、お日様のような光が 傍にいる少女のその名とおりに、暖かくたまこを包んだように感じた]
…あ。
[目をそっと、開けばそこに]
[一平太が、いた]
(26) 2011/09/19(Mon) 23時頃
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男ってのは、仕方ないねえ。
そもそも、あやかしになっても今のまんまの姿だとは、限らないよ?
角が生えたり、毛むくじゃらになるなんてザラにある話さ。
[くすくすと笑い]
……毛玉になったのも、いるみたいだし。
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『にしても、ほんと、あきのしんは何て言ってるのかねえ。 友達ができたって、あんなに喜んでたのにさ』
[何がなんだかわからない様子の一平太を眺めつつ、鵺に囁く]
『慰めてくれる筈の兄貴分は、いいヒトができて夢中だろうし』
(27) 2011/09/19(Mon) 23時頃
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――ま、辰次なら、弟分を放っておいたりはしないだろうけどね。
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[問いに返ったことば。>>13]
“あやかし。”
[真面目な表情とその声色は、不思議と静かに見えた。 声なき声でいちど、にどと繰り返す。 ふと芙蓉の声に振り返り、彼女を見詰めて瞳を細めた。]
“軽業とも手妻とも違う業だけど、 ――私は、ただの人間なんだよ。 力を持っているのはこっち。 御婆ちゃんから御爺ちゃんに、 それから最後に私の手に渡ってきたこの櫛。”
[熱の篭った声に眉を下げて微かに笑む。 軽くあたまを下げたのは、賛辞への礼。]
(28) 2011/09/19(Mon) 23時頃
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>>25 [傍にいるであろう日向を振り返り 静かな落ち着いた様子に、伸ばしかけた手をはたと止めて 薄茶の瞳が促すように微笑むのに、眉の下がったまるい笑顔を向けた 日向の手を取って一歩、一平太のほうへ歩みかけ]
日向ちゃん、が。 呼んでくれたの。 声が、聞こえた、でしょ。
[日向の声、は、隠世と現世を繋ぐ声 その狭間で届くように 現世での声を失ったは、その力のせいなのだろうか、と たまこは声を詰まらせながら、一平太へと呼びかける]
(29) 2011/09/19(Mon) 23時頃
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[強い想念が宿った古き品が九十九を生むと聞く。 しかし、この櫛はたまこの簪のように、あやかしをこの世に顕現させはしなかった]
“だけど、”
[切った言葉の続きを中々文字に出来ず、 幾度となくそうしたように、土の上で惑う枝先。]
“……ん そうだね。 こんな力を使役できるということは、 藤之助さんの言うとおり、なのかも知れない”
(30) 2011/09/19(Mon) 23時頃
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……お前さん、嫌なことを言うねェ。
けど日向は……あれは、どうだろう。
見た感じ、案外、芯が強そうだぜ。
[だから、今の可憐な姿のままでいられるだろ、と言外に]
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[>>25日向さんがいる。 そして促された視線の先に>>26たまこ姉さんがいる。]
戻って―来たんだね。 僕は。
[目の前で消えるのを見たであろう彼女がそこにいる。そして日向がそこにいる。
しかし表情は、心情はとても複雑で。]
そうだ、僕は戻ってきたんだ。 神隠しから戻ってきたんだ。
[同じ言葉をもう一度繰り返す。 それは、即ち同時に。]
明之進…くん。
(31) 2011/09/19(Mon) 23時頃
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>>13 [ぞくり、と背筋を冷たいものが走る たまこは、喜び勇んですっかり頭から消えていた 藤之助の問いかけを思い出す]
…いやだ。 藤之助さん、なに、言ってるの。
[半分笑ったまま、けれど少し震える声で、ふる、と首を振った]
(32) 2011/09/19(Mon) 23時半頃
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案外も何も、ありゃあ、肝が据わってるよ。
けっこうな女丈夫になるかも知れないねえ。
[男の淡い夢など知らぬ]
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ねえ、いっぺいた。
[明之進の名を聞き取れば、少年へと呼びかける>>31]
ひなたが言ってたよ。 あんたが戻りたい、行きたくないって思ってるんなら、連れ戻せるって。
あんたが、こうして戻ってきたってことは、 無理に連れて行かれてたのかい? あきのしんと行くのは、嫌だったのかい?
(33) 2011/09/19(Mon) 23時半頃
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>>29あれは日向さんだったんだ。 聞いたことの無い、すごく綺麗な声だった。
手を、もたれてそのまま…戻ってきた。 気付いたら此処に。
[言葉はゆっくりと語られている。]
(34) 2011/09/19(Mon) 23時半頃
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>>16
[パン、と手を叩く音と笑い声に、びくりとして芙蓉のほうを向く 怪訝な顔で、その様子をじっと見つめた]
芙蓉さん…?
[近づきかけた一平太へ背を向け立ち、 手を引こうとした日向をそっと引き寄せようと たまこの腕が宙を掻く]
(35) 2011/09/19(Mon) 23時半頃
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何って……? 己は事実を述べただけだよ。
[>>32ふるり首を振り、怯えを隠せない様子のたまこに にたりと笑い]
望むと望まないと日向ちゃんは、もう人の子じゃいられない。 それはおたまちゃんにも、分かっているんじゃないのかなぁ。
……いや、芙蓉の言う通り おたまちゃんや、一平太くんだって、もう――
[>>22芙蓉の視線を受けて、人の子たちの裡を毒を滴らせる]
(36) 2011/09/19(Mon) 23時半頃
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[それは、力を手にした三人に向けた芙蓉の言葉への返答にもなろうか。>>22>>30]
“それでも……特殊なのかな。 ………こういう力も、あやかしも、自分がそれに近いといわれても、 そりゃ 驚いたし、不思議だとは思うけど、 やっぱり身近すぎて 恐いとか変だとか思えないの。”
“人間とあやかしの境界って、なんだろうね”
[たまこの反応は自身とは違う。>>32 其処にあるのは明確な怯えで、恐らくはそれが自然なのだろうとも、思う。静かに文字を土で覆った。]
(37) 2011/09/19(Mon) 23時半頃
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たまこは、一平太を振り返り、もう一度芙蓉を見た。
2011/09/19(Mon) 23時半頃
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[たまこに手を引かれ、一平太の方へと一歩、踏み出す。>>29 気掛かりであった問いは芙蓉の口から問われ、微かに緊張した面持ちで彼の表情を窺う>>33]
[道を往く彼の声音に、はっきりとした拒絶の色は無く。 判断しあぐねて意見を求めに走ったくらいなのだから、 現世に戻ること、それが彼を連れ去ったあやかしは元より、一平太の本意でないことも有り得ると分かっていた。
それでも、たまこの強い意志に動かされ、後押しするように隠世への道を覗いたのは自分だ。]
(38) 2011/09/19(Mon) 23時半頃
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[あやかし、と呼ばれた娘は、薬売りの賛辞を受けて、小さく笑んだ>>28 何やら文字を綴ってから、櫛を捧げ持つようにして、こちらへ頭を下げる仕草。
それは落ち着いたものだったけれど、やはり戸惑いを見せ>>30
怯えるたまこを見つめてからは、また、静かに手を動かした>>37 そんな日向を評して、囁きを送る]
『あんたの言う通りだね、藤。 ――強くて、面白い子だ』
(39) 2011/09/20(Tue) 00時頃
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あなたは…? 何で明之進君を知ってるの…?
[>>33女性の問いは尤もと言える。しかし、自分は彼女を知らない。傍に居るようである男も。]
僕は―アヤカシに会うことを望んでいなかったわけじゃない。寧ろ、望んでいたんだと思う。
[しかし、独白は行って。きっとアヤカシを知っている女性もまた、アヤカシなのだろう、そう思った。]
(40) 2011/09/20(Tue) 00時頃
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何で、って。
[一平太の問いに、怪訝な表情になったが>>40]
知り合いの辰次ってのが、たまたまこの村に来ててさ。 あきのしんとは、そいつの伝手で知り合ったのさ。
――なんて、ねえ。 今言ったのは嘘じゃ無いけど、あきのしんから、聞いてないのかい?
あたしは、あきのしんがあんたを気に入ってたのを、知ってるよ。 仲良しの友達ができたって、一緒に里へ帰れるって、喜んでたのを、ね。
[そう言って、穏やかな笑みを向けた]
(41) 2011/09/20(Tue) 00時頃
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奪い返す、なんて。そんな恐い言い方… …一平太ちゃんは、明ちゃんのものでも、わたしのものでも、ないし。
なんで連れてかなくちゃいけないの?
わたしだって、明ちゃん…友達ができたって思ってたよ? 悪いあやかしだなんて、今も思ってないよ。 だけど、勝手なお願いって、わかってても、 わたし一平太ちゃんがいなくなるの、いやだったんだもの。
(42) 2011/09/20(Tue) 00時頃
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もう誰も、いなくならないで、ほしいもん…
[だんだん、声が震えるのを止めることはできなかった 日向とは反対に取り乱す様子はあやかしたちにどう映るのか]
[それと知らぬたまこは、じり、と後ずさった 芙蓉や藤之助が、あやかしを畏怖する人間であれば 日向を、それだけでなく、自分も、一平太も 追い詰められ、危害を加えようとするのかもしれないと]
(43) 2011/09/20(Tue) 00時頃
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でも、そうかい。 じゃあ、明之進と行くのは、嫌だったわけじゃないんだね。
[一平太の答えを聞いて、頷く。>>40 それは日向やたまこを責める響きではなく]
……安心したよ。
(44) 2011/09/20(Tue) 00時頃
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[日向をちら、と見れば、落ち着いた様子で地面に綴る返答があった]
日向ちゃん、恐くないの… この人たち、わたしたちを捕まえようとしてるん だ よ。
[と、言いかけて、えっ、と顔を上げる 一平太の問いに応える、芙蓉の言葉に、まるい瞳をもっと大きく見開いた]
里…? 知ってる…?
[言葉の意味を、飲み込むまで、少し時間がかかった]
(45) 2011/09/20(Tue) 00時頃
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そう怖がらないどくれよ、たまこ。
[不安げな様子に、苦い笑みを向け]
あたしはね、あんたやひなたのことが好きなのさ。 ――本当だよ。
[簪に潜む九十九へも、それは聞こえているだろう]
「よそ者」のあたしらにも、親切にしてくれた。 団子をくれてさ、雉を焼いてくれてさ。 ああ、店に来てくれて、喋ったのは、楽しかったねえ。
[語る眼差しは、柔らかく]
(46) 2011/09/20(Tue) 00時頃
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明之進君と友達になれて、それでアヤカシだって聞いて本当に嬉しかった。アヤカシと行けるというのは、嬉しかった。
でも、やっぱり、行く時は。 たまこ姉ちゃん―心配だった。 残されていく人が、心配になったんだ。
[連れて行くと言った瞬間。短い時間の中で喜びと不安が重なって。ある種の覚悟を決めるまでずっと戻りたいと行きたい、入り混じった思いが、流れ出ていた。]
(47) 2011/09/20(Tue) 00時頃
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