158 雪の夜に
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取り敢えず、その格好どうにかした方が良くないか。
[吐息を震わすセレストにそう告げる。>>21 と言っても、航海に暮らす船の女だ、宿に戻っても、 コートの替えなどがそうそうある訳でもないのだろう。
しばし黙考。]
……ほれ。
[赤い外套を脱ぐとセレストの頭に被せた。 当の旅人は砂金色の髪が跳ねるのを手でくしゃりと弄る]
(22) 2013/12/26(Thu) 02時半頃
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ホレーショーの事は、雑貨屋の爺さんらの所にも、 知らせた方が良いかも知れないな。
俺、ひとっ走りして来るから、嬢ちゃんの事頼めるか。
[そうして、診療所の外へ足を向ける**]
(23) 2013/12/26(Thu) 02時半頃
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[ハナの事はホレーショーにとっても、そう簡単には
放っておける事でもなかったに違いない。
やがて陽が落ち、人を探すにも難しくなった暗闇で、
狼は人知れず牙を剥いた。**]
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―――…ん、
[>>22ヤニクの言葉にも生返事しか返さない。 ぼうっと廊下の先を見つめていたら、視界が赤く染まる。 外套の重みで俯くと出ていく前のヤニクに弱弱しい声で呟いた。]
…なあ。 ―――…ったら、
(24) 2013/12/26(Thu) 03時頃
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…ホレ…死んじまったら…どうしよう、
[面会謝絶で会う事を許されない。 女にとっては初めてのことではなかった。 似たようなことが、前にもあった。]
なんであいつが、 …やだよぅ…。
[ぐす、と外套の奥からくぐもった鼻の音が鳴る。 >>23ヤニクの言葉には外套を被ったまま頷いて、 ぐすぐすと鳴る鼻を納めようと大きく息を吐いた。**]
(25) 2013/12/26(Thu) 03時頃
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[ヒューの髪を撫でる手が離れていく。 何となく名残惜しく、顔を俯けたまま、小さく息をつく。 立ち上がって、黒服の婦人の艶めく黒髪が、海風にたなびくのを目で追う。]
俺こそ、聞かせなくていいような話をしました。
[首を僅かに傾げるようにして、はにかみ笑いと、苦笑いを混ぜたような表情を浮かべる。 婦人が「難しくはない」と言ったのを聞いて、その苦味はきえた。]
――よかった。
それなら、きっと、お願いします。
(26) 2013/12/26(Thu) 03時頃
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[吐息を零し、「それよりも」と紅い唇は、ヒューに次の返答を促した。]
……はい。
[俯くように、静かに頷いた。短い肯定。 人狼に対し、心当たりがあると言った人間への、欲目は、無論あったろう。それだけでも無かっただろうが。 黒服の婦人の細い手が求めるなら、いつでも片手を差し出す準備がある。**]
(27) 2013/12/26(Thu) 03時頃
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負傷兵 ヒューは、メモを貼った。
2013/12/26(Thu) 03時頃
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― 朝 ―
[翌朝。ヒューは、血の気の引くような噂を耳にした。 眠っていないせいか、肌は土気色をして、走る足が時折縺れた。 息を切らし、足元を雪で真っ白にして、診療所に駆け込んでいく。
今朝、ここへ運ばれてきたのは、二名。 片方は朝凪亭の従業員。 もう片方はホレーショーだった。]
(28) 2013/12/26(Thu) 15時頃
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― 診療所 ―
[診療所に入ってすぐ、子供の、けたたましい悲鳴にも近い泣き声が聞こえてきた。 この町の者で、顔と名前が一致している人間はあまり多くはないが、朝凪亭のハナとその母親は、数に含まれる。]
――、……
[息も整わないまま、子供の声が聞こえる方へ顔を向けた。 すぐさま、また別の方を向く。探すまでもなく、ホレーショーの入った病室がわかって、駆け寄った。]
……、……
[ヒューは、その場に膝をついた。 走り疲れたというよりは、深く落胆していた。]
(29) 2013/12/26(Thu) 15時頃
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[病室の前には、赤い外套を被り、鼻を鳴らしているセレストの姿があるのに、気付いていた。 立ち入る事の許されない扉を呆然と見上げたまま、雫を垂らすみたいに、ぽつりと呟いた。 草臥れた声での、問いかけだった。]
何でだよ。
[それから、消沈して俯いた。]
…… ごめんな……。
[力なく緩く握った手を膝の上にたらしたまま、立ち上がることも、身動ぎひとつすることも止めて、ハナの泣き声を聞いていた。 ヒューは「ごめん」と、うわ言のように、何度か謝っていた。]
(30) 2013/12/26(Thu) 16時頃
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負傷兵 ヒューは、メモを貼った。
2013/12/26(Thu) 16時頃
店番 ソフィアは、メモを貼った。
2013/12/26(Thu) 21時半頃
お使い ハナは、メモを貼った。
2013/12/26(Thu) 22時頃
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― 回想:雑貨屋 ―
大丈夫、熱なんて無いから。
[額に大きな彼の手が当てられると、視界は半ば隠れてしまう。 そんなに大袈裟に心配しなくても、と小さく笑ったが、彼の気遣いは純粋に嬉しかった。]
おじいちゃん何処まで行ったのかな。
[祖父は行き先を告げていかなかった。 追いかけて探そうかとも思ったが、毎日頻回に店を閉めるわけにもいかず、ソフィアは店に残り店番をする事にした。]
(31) 2013/12/26(Thu) 22時頃
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―診療所― [ぐすりと鼻を鳴らす。このままでは借りた外套まで汚してしまう、そう思ってコートを脱いだ。子供の泣き声はまだ聞こえてくる。 近くで、聞き馴染みのある声が聞こえた。>>30]
…どうしてあんたが謝るんだ。
[鼻を鳴らしながらその声に問いかける。 扉の向こう側は見えない世界だ。ホレーショーがどうなってしまっているのかこちらから知ることはできない。]
……どうしてあんたが謝るんだ。
[もう一度、問いではなく呟いて。 使いものにならなくなってしまったコートは畳まず返り血が目立たないように丸めておいた。]
(32) 2013/12/26(Thu) 22時頃
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― 診療所 ―
[常の様相とは似つかないセレストの声。>>25 明朗で情に厚いがゆえに、他者の傷に深く沈み込む、 旅人も、そういう者に心当たりがない訳ではなかった。]
…………死なないって思ってろ。
(33) 2013/12/26(Thu) 22時半頃
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― 診療所 ―
[延々と続くかと思われた子どもの泣き声も、体力とともにいつかは失われてしまうものです。 少女は涙と鼻水でかおをぐしゃぐしゃにして、時折嗚咽を漏らしながら滲んだ母親を見るだけでした。
やがては母親も、町の墓地に適当に葬られることとなるのでしょう。 やがて骨になれば無縁仏ともさして変わらぬ扱いで、個別に名を刻まれることもないのです。]
(34) 2013/12/26(Thu) 22時半頃
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[実際、この人狼にとっては、
普通の狩りでもなく最低限の摂取でもない、
生きている範囲の最大限、という加減は、
初めての事であった。]
[とは言え、人間の生死の境はよくよく把握している。
壮健な船乗り、余程の不幸が重ならなければ
命を落とす事はない。]
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[――きっと一命を取り留めたとしても、 次の船出には間に合うまいが。
束の間の瞑目。]
(35) 2013/12/26(Thu) 22時半頃
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ヤニクは、ヒューとはほとんど入れ違いで、診療所を出る。
2013/12/26(Thu) 22時半頃
(――陸の上でも、何があるか解ったもんじゃないからな。)
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[>>34子供の泣き声が止んだことに気がつくと 女はハナの母親が眠る病室へと顔を覗かせる。]
…ハナ、 一度宿に戻ろうか。
[ぐすり、大分落ちついた鼻を啜らせて]
あんた、夕食は食べたかい? 朝も食べれてないだろ…、なんか食わなきゃ。 あともっと温かい格好にして…、
そんで、後でまた来ようか。 …ねえ?
[小さな少女の頭に手を乗せる。]
(36) 2013/12/26(Thu) 22時半頃
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― →雑貨屋へ ―
寒い!
[外套を置いてきたので尚更だった。 連日の雪は、人通りのある所は泥混じりのみぞれに、 日陰や屋根は、より白く積もって行っている。]
[昨晩、結局店主が戻らなかったのなら、 今朝の店は、開いているかどうかも定かでないが。 CLOSEであっても今は構わず、店の戸を叩いた。]
おーいっ。ちょっと開けてくれるか!?
[気温的な意味でも。]
(37) 2013/12/26(Thu) 22時半頃
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[セレストの問いかけに、顔をあげる。>>32 振り返り、沈黙した。]
……。
[二度目の呟きで、肩を落として、床を見る。]
…… しちゃならない失敗だった。
[低く篭った声で、悔いた。]
(38) 2013/12/26(Thu) 23時頃
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[若干の涙声を含ませたセレストの言葉を、少女は黙って聞いていました。 頭に手を載せられたなら、目元に溜まった涙がまたひとつ、ぽろりとこぼれ落ちていきました。]
[少女はとくに駄々をこねることなく、セレストの言葉に従うようでした。 のろのろとした足取りで病室を出ると――そこにはあの男が佇んでいたのです。>>30]
!
[目を瞠って、少女はぴたりと足を止めます。 まじまじと視線をあてて、そしてセレストの影に隠れるように一歩、二歩と体を寄せます。 そしてまごまごと、なにか言い淀むかのごとく口元を動かしました。]
(39) 2013/12/26(Thu) 23時頃
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……じんろうにやられたの?
[男は、目の前の男はどう反応したでしょう。 やがて少女はなにかの確信を含んだ声で繰り返しました。]
人狼にやられたんだ。
(40) 2013/12/26(Thu) 23時頃
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[子供の泣き声が止んだ事に気付いたのは、セレストのほうが先だった。 ホレーショーの病室から離れていく彼女の足音を背中ごしに聞く事で、ヒューはそれに気付いた。 漸く、ゆらりと立ち上がる。]
……。
[セレストは、ハナを連れて病室を出たらしい。 静かな足音とともに、二人が廊下の向こうに現れた。]
――……、
[ハナは目を瞠る。 ヒューは、じっとその目を見ていた。]
(41) 2013/12/26(Thu) 23時頃
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[遅い朝、乱れた髪をかきあげて、 上等な宿の部屋から町並みを見る。
――また、この町で人狼が捕まるのを、見たくないの。
酒精は少しだけ心を無防備したのか、 そんな言葉を青年に零したような気がする。
重い空は、晴れることのない心持に似ている。 女は呆然としながら、使用人の報告を耳にしていた]
(42) 2013/12/26(Thu) 23時頃
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…………。
[もう、今更、いいか。 そう思って、ヒューは口を開いた。]
そうだよ。
[ハナの問いかけを肯定した。 投げやりにも思える、端的な返答だった。 嘘をつくのは、もうやめだ。]
(43) 2013/12/26(Thu) 23時頃
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[その夜、祖父は戻らなかった。 ソフィアは、一睡もする事なく台所にあるダイニングテーブルに着きながら祖父を待っていた。 夜中、何度も外に出て探しに行こうかと腰を浮かせたが、人狼に出くわす恐怖を思うとその場から動けなかった。]
(44) 2013/12/26(Thu) 23時頃
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[失敗、人狼、ハナとヒューのやり取りを聞く。 また難しい顔になった。ここには自警団がいる。]
…宿に帰ろうか。 ヒュー、あんたも。
[2人へと、そう促す。]
(45) 2013/12/26(Thu) 23時頃
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……どうして、
[二人の犠牲者が出たということ、 そして、容疑者として捕まった者のこと。
身近に思う者に危機が迫って、 初めてそれが危険だと認識する。 それは人間らしい思考だと、自嘲して、 けれどそれでは手遅れなのだ]
――……、
[外へ出る身支度を、整える]
(46) 2013/12/26(Thu) 23時半頃
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やっ、、、ぱり――
[ヒューの返答に、彼女はかすれた声で相槌を打ちました。 少女は寒さではなく震えていて、周りの目など気にならないようでした。 まるで、認めがたいことをきいた、ききたくないことを聞いたと言わんばかりです。]
やっぱり、そうだったんだ――!
だって、 だって、知ってたんだ。 だって、あれは――!
[セレストの促しが入ったのは、そのときでした。 少女ははっとして口元を抑え、ふたりの顔を見渡します。 そして彼女はくらいめをして、視線を廊下に移すのでした。]
(47) 2013/12/26(Thu) 23時半頃
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