231 獣ノ國 - under the ground -
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オイッ!オイッ!クラリッサ…ッ!ごめンッて、わかってンだったら…!
[謝罪の意味を悟ると、駆け出して。もう、手遅れかもしれない。だが、だからと言って、この脚を止めるわけにはいかない。…本当は、もっと早くにかけ出すべきだった。この、棘に隠した臆病さが、今は、ただ恨めしい]
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―― 回想 ・ ロッカー前 ――
………さあ。 私には到底、
[ 男の瞳に「 惑い 」>>65が映った 。 実の感覚を知らない、惑いである 。 「 好き ? 」誰が。 何を? ……誰を?
嗚呼、そんなのは、彼女の行動を見れば解る。 彼女の表情を見れば―――解ってしまう。 男は彼女の質問に、はぐらかした答えを送った。 ……否本当に知らなかった。教えるほどには。 青年期、幾つか恋を囁かれることはあれど 。……男は滑稽にも、崇拝を知り恋慕を知らない 。]
怪我? 、 ……貴女は私を傷付けたくて傷付けてるわけでは、無いのでしょう。
[ ―――それでも彼女に優しさを分けてしまうのは、はたして。 男の中でぐるりと違和感が渦巻いた。 元来の男と掛け離れて、気持ち悪い気分だった。 違和感はぐるぐる、胸中を踊っている。
男の代わりに” 針 ”に刺さった彼女の手のひらには、紅が滲んでしまっただろうか。 ……例え滲まずとも、その手のひらに触れ離したことをしただろうけれど 。 ]*
(97) 2015/07/15(Wed) 21時頃
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[ ―――擦られる紅を視界の隅に押さえながら、男は彼女の声を聞いた。 秘密棟へは帰らない。 ……これは困った。して、どうしようかと考えあぐねる。 女医に部屋を移すことでも、提案しようか。と。 ]
医務室。 ……女医と、―――否
[ 彼女にしては珍しく――然程珍しくもないか? 女医への敵意も見せずに、…然しそれにしては怪我の様子を伺う素振りも見えないが――” 穏やか ”に見える風体で紡ぐのには、小首を傾げた。 首裏を擽る髪が、鬱陶しい。 前を揺らめく髪が、鬱陶しい。 …男は髪をはたと掃いた。 ]
私が行って邪魔をするのも ――
[ 悪いでしょう、と続けようとした刹那。飛び出した姿>>81に呆気に取られつつ、何かあったのだろうかと目をしぱしぱと瞬かせた。 名残風と、自身のそれとは違い、明るく煌く彼女の髪を見つめながら。
―――さあ、追って良いものか?
男はゆるりと踵を返した 。 胸に残る、違和感が気持ちが悪い。 ……男はそのまま、秘密棟へと。 ]**
(98) 2015/07/15(Wed) 21時頃
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―― → 秘密棟 ――
………目が痛いものですねえ…
[ 久方振りに来た其処の前。 咲き乱れる造花を男は冷えたそれで見下した 。 何を以ってそうも咲くのか。 何故どうして、咲けるのか。 本来持つべき根も無く―――そこまで本物に似て、咲ける意味は。
ただ「 造花 」と一蹴されたなら意味も無い戯言を、ただひたすら。 考えては不機嫌気に舌を打ち、庭へと靴先を踏み入れた 。――刹那に。 ]
………、?
[ 広い庭。その中でも一際目を引く桜の木のした。……――誰か>>86が居るではないか。 男は興味半分に、足を寄せた。寝入りでもしていれば脅かしてやろうとさえ ―――思えば ]
……、 …月見さん?
[ ―――― その影は、投げた声になにか返すことでも、しただろうか ]**
(99) 2015/07/15(Wed) 21時頃
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――――……お願い。生きて。
[そう、祈ることしか、もうできやしない]
[ 悲痛な針鼠の声も、別れを告げるような猫の声も
懸命に引き止める梟の声も 聞こえてはいるのに。
僕は諦めることに慣れすぎていて、焦燥も自責すらも無く
彼女との約束がなければ
自分の身ですら執着しない関心の無さ。
正しくなかろうと 猫がそれで良いのなら
僕は正す心算は毛頭無いし、嘆く心も持ち合わせない。
自分のことのように怒り 嘆くふたりが
僕にはとても眩しかった。
( あんなふうに 誰かに執着できた頃は )
兄といっしょに 喪ってしまったみたいで。
ただ、ひとつ思った事といえば
悲しむ梟は見たくないという 独善的な思考。
( ああ、やっぱり。……僕は、卑怯だ。) ]
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―― → 庭 ――
……眠っていらしたのですか。
[ ぱちりぱちりと、瞬かれたそこ。 髪と同じのまつげの色が、揺れた。
男はそのひどく眠そうな顔を前して――「 何か夢でも 」、と声を投げる 。 特に意味はない、ただ眠りこけた人を前にした一種の洒落のつもりだった。 ……本音を言えば、声を掛けた頃に体を震わせた彼に、疑問を持ったのみであるが。 食堂で見掛けた笑みこそ眠さに消えど、柔らかさはまるでそのまま。
――― 「 あなたでもサボることはあるのですねえ、 」 風も無いのに桜の揺れた心地がすれば、 男はひたと視線を桃色に移す。 ]
(127) 2015/07/15(Wed) 23時半頃
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特には、 ……何も無いのですが。 嗚呼―――私は「 困惑 」しているのでしょうか。
[ 以前マイク越しに向けられたこえを思いつつ、男は首を傾げた。 前髪に隠された瞳は造花を映しながら ……ぱちりと、瞼に隠される。
畜生なら鮫の肌に焦がれることも 怒涛の表情の” 裏 ”を見たいと焦がれることも、なかったのだろうか?――― 男には、解らない。 ただ” ひと ”と思って接して居た。 しかし今日になって” まどい ”が生まれた。 そう、 それだけのこと。 ]
私たちは、随分と。 ……ずるい。
[ ――――そうした時だったか。 マイク越しに聞こえた” 救援 ”>>113に、男は思わず桜の幹に体を預けた彼を見た 。 ]**
(128) 2015/07/15(Wed) 23時半頃
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[ 数刻前 ]
「 いつか、 」?
[ 問い、問われた声を僕は鸚鵡返しした。
―――いつか、許されると思った。
それは紛れもない事実で、僕もまた、そのつもりだった。
許してくれると思って、思って、 ……いや、願っていたのかもしれない。
だってそうしたら、僕の罪は、赦される。 ]
―――でも、 …それは、 ” いつ ”?
[ 僕の潰れた声が、彼らに聞こえたかは解らない。
幾ばくもの「 消えた光 」を見てきた。 そうして今回も、そうだと思った。
だってそれが、 「 正しいこと 」だと思ってた。 なのに、
これじゃあまるで、 僕が間違えてるみたいじゃあないか! ]
…………、
[ ついぞ僕は声を発することはなかった。 欹てていた耳にすら、音が入らなくなる。 沈黙。 世界が僕をあざ笑う。
―――「 地下の僕 」を組み立てる、 土台が脆く崩れた気がした。 ]*
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―― 庭 → ――
[ むかし。 と、紡がれた声が鼓膜を叩いた。 男は彼のその前、――昔をひとつ、心に掛けながら、同僚の笑みを視界の端に押さえる。 男からすれば余裕を持っているように思える彼の ……昔とは。 そうして、男は次なる質問に首を傾げた。ああ、俺は何しに此処へ来たのだったか。 ]
私は、始めはただの ―――
[ エゴ、だった気がする。と言い掛けて、唇を閉ざした。寧ろ何故あなたも、と聞こうとした矢先に飛んだ音声と、 ]
―――急ぐのはあまり好みでは、……無いのですがねえ…
[ 視線の先>>132、彼が先に飛び出したなら、その影に続いた。 ]*
(141) 2015/07/16(Thu) 00時半頃
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―― →医務室 ――
[ 穏やかではない、と男は思った。 以前にも同じことを思ったことが、有る気がする。 同僚が間に入る手前、開け放された扉に手を掛け、中の惨状を伺う。 ―――そうして見つけた” 人 ”には、ほうと嘆息さえ流し込みながら。 ]
―――ジリヤ。
[ 同僚に刺さる「 針 」。 成る程鋭利な武器であると男は呑気に思った。 ―――そうして、彼女の名を、低く呼ぶ 。 ]
(142) 2015/07/16(Thu) 00時半頃
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どう、なったの。
クラリッサ……無事、なのよね?
[恐ろしくても、確認しないわけにはいかない。
遅かれ早かれ、いずれ耳に入ることだ。
数分の躊躇いの後、私はそっと声をかける。
返事があるかは、わからなかったけれど]
[返事は、ない
返事はない
あの、ハリネズミの、返事は、ない]
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