1 とある結社の手記:6
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─春・病院にて 回想─
よーし、アーチ。 お前大人しくしてろよ?分かるな? 大人しくしてろよ??
[鳥を相手に大真面目に言い聞かせる。 思えば、友もかつて苦労をしていた。
そんなことを思い出すと、聞き分けのない鸚鵡の相手にも、ちらと笑みが過ぎった。]
(115) dia 2010/03/02(Tue) 01時頃
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…よ、キャサリン。 具合はどうだ?
[静かな病室を見舞う。 しんとして、清潔な室内。
見舞った先の娘の表情は、日々透けるようで ───酷く、儚い。]
(116) dia 2010/03/02(Tue) 01時頃
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『オハヨウ!オハヨウ!!!キャサリンオハヨウ!!』
[くく、と鸚鵡が首を傾ぐ。 この鳥が、真っ先にこの挨拶をするのはいつものこと。 これが挨拶だ、と果たして理解して覚えてるのかどうか。]
さっき、フィリップのとこにも寄ってきた。 これはメアリーから、見舞いな。
[ぱさ、と手渡したのはフィリップに備えたものと同じ花束。 春の匂い、そして──]
(117) dia 2010/03/02(Tue) 01時頃
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………あ。
[はら、と雪のように。
花の合間から、白い、白い林檎の花びらが舞い落ちる。]
(118) dia 2010/03/02(Tue) 01時頃
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───……。
あのな。アーチがさ、こないだ勢い良く飛び上がってさ。 屋根に頭をぶつけたんだ。 でかい音がしたから、メアリーとマーゴがびっくりして…。
そうそう、マーゴがメアリーに料理を習いたいとか言い出したんだ。 メアリーの奴も張り切ってていいんだけど、あれがさあ。 同じものばっか大量に作るんだぜ、あいつら。
どうしろっての。 キャサリン、お前も退院したら食いに来いよ。 助けると思って、頼む。
あー…、あとな。 通りの角の樹にさ、また鳥が来てて…。
(119) dia 2010/03/02(Tue) 01時頃
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……… …… …。
[いくつも、いくつも。
他愛もない会話。 窓からは見えない、村の様子。 花の様子。人々の様子。
今までは、友が語っていただろう風景を伝えていく。 少しでもキャサリンが微笑むなら、それが幸いだというように。]
(120) dia 2010/03/02(Tue) 01時頃
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──…今日は、こんなところかな。 あ…っ、疲れてないか?
食べたかったら、林檎剥いて……
『リンゴ!!リンゴ!!リンゴ!!』
おっまえ、朝も食ってただろ。 食い意地アーチ!
[また、鸚鵡と漫才を交わす。 くすくすと漏れる笑い声に、居心地悪そうに頭を掻いた。]
(121) dia 2010/03/02(Tue) 01時頃
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…少し元気そうで安心した。 最近、……。
[と、言いかけた言葉が不意に途切れる。 視線の先には、小さく揺れる銀の光。>>102]
それは、マーゴの…?
[黒檀は微笑むだろうか。 納得したように、ひとつ頷いて席を立つ。]
(122) dia 2010/03/02(Tue) 01時頃
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そうか。 なら、きっと大丈夫だな?
そいつと、マーゴと……フィリップが、きっと守ってくれる。 また来るよ、キャサリン。
お大事に。 おい、アーチ。行くぞ!!
[鸚鵡を肩に乗せ、病院をあとにする。 村を、優しく爽やかな風が吹きぬけている。
──それは彼女が林檎の樹の丘に立つ、少し前の出来事だった**>>111]
(123) dia 2010/03/02(Tue) 01時頃
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本屋 ベネットは、メモを貼った。
dia 2010/03/02(Tue) 01時半頃
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─春・林檎の丘─
[その日は、晴れていた。 少し遅れて極彩色の鸚鵡と共に向かった先── キャサリンの病室は、も抜けのからだった。]
……ッ
[目を見開く。
この数日、面会謝絶の札を目にしていた。 アーチを病室に入れるわけにもいかず、こつんと窓から鸚鵡が顔を覗かせるだけの日々。 それを彼女が目に出来たのかも、定かではない。]
(133) dia 2010/03/02(Tue) 02時半頃
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あんな、体調で──…!
[咄嗟に振り返る。
彼女が病院を抜け出してまで、行こうとする場所。 そんなものは、ただひとつだろう。]
──…は。
[足が、速くなる。 次第に速くなり、ついには駆け出す。 駆けてく先には、白い花を揺らす一本の樹。]
(134) dia 2010/03/02(Tue) 02時半頃
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キャサリン…ッ
[ばさ、と鸚鵡が極彩色の翼を広げる。
過たずに目指したのは、丘の上の林檎の樹。 白い花を翼に纏い、ふわりと舞う。]
キャサリン…マーゴ……!?
[目にしたのは、墓に倒れるように寄り添うキャサリンの姿。>>112
駆け寄って見れば、最早黒檀の双眸は朦朧として、 半ば現世と彼岸の間を彷徨うと知る。]
(135) dia 2010/03/02(Tue) 02時半頃
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───……。
[途切れ途切れの言葉。>>113 その必死の囁きを、邪魔せぬように静かに口を噤む。
ただ、一度。 友の死を前に、震えるマーゴの肩へとそっと手を添えただけ。]
(136) dia 2010/03/02(Tue) 02時半頃
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本屋 ベネットは、病人 キャサリンの香染の髪にはらりと白い花の降り注ぐを見──
dia 2010/03/02(Tue) 02時半頃
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…キャサリン。
キャサリン………?
[黒檀が閉じられる前に浮かんだのは、穏やかな笑み。 白い花の丘の上に、極彩色が鮮やかに舞う。
泣き崩れるマーゴの肩に両の手を添え、天を見上げた。]
(137) dia 2010/03/02(Tue) 02時半頃
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[あの日、神など信じないと叫んだ青年が天に祈る。 程なく、再会が果たされることを知る由もなく。
穏やかに暖かい春の日差しが、白い林檎の丘に降り注いでいた**]
(138) dia 2010/03/02(Tue) 02時半頃
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本屋 ベネットは、メモを貼った。
dia 2010/03/02(Tue) 02時半頃
本屋 ベネットは、小悪党 ドナルドにニヤリと笑って肩を叩いた。
dia 2010/03/02(Tue) 03時半頃
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