276 ─五月、薔薇の木の下で。
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[ 喉を鳴らす音、後ろで響くそれに。
音なく、けれどしかし唇を弧に歪ませた。
顎を捕まれていたとしても、きっと同じ顔をしただろう。 ]
キミは向日葵が好きなのか?
それとも、月下美人が好みかな?
その想いを向けられる相手が
羨ましいね。
[ 空っぽの箱を揺らすように。
中身のない声が落ちる。 ]
[ 罪を謳うように。
罰を願うように。
聖書のページを、捲るように。 ]
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しー ほら、
[何か見えた?じゃない、とばかりにタルトの欠片がついた左手の指でジェスチャー。 ソファで寝入る姿は目覚めたろうか。 月に照らされる黒髪が、何故か光って見えた]
えーと、 先輩の
[名前、なんだっけ。と 小さな声で問うように]
(148) 2018/05/18(Fri) 00時頃
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………げっ
[先輩の、(逆鱗に触れたらどうしてくれる)という続きは飲み込んだ]
いやだって、 あははは そんな簡単に治らないすよ
[別にさぼってるわけではない。ないのだ]
(152) 2018/05/18(Fri) 00時頃
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ヒューは、タルトの食べかすを飲み込んだ**
2018/05/18(Fri) 00時頃
負傷兵 ヒューは、メモを貼った。
2018/05/18(Fri) 00時頃
[花に例うる、好みの話。
向日葵か、月下美人か。]
――いいや。
紫陽花かな。
[花の名前なんて多くは知らない。
けれどもしも例えるならば、きっと。
これから雨を浴びる薔薇と、今度こそ道を違えながら。]
紫陽花。
キミ好みの色をつけて
そちらを向いてくれればいいけど。
[ その《花》がさすものを、俺は知らない。
けれど興味こそあり。
木を彫り何かを生み出す、そのモリスの手が何に触れるのか。
何を求めるのか。 ]
紫陽花にも毒があるから。
気を付けて?
[ その《花》にも毒があるのだろうか。
道を違えても、薔薇の香が届く限り。
興味は尽きず。 ]*
[ 隠されたものは暴きたくなる。
美しいものは穢したくなる。
完成したものは壊したくなる。
嫌われているのなら、もっと。
好かれているのなら、もっと。
胸に渦巻くのはいつだって
背徳的なことばかり。 ]
[ だから、モリスの彫る作品を受け取れない。
美しく完成したものは、ぐちゃぐちゃに壊したくなるから。
だから、ケヴィンには容易に近付く。
この香りに酔わせて、震わせたいから。
だから、花を咲かせる。
花を慈しむんじゃない。
手折るために。 ]
[ シャワー室には、数枚。
どこから落ちたかわからない薔薇の花弁が、ふたつ、ひとつ。 ]**
―――― 俺は、誰なんだろうな。
[途切れたはずの呟きは、胸の奥で抱えられた結果、ほろりと零れ落ちる*]
負傷兵 ヒューは、メモを貼った。
2018/05/18(Fri) 22時頃
ヒューは、オスカーの手の温度を知っている。
2018/05/18(Fri) 22時頃
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― 談話室、先輩の手 ―
[それは冷たい手だった。 低い温度を感じさせる手。 形容しがたい処置に>>149減らず口を叩いても それを直そうとはしなかった。
それは、この学校で「先輩」と呼んだ最初のひと。 名前を呼ばなくても、目が合って(あるいは背中を見つけて)先輩、と呼べば振り返ってくれた人]
(279) 2018/05/18(Fri) 22時頃
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― 談話室 ―
[冷たい手が去っていった談話室。 ソファの影から色鉛筆を拾い上げる]
あの人は描かねーの?
[スケッチブックに、あの黒髪を見た覚えはなかった。 左手で回そうとした色鉛筆は、危ういバランスを保って最終的にはピスティオ向けて差し出される]
(280) 2018/05/18(Fri) 22時半頃
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負傷兵 ヒューは、メモを貼った。
2018/05/18(Fri) 22時半頃
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……そ? わりといつもあんな感じ
[優等生たる姿は、もしかしたら聞いてはいるもののちゃんと見たことはないのかもしれない。 新入生としての、利点、あるいは疎外感。 みんなが知ってる姿を知らない。 あるいは薔薇の姫の。あるいは、手を止めた演者の。 今の姿しか、知らない。
奉公、なんて大げさだと笑いながら、 夜が夜のまま続くことを知らぬまま、 腕が不自由がための荒れ放題な部屋へとやがて辿り着く]
(284) 2018/05/18(Fri) 22時半頃
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― 同級生のこと ―
[自室に戻る途中、階段を幾つか昇る、あるいは通り過ぎた。腕を痛めた場所も通る。その場所の記憶、「悪くはない」と言ったロビンの顔>>135を思い出す。 あの時、何と言ったんだったか。 迷って、迷いすぎて、間違えた。 「俺のことは、嫌いでしょ」って、断じるように言ってしまった。
それから、いくつか言葉を交わしたか―――ああ、朧気だ。 確かなのは、去って行くロビンの背中を見送って、 見えなくなってから、追いかけようとしたこと]
(285) 2018/05/18(Fri) 22時半頃
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[追いかけて、何を言おうとしたんだっけ。 ―――きっと、ピスティオみたいに>>64「ごめん」は言えなかった。 整理のついていない感情を持て余して、見たくなくて、
一人で階段から落ちた、のは間違いじゃない。>>115 いつもなら、そんな不注意は起こらないのに。 たった、一ヶ月足らずで揺さぶられるなんて。 思春期の出会いってやつは。 ……今はまだ、そんな風に笑えない*]
(286) 2018/05/18(Fri) 23時頃
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負傷兵 ヒューは、メモを貼った。
2018/05/18(Fri) 23時頃
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や、 すんなり、って……
[これでも必死なんだぜ。そう笑うことは簡単だけれど それは少し勿体ない気がした]
ん、まあそうかもな! まだ一ヶ月だぞ? 信じらんねーよな
[なくならない疎外感は、ひっそりと心の底に沈める。 それに、この言葉は嘘じゃない。 ずっと居たみたいな居心地の良さ。 洗濯物を受け取って、しまって、少しずつ綺麗になっていく部屋も、今まで一番「自分の部屋」に見えた]
(297) 2018/05/18(Fri) 23時頃
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ヒューは、モリスのことを思い出した。好きなもの、こと…。
2018/05/18(Fri) 23時半頃
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[洗濯物をしまい込んで一息つけば、 せっかく戻してもらった包帯がまた緩んでいるのがわかった。 ギブスってほどでもない。 緩く固定したそれは、包帯が解ければある程度自由がきいてしまう。 まだ治ってないの、と言われたけれど怪我をしてまだ一週間だ]
ちょ、 隠してねーって!
[これは本当。初めての寮生活。そんな私物は持ち込む隙間も余裕もなかった。 が、焦るのは心の反射。 止めようと伸ばした左手は目測を見誤り、色鉛筆が数本床に、ベッドに、転がって]
(313) 2018/05/19(Sat) 00時頃
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[落ちる、と―――あの時も、ゆっくりと思考は言葉になった。 罰が当たったんだ、と考えたのは、医務室で手当てを受けていた時だったか。
醜い感情を自覚したから。 手の届かないものを想ってしまったから。 子供めいた八つ当たりをしてしまったから]
(318) 2018/05/19(Sat) 00時頃
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[「嫌いじゃない」 そうだ。やっぱり感情は鏡写し。
「よく知らない」のはお互い様。 それを誤魔化さずに考えて、言葉を返してくれた彼のまなざしを、思い出したから、追いかけようとしたのだ。
やっぱり、言おう。次に会ったら。 ロビンが残っているかどうかも、知らないけれど。 会ったら「ごめん」と。 一方的でまた困らせるかもしれないけれど――]
(320) 2018/05/19(Sat) 00時頃
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