25 花祭 ― 夢と現の狭間で ―
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花、らしからぬか。
[花のありよう、あるべき姿も人それぞれ
深く追求するでなく、ふぅん、とかえし]
ああ、彼の言の意図が黒かどうか
お互い確認しよう
……なんだ、顔に傷でもおありで?
[顔に傷、と言われて噴いた。
そうだったと、こいつは眼を隠してやがる。]
ああ、それはもう酷い傷だ。顔全体がひしゃげてやがる。この世のものとは思えんぞ。
ほれ、見たくなったか?
[下品な笑い声]
それは、まことなら下手な花より
人の記憶にも残ろうぞ。
……そうだな、まことかどうか確かめてやろうか?
[まるで子供に良い子にしろと脅す風だ。
なれば、此方もからかう様に
売り言葉に買い言葉を花で笑いながら返して]
それとも、触れて見聞でもしようか?
その傷が何処まで刷衛殿を覆うものか
さすがの花だな。
ならば確かめてみるがいい。
見ずに我の醜さがわかるほどなら、
俺はこの顔をなお、愛おしく思うことにしよう。
[こいつは面白いといった口調で。]
まぁ、潜入で助けがいれば呼べ。
わかっているだろうが、力もそれなりにあるぞ?
まずは刀か。
ではのちにな。**
己の醜さを愛でるか?
なかなか面白い趣向よ。
触れてつまらぬ顔ならどうしてくれようか
[こちらもクスクスと愉快気に哂い零す]
……私を運べるほどにははわかっている。
研ぐに慣れても、切るに慣れぬなら逆に呼べ。
獣狩の舞なら幾度も舞った。
[主の好んだ武舞の動作は、
時に太刀を、時に鉾を獣の血で赤く染め上げた]
退屈な宴はもう座した、適慮向かう
[舞台の上にいた時、興が乗ったのは本当だが
こうして狩に思いをはせればそれは色褪せて
包帯の奥、紅が更なる朱をと*瞬いた*]
つがいで飼うのが無理ならば、共に血肉となってもらうも一興か。
それならば、彼岸でも共にあれようて。
主にはぐれた花の如く、迷い出る事もなかろう。
この手を離れて行くならば
たれかの元へたどり着く前に
そう、いっそその翼を手折り――縊り殺してしまえばいい
[少年の自覚は無きままに
浮かぶほの暗い朱]
[遺しておきたいものと
食らってしまいたいものと
己の感覚にとってそれらは違うもの]
…傍に置くに値しないなら、ただ食えばよいまでの事。
[そうして、生きているのだから]
[屋敷の構造を把握しながら
通信を介し、雇い主であるセンターに
極秘裏で屋敷の封鎖と
豚狼を捕らえる手はずを整えていく。]
――シュレーゲルは今は宴で最後の愉しみといったところだ
彼を狩るのも任せてもらおうか?
……わかってる、情報を吐くのなら殺さぬよう自重する
[打ち合わせる間、聞こえる声は愉しげに
さて、今度の狩りでは幾つの獣を狩れるのか*]
ん?
仕事熱心だな。
ああ、ヘマをしないのならやってくれ。
[そして、少し間をおいて]
そうだ。殺すなよ。
……何故……?
人に害なす獣、殺すのが当然であろう?
害をなして殺されぬなど……
[聞こえた声に返すのは心底わからぬと言う声]
獣を殺さねば、獣に殺された人々の無念は晴らせん
[低く告げる声は*暗い*]
なるほどな。
言いたいことはわからんでもない。
お前はお前だしな。
[暗い声に少し、声はまっとうになる。]
じゃあ、言い直そう。
殺されるな。
身体だけじゃない、心もな。
[そして、しばし沈黙したあと]
とっておきを貸してやるから。
[そう告げた。*]
…肉を。
[食らいたいと願う。
あのように追い立てられては、たまらない]
[子を為して大成するか、食い殺されるか、二つに一つ。
それゆえ高嶺を名乗れぬ花は、2つと居らぬ高嶺の花と。]
…食ってみたい男でも、見つかったか。
[不意に投げてみる声。
特に目的があるわけではないが。
花祭に出入りする関係、
あの人食い花とは何度か面識もある。
当然、共に"食事"をしたことも、だ]
…乾様も、お父上同様…血は争えぬようで。
このまま色に狂うなら、容易に手の内に落ちましょう。
[嬌声に混じって聞こえる囁き声。]
良い体つきをしておりますし…寺にて節制しておられるのなら、味の面ではあなたのお気に召すのでは?
乾?
…ああ、あの色坊主の。
[小さくわらう。
引き締まった、と聞けば幾らかは
興味があった]
脂身が多いのは好かん。
わたしは悪食ですから…脂のしっかり乗ったものも嫌いではありませんよ。
それに…祭りにて喰らうはただのエサではないのですから。
[子息を送り込んできた家のいくつかは秘密裏に、その子ではない世継ぎを望んでいる場合もある。
当人たちはおそらく知るまい。]
[熱が身を侵食していく
満月が
近い
少年は夢うつつ
真っ赤に染まった先を垣間見る]
肉を――…喰らい、種を植えつけて
[裏の路地で
望まず生まれ、捨てられる子供たち
この世界に何故、底辺と呼ばれる其れ等があるのか
知っている
知っていた]
壊す
この世の理
[遠くに会話を聞きながら
さらに深く、夢の奥へと堕ちていく**]
…わかっている。
[食うだけではない。
その言葉がどういう意味なのか]
…ああ、もうすぐか。
[さざめくような声。
もうすぐ、またひとつ人喰らいの花が咲く]
|
― 大広間 ―
…やっぱ、華月の手妻は綺麗だな。
[先程舞台で披露された芸に一言感想を漏らす。 虚ろにただ舞台を見詰めていた瞳にも今は光が宿り、傍らには華月の姿があった。 彼と共に居る時は何処か心が落ち着き、自然と和やかな会話が紡がれる。 ひらひらと蝶を舞わせてくれたなら、嬉しそうに微笑みを返した事だろう。]
―――…、……?
[やがて、はたと舞台に目を遣る。 そこに立つは、一人の少年。 その姿を見るなり、虎鉄は無意識に肩を微かに一度震わせた。]
(@19) 2010/08/03(Tue) 20時半頃
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[始まる、舞。
こくり、と咽が一度鳴った。
緋の小袖が、うねる焔が、舞台に紅を散らす。 その様にひどく胸が痛んで。 しかし琥珀を逸らす事が出来ない。
双肩にかけた薄布の端を固く握り締め、虎鉄は耐えるようにその舞を見届けた。]
……かげ、つ…?
[椿の花が落つ時。 傍らの華月が呟いた言葉に、漸く舞台から視線を移す事が出来た。 しかし、彼の瞳に宿る色。 それは、先程の焔を未だ映しているかのよう。 そして舞台を見詰める華月の瞳に映った、落ちた椿の花。]
(@20) 2010/08/03(Tue) 21時頃
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―――…ッ
[瞳ごしにその花を見れば、また胸が締め付けられて、世界が揺れる。 は、と短く息を吐いて、虎鉄はふらりと踵を返した。]
悪い、ちょっと風に…当たってくる…。
[俯いたまま、そう告げて。 振り返らずに大広間を後にする。 去り際の表情は、怯えたような青白い顔。 その表情を見る事があったかどうかは―――さて。]
(@21) 2010/08/03(Tue) 21時頃
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― 本邸・廊下 ―
は… っ …はぁ…
[よろけながらも、虎鉄は駆ける。 何かから逃げるように。
苦しい。 気持ち悪い。
何がそう思わせるのかはわからないけれど。 あの場に居続けたくない事だけはわかった。 虎鉄は、無意識に誰も居ない静かな場所を求めて。 やがて辿り着いたのは稽古場。 其処へ着く頃には、息も絶え絶えに。 額には玉の汗が滲んでいた。 そして、何処かで落としてきたのだろうか。 ふわふわと羽衣のように揺れていた薄布も、今はその双肩にかかって*いなかった。*]
(@22) 2010/08/03(Tue) 21時頃
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若者 テッドは、メモを貼った。
2010/08/03(Tue) 21時頃
……イアンの心は主が亡くなった時に、
既になくなっております。
[ぽつり、そう零せど、すぐに小さく笑って]
なんて……殺されるようなへまはいたすまい。
[取って置きのの言葉には嬉しそうに笑みが零れる]
……殺すな等とおっしゃるから
太刀を拒否されるのではないかと危惧しました。
今、受け取りに参ります。
お時間よろしければ、部屋にお帰りください
ああ戻る。
だが、こころはな、なくならぬよ。
それにそういうことを奴は望まないと思うがな。
[それはさりげに、実は知っていること、告げた。]
……なくならなくても……いりません
それに……主の真意は今となってはわかりません……
[高峰の言葉同様に、主の意思を推測する言葉へは
そうとだけ零した]
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