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そうだな、まさかだけど。
ありえないと思える事だって、案外起きる。
[あの子、というのが何をどう指すのかは知れないが、
言う通り、声は己と女のものしか聞こえて来ない。]
耳が遠いのか、話す気がないのかは知らないけどな。
[事ここに至って話す気がないのだとしたら余程の世捨人か。]
……うん?
[気持ちいいのか、と問われた。
食事に対してなかなか斬新な質問だ。]
そりゃな。
人間だって、好きな物食って腹一杯になれば気分良いだろ。
それと同じじゃねぇのかな。
[飢えが満たされる事。
狩りをする衝動が満たされる、事。]
それ位ならあんたも解るだろ?
[それは己の生と性が充足する時間だ。]
えーと、何っつったっけな。
カタル……何とかって奴じゃないか?
カタルシス?
……ふふ、ごめんなさいね。
随分と気持ちよさそうに聞こえたものだから。
人を裂くのに、どんな快楽が伴うのかしら、って。
[肌をざわつかせるような、
甘く喉奥を疼かせるような
そんな感覚を、その声に覚えたのは確かだ。
――確かに己の中にも、
その血は流れていると理解する]
ありえないこと、
そうね、何かわかったら教えるわ。
[不確かな憶測と、
――人狼を暴く術と]
そういえば、
まだ、聞いていなかったわね。
あなたがどこから来て、どこへ行くのか。
……昔話は、寝物語の方がいいかしら?
[教会へいたる雪道、
眼下に静かな海を見やりながら囁きを]
そうそれ。
[こんなやり取りでさえ――]
……どうだろうな。まぁ、気持ち良いけど。
人間も野山に入って猟をするけど、
あんたはそういうのもやった事なさそうだしなぁ。
[箱入りの、いかにも良い所のご婦人といった風情の女だ。
今、囁き交わす声が少し浮き立っているようなのが、
記憶と少しだけ違う。]
ん、あぁ。気になるっつってたっけ。
そんな大した話じゃねぇし―― っと。
[急に荷物を振られた旅人はそちらに意識を向けつつも]
別に、いつでも良いぜ。
[そうして、旅人はぽつぽつと話し始めた。
自分がどこから来たのか。]
元は行商の……と言うか、
それに扮した移動性の群れの生まれでな。
うんと小さい頃は母体の事があるから、
確か、少しの間は定住してたと思うけど。
ほとんどずっと、今みたいな暮らしだったな。
[旅が塒とは、よく言ったものだろう。]
![]() | 【人】 雑貨屋 ティモシー― 教会へ至る坂道 ― (74) 2013/12/22(Sun) 20時半頃 |
![]() | 【人】 雑貨屋 ティモシー ――……ええ、ずっとここです。 (79) 2013/12/22(Sun) 21時半頃 |
……猟はしたことないけれど、
こう見えて、山歩きは得意だったわ。
[ほんの少しすねたように口にするのは、
まだ少女と呼べる年の頃の昔の話だ]
あら、そう?
いつでもいいなんて……、
少しくらい焦らしてくれても、いいのよ。
[そんな無邪気だった面影はもうない、
頼る者も無いまま、一人故郷を離れなければならなかった。
利用できるものは利用した、
結果、悪女と呼ばれたけれど、
後悔も懺悔もない、少しばかりの憐憫があるだけ]
群れというのは……、
家族のようなものかしらね。
[行商というのは理に適っている。
人を襲う以上ひとところに留まり続けるのは危険だ。
それはよく知っている、その結果を見たのだから]
――そう、
その口ぶりでは、故郷の記憶はないの?
ご両親とか、兄弟とか。
……会いたい誰か、とか。
[ぽつりぽつりと、途切れるような囁き]
[あの男が警告した人狼なる存在が己でない別人だとしたら。]
[己は同族喰いの嗜好を持たない。
よって、妨害が入った際など、いくつかの例外はあるものの、
極論、"喰おうとして喰えなかった奴"が、
話しかけて来ない同族であるとは言える。]
![]() | 【人】 雑貨屋 ティモシー 私は神父に用事がありまして。 (84) 2013/12/22(Sun) 21時半頃 |
へぇ? 意外だな。
[あるいは、例え良家の令嬢というやつであっても、
誰しも幼い頃はお転婆な少女だったのかも知れない。]
そうだな、人間で言う所の家族か、集落か。
……故郷の土地っていうのはなかったけど、
小さい頃に住んでた所は、暖かかったな。
多分、春だったんだと思う。
[両親、兄弟、その言葉に左手をポケットに突っ込む。]
――
[子供が少し口をとがらせたような、
何故か決まり悪そうな小声が零れた。]
……狩りも出来ねー位よぼよぼの爺さんになったら、また来る。
つった所なら、あるけど。
[拗ねたような口ぶりが、
かわいらしいと言ったら彼は不本意だろうから、
零れたのは小さな忍び笑いだけ]
そう、故郷の土地はなくても。
あなたには、
……ちゃんと帰る場所があるのね。
……多分、そういうんじゃねぇよ。
[人の間で人を喰い殺す狼が、
そんなに長くを生きられるとも思っていないし、]
そいつらの仲間になれる訳じゃないしな。
[きっとそれは叶える心算のない約束なのだ。]
旅から旅への根無し草だよ、俺は。
いいじゃないの。
いつか帰るかもしれない、
そんな場所があると思うくらいは、きっと
……生きる理由に、なるでしょう?
[それは酷く人間らしい思考だと己自身そう思った]
生きるのに理由が必要か?
[解らない、と言いたげに声は囁いた。]
……しかもそれだと、まるであんたの方が、
帰る場所がないみたいに聞こえるぜ。
[都の方で、絵なんかを売り買いする商売だと聞いていた。
そちらは帰るべき場所ではないのだろうか。]
![]() | 【人】 雑貨屋 ティモシー― 教会・神父の部屋 ― (125) 2013/12/23(Mon) 00時半頃 |
![]() | 【人】 雑貨屋 ティモシー
(128) 2013/12/23(Mon) 00時半頃 |
![]() | 【人】 雑貨屋 ティモシー― 教会・神父の部屋 ― (130) 2013/12/23(Mon) 01時頃 |
[単純な答えは予期されたもの、
けれどそれは、今は好ましいものだ]
……そうね、
[そしてゆるやかな肯定]
優しい人を大事にしなかったから、
きっと罰があたったのね。
[珍しく自嘲のようなものが溢れて]
つまらないことを聞かせたわね、
ごめんなさい。
![]() | 【人】 雑貨屋 ティモシー ですが、本当に知りませんでした。 (133) 2013/12/23(Mon) 01時頃 |
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