162 絶望と後悔と懺悔と
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サミュエルは、薬がきいてきたか、やや眠くなりながら*
2014/02/08(Sat) 22時半頃
どうやら全員元気そうで何よりだ。
[音は無くても空気を裂く振動は確かに響いた
それを静かに庇う者もいた
するりと感謝の言葉を述べたかと思えば
おかしな質問を付け足す者もいた
感謝を言葉から態度へ変える雛もいた
そして相変わらず引かず何かを探ろうとする雛も]
何だ、自分達の立場も知らないのか。
[教えて無かったのかと、控えていた吸血鬼に視線を向けたが
それ以上何かを咎める事はしなかった]
[直円の背中が見えてほっとする。
『お兄さん』でなければならないという思いから少しでも解放される。
明之進とリカルダは共に傍に居る。
理依はもう平気なのか、虚勢や強がりでなければ良いと、誰よりも一番遠くで見。
足りないのは誰か。程なくして連れられてくるのは真弓だった。]
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―回想・円について―
[何かある毎、少年が取り出す縮緬の巾着に 小さな女の子が興味を示したのは、 染付の色柄がきれいだったから、なのだと思う。]
だめだよ。大事、だから……
[下から伸びる手が届かないように腕を高く上げると、 ちょっとだけ、ちょっとだけ、とねだる声が響いた。]
……ちょっと、だけだよ。
[締めた口紐は自分の指に絡めたまま、触らせてあげた。 その絹地の上等さを少年が知っている訳もないが、 こんなに手触りの優しいものは、他にめったにないと思う。 もし取り上げられたら正直泣いてしまう。]
(226) 2014/02/08(Sat) 22時半頃
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[巾着の中身が何なのか、外で口にしてはいけない、 決して誰かに見られてはいけないと、 母にかたく言い遺されていた。 だから、巾着の事を知っている子はけっこういたが、 孤児院に来てから、中身を取り出した事はなかった]
でも、
[ふくふくと笑う円の顔を見ながら思った。 もう、ここが家で、皆が家族なのだろうかと。]
みんなには、見せても、いいのかな……
[ぽつりと呟いて、窓の外に向けて首を傾ける。 その答えをくれる人がここに来る事はないけれど、 いつか、それも許されると思えるようになるだろうか。*]
(227) 2014/02/08(Sat) 22時半頃
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少なくとも夢の世界でない事は確かだ。
ここは私の城。
吸血鬼達の集う聖域。
[三日月の笑みから覗く牙]
そして私が全てを支配する者。
トルドヴィン=エメリッヒ。
お前達の永遠の主人だ。
落胤 明之進は、メモを貼った。
2014/02/08(Sat) 22時半頃
……これで、『全員』?
[思わず言葉に出してから、両の手で口を塞ぐ。
服が着替えられ、懐刀の重みが消えている。
その事もあって、落ち着かない。
『約束』を守っただけではないことは、孤児院に居た吸血鬼と守護隊の交戦で分かる。]
っ!
[視界を染めた紅を思い出しそうになり、ぎゅううと硬く両目を瞑る。]
トルドヴィンお父様は始祖吸血鬼。
全ての吸血鬼の頂点に位置する方と言えば分かるかしら?
お父様がどんな存在なのかは。
[そう告げると、微笑んでから名乗る。]
あたしはホリー。
ホリー・ニルヴァーナ、純血の吸血鬼よ。
これから長い付き合いになるだろうし、よろしくね。
|
―病室・サミュエルとの会話―
[何があっても、変わることはないだろう決意の表情。>>219 真っ直ぐな目線に出会えば、こちらも逸らすことは許されない。]
…そうだな。 そういうことじゃ、ない、よな。
たしかに、あいつらは強い。 当然、『普通の人間』じゃ、まず敵わない。
でもな、おまえの言うとおり、絶対敵わないと思わなくちゃいけない相手でもない。 人間は、ただ屠られるのを待つ家畜じゃねぇからな。 …あの力に対抗するために、俺達がいるんだ。
[守護部隊は、人間は"能力"をもって吸血鬼に対抗できると、 彼に、暗に伝えることはできただろうか。
――ホリー・ニルヴァーナを追う。 今自分にできることはきっともう、彼が自身の選んだ道を走れるよう、精一杯支援することだけなのだろう…]*
(228) 2014/02/08(Sat) 23時頃
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ミナカタは、明之進の手元の巾着は小洒落たものだったと、ふと思った。
2014/02/08(Sat) 23時頃
[雛達の質問の答えとしては不親切極まりないものだろう。
だがそれ以上何が必要と言うのか]
ああ、安心するがいい。
残りの2羽は殺してはいない。
ただ私の祝宴にしては寂しいものだったからな。
巣に火を放ったから、巻き込まれたかもしれないが。
[『全員?』と訊いた雛には答える必要があったかと
事実を告げる。
約束は破ってはいない。
ただ勝手に火の中に飛び込んで焼け死ぬのは別だ]
トルドヴィンは、サミュエルは生きているだろうと確信していた。
2014/02/08(Sat) 23時頃
零瑠、大丈夫?
[目を瞑った彼が気になる。
血にはとにかく弱いから。
そしてトルドヴィン、ホリーと名乗った二人を見る
吸血鬼。始祖?なんだ。それ。
それに長い付き合いって、何のことだ]
長い付き合いって…食べるまでの時間?
だったらさっさと食べればいいじゃないか
……――永遠。
[端麗な発音から最も耳に残る言葉を自然と零す。
自分達が置かれていた室内は決して暗くはなかったが、
トルドヴィンを名乗る者が現れ、その容顔を見れば
まるで内側に月影を含んでいるように思えるのは、
彼が支配する者だからだろうか。]
明之進は、ミナカタはまた怪我をしていないだろうかと考える。
2014/02/08(Sat) 23時頃
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[保護されてから、数日が経った。 大して怪我をしていなかった身体。すぐに病室から移動した。
安吾と一緒に孤児院へと行って>>218。 壊れた「家」に、思いをさらに強くした。
ガラスの破片。工作して作った、根付のような飾り物。 持って帰った鶯笛と一緒に、大事にしまってある。]
(229) 2014/02/08(Sat) 23時頃
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[養成所で過ごすようになってから、隊員に名前の由来を聞かれた。
キャロライナという名前が、女の名前だと知ったのは直円が読んでいた異国の本に書かれていたのだったか。 きっかけはよく覚えていない。
ただ、からかわれると、陰謀だ!と直円の口癖を真似して言って騒いだこともある。 その言葉の意味さえよく分かっていなかったけれど。
だから。 隊員の誰かに確認のように聞かれた時も。 陰謀です。 と一言だけ返した。]
(230) 2014/02/08(Sat) 23時頃
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……だ
[大丈夫ではなかった。けれど、今は大丈夫でなければならない。緩く首を振る。
零瑠の重い瞼を抉じ開ける、声が響いた。
名乗るのは、支配のためか。長い付き合いのためか。
革色に一瞬浮かばせたのは躊躇、拒絶、愁、
―――――――――希。]
そ、
[ん、な。]
[目を閉じた雛に視線を向ける。
現実から逃げようとしているのか、余程嫌われたか。
傍から見ても判るほど機嫌は良くなっていた]
おや。熟成させてと思ったけれど。
折角勧められたのだ。
感謝の気持ちと受取っておこう。
[捕食者たる紅の瞳が金へと変わる。
一歩踏み出すと次には純白の布を付けた雛の前に]
|
>>228 [安吾から。答えをもらうと頷いた。 守護部隊が吸血鬼を倒すべくある部隊なら、そこに所属する。家族を取り戻すためにどんな訓練だって受け入れるつもりだ]
――……
[思い出す、貴方は連れていかない、そのほうが面白いから、と言ったホリーニルヴァーナ。 そのホリーにとって、サミュエルの行動は、 まさに従順な玩具なものに見えたとしても、
それ以外など考えられない]
安吾さん、お願いするですだ。
[リーの言っただろう言葉が頭に過ぎる。 もう、捕まるな。……絶対戻ってくる。>>101]
大丈夫だ。おでが………戻しでやる。
[そう決心して*]
(231) 2014/02/08(Sat) 23時頃
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吸血鬼……。明にーさんを傷つけたバケモノ、も?
どうして? ねえ……。
[僕はベッドに横たわったまま知らない大人に問いかける。
金髪の人が吸血鬼の頂点ってことは、明にーさんが今こんなことになってるのはつまりこの人のせいってことなんだよね?
まだ握り合ったままの明にーさんの手は、熱出して寝込んでいた時みたい。
顔は苦しんでいるように見えなくてもきっと……。
それだけじゃない。今僕がここにいるのも逃げられなかったのもアヤやみんなと離れ離れになったのも元をたどればこの人が悪いんだ。
―――許さない]
[金の瞳は捕食では無く繁殖の色。
魅了し、相手を同じものへと変える能力を牙に載せて
相手に注ぎ込む。
能力を注がれた相手は間を置かずに強烈な飢餓を覚え、
渇きを癒す術を求める。
最初の飢餓を癒すのは同族の吸血鬼の血のみ。
そして血と力を分け与えられた生まれたての吸血鬼は
永遠に断ち切れぬ鎖に繋ぎ止められる]
[重たく瞬きをした次の瞬間には、月影はそこにない。
だが、首を傾げる必要もなく、くるりと首を巡らせた。
零瑠のすぐ前に居る。
――ここに来て、初めに見せつけたものは牙]
……や、
[少年が声を上げた時には、吸血鬼にとっては
欠伸が出るほどの間を経ていることだろうが、
片手にリカルダの指、もう片手に巾着と鏡を確と握り。]
めて――
|
─ 直円との記憶 ─
[真弓とはしゃぎ遊ぶようになって 一番の被害を受けたのは直円だったかもしれない。
『弓矢だよ。 直お兄ちゃんは的ね!』 『いっくよー! ぶすー!』
真弓が少女の背中を押し、少女が走る。 両手を頭の上で三角に合わせて、直円の脇腹に突進した。 遠慮のない幼子の攻撃はそれなりの痛みを伴うだろうに 直円はいつだってにこにこと笑ってくれていた。
直円のそんな笑顔を見ると、 少女もまた、ほっとしたように笑うのだった。
その直円が、『読書会』に参加するようになり 遊んでくれる機会が減ると、 少女は時折絵本を読んでとせがむようになったけれど 直円はそれに応えてくれただろうか──。*]
(232) 2014/02/08(Sat) 23時半頃
|
始祖――…って……
[さ迷う視線は直円の背に。
読書会で得たのだと、吸血鬼のことを話して聞かせてくれた中で、『始祖』は何だと言っていた?]
安心、えぇ、安心、した…。
ありが、と ござま ……す。やくそ、まもって…
[理依に謝らなければならない。彼を少しでも疑ってしまったから。
二人が直接殺されなかった事を喜んで良いのか、生死が分からぬことを嘆けば良いのか。
二人だけではない、他の――絢矢は、キャロライナは、円は、涼平は、ジョージは………守護隊の人は――。
炎と肉を焦がす臭いを思い出し、再び口を塞いだ。
瞑る目の端から涙が零れる。
何が『祝宴』か。
あんな風に炎を上げて。あれではまるで……]
あなたも、今日が誕生日……?
|
―昔話―
[まだ姉も弟も生きていた頃。 たまたま孤児院に顔を出す機会があった]
ふうむ、こういうところで集団生活するんだな。
[それは軍に入りたての子供たちの集団にも似て まるで違うのに親近感も湧いたりした。 ごく一方的に、そしてそれからきょうだいには黙って 何度か顔を出すことにした。 きょうだいを失ってからもそれは続いて*]
(233) 2014/02/08(Sat) 23時半頃
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―むかしばなし―
[これは将来、傾城になれる器だな、と、真弓を初めて見たとき、そう思った。
見た目の美しさだけではない。 まだ幼くても、異性を惹き付ける何事かを彼女は持っていると。 色街で娼婦達に育てられた周にはなんとなくだが、感じられるのだ]
(234) 2014/02/08(Sat) 23時半頃
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[ある日、真弓が街でひどく絡まれた後、年長の孤児達から 彼女が外出するときに付いていってくれと頼まれたことがあった]
用心棒役ね。 あいつのことが気になるなら、お前らがやりゃあ、良いのにな。 ……ま、いーけどさ。 俺が一緒で、かえって絡まれることになっても知らねえぞ。
[真弓を気に入っているらしい、理依やサミュエルの方が適任だとも思ったが、頼られるのは悪い気分ではない]
(235) 2014/02/08(Sat) 23時半頃
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[真弓の用事に付き合う道すがら、話し掛けられても、返す返事は、あぁ、だとか、そうか、など気のないものばかり。
別に彼女との会話が嫌なのではなく、何を話してよいのか分からないだけのことだが、きっと真弓は気を悪くしたのだろう。
帰り道、孤児院へと向かう寂しい裏路地には二人の足音以外、聞こえるものは無かった]
(236) 2014/02/08(Sat) 23時半頃
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[結局何事もないまま暗い裏路地を抜け、茜さす夕暮れに照らされた真弓の横顔に周は思わず目を奪われる。
呆とした表情で、急に立ち止まった周を真弓はどう思ったか。 振り向いた彼女の表情は逆光で分からなかった。 熱くなった頬をごまかすように掻きながら、――黄昏時で助かった、と小さく呟いた*]
(237) 2014/02/08(Sat) 23時半頃
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[化け物と呼ばれても笑みはただ深くなるだけだった]
化け物では無い。お前達の主人だ。
そしてお前達も同じモノになる。
[当然の様に言い放ち、改めて礼を口にする雛に微笑んだ]
お前もリーと同じく聡いようだ。
[零れる涙を指で拭い、そのまま口を塞いだ手をどけさせて]
私ではない。雛鳥の新しい誕生日に、最初の贈り物だ。
[あなた『も』と問うた雛鳥の贈り物に。
その首に牙と金の能力を突き立てた]
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[生まれが軍人しか選べない家だから、 そのほかの未来、選択肢があることがとても羨ましかった]
軍人以外の選択を、少ししてみたかったかもしれないね。 想像もつかないけれど。
[弱音にも似たその言葉は誰にも向けられていないまま、 そして今]
私は、軍人でよかったと思う。
[明確に今、向かうべき目標があるから]
(238) 2014/02/08(Sat) 23時半頃
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