17 吸血鬼の城
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―廊下― [視線は返らないが、気にした様子もなく 体温の感じられない其の指先が頬を撫ぜ、ストールをついと引いて戻ってゆく]
その浅黒くやけた肌に似合う色だと思ったが。
[首を傾ぎ、顔を覗き込んだ。 胸元が露になり、情欲の名残が其処に見え隠れする]
――…ひとの種がどうであれ、血の色は同じ 衣服もまた、気に留める程の事では無いが
是から化粧を施すのだったか? ならば私に構っている場合ではないだろう。
[くすくすと、まるで何もかもお見通しだと言う風な笑みを浮かべ、子供の恐怖心をからかっている]
(277) 2010/06/21(Mon) 21時半頃
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金銭の為ですか、詩を書く上で考えた事がありませんでした。
[その言葉は赤毛の男との生まれ育った環境とは違う、恵まれた環境を露わしていた。 ある意味で清廉された、ある意味で汚濁に満ちた貴族の生活。 男が否定し、嫌悪しても、それは沁みついた楔。]
(278) 2010/06/21(Mon) 21時半頃
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くす、くすすすす。 あはははははははははははははははははは。
[哄笑。宴という単語が脳裏に浮かんだ。時間の磨耗。発言者は誰であったか。赤い血。長く伸びた牙。点滅する記憶。途切れ途切れになる意思。思考。目的。判断。能力。時代。思い出。出会い。別れ。話。時。遺志、遺志、遺志――捏造された遺志]
うふふふふふふふふ。
[硝煙の臭いを芳しく香水のように浴び、淑女は一人*笑い続けていた*]
(279) 2010/06/21(Mon) 21時半頃
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私がこの血を分け与えるのも可能だが
……そろそろお前にも、力は満ちているだろう
[Yaと返る問い掛けに、城主は其れ以外の答えを返す]
私のローズ
お前が彼を迎え入れてみるか?
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>>267
――……
[聴いたことはある。 吸血鬼に血を吸われているとき、 人には甘美なる悦びに浸るという。
それが、本当ならば、 それを抗うのは、本当に………。
さきほどのサイモンたる男の悦楽で止まった表情を思い出す。 眼が瞬時ぼうっとして、はっとわれに返る。]
(280) 2010/06/21(Mon) 21時半頃
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――……申し訳ありません。
[きっと、人として、彼のとても柔らかい、ところを抉った感じがした。 熱い吐息に、眼を細める。]
けど、君が望むなら、それは、薬でどうにかなるかもしれません。
[そう、人の快楽を生むものも、薬にはあるのだ。 多様はできぬが……。]
(281) 2010/06/21(Mon) 21時半頃
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―廊下―
怖い……です。 怖くて、怖くて、仕方ないです。 私たちのことを、家畜と同程度にしか考えていない存在が、今、すぐ近くに存在しているんですよ……?
[おとぎ話に出てくる吸血鬼を思い浮かべる。 それらは皆、一様に残虐で、人の命など歯牙にもかけない存在ではなかったか。 今までのやり取りから、青年もこの状況に不満をいだいていると感じ、覚悟を決めて切り出す。]
私は、ここから逃げ出したいと、思っています。 あなたも……協力していただけませんか……?
(282) 2010/06/21(Mon) 21時半頃
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それよりもどうですか?
[用意されたワインのグラスは一つ増え、それを赤毛の男の目の前に。]
(283) 2010/06/21(Mon) 21時半頃
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― 御堂 ―
Gloria in excelsis deo. Et in terra pax hominibus bonae voluntatis
[単純で、力強い旋律に載せて 神の栄光を讃える歌を、無心に歌う。
幼い頃からミサで慣れ親しんだその歌は、 自然に身体に満ち、溢れ、喜びを載せて高く響いた。]
(284) 2010/06/21(Mon) 21時半頃
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>>278 [ 男の眉がひくりと動き目元に力が込められる。 横目で詩人をみやるが、片目のしかも弱った視力では 顔面の表情筋に覆われた心情など見通すことも出来ず]
……へーえ。 [語尾をあげるような返しをした。]
それとは別にしても、 あんたの言う「詩人であること」ってのは 守らなきゃいけないもんなのか?
[そんなに守る価値のあるものなのか、そう意味を含めて尋ねる。 少し刺のある言い方だと思われても別に構わず]
(285) 2010/06/21(Mon) 21時半頃
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薬屋 サイラスは、どこからか、唄が聴こえる・・・・・・。
2010/06/21(Mon) 21時半頃
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[イアンは部屋には居ないようだった。探すといっても広い城内で一人を探すのはなかなか困難で]
……はあ……ここ、何処だろう。
[見たことの無い場所にたどり着いていた――つまるところ”迷子”である。]
とりあえず、近くの部屋を覗いてみて……
[扉を押してみれば鍵はかかっていないようで。キィ、ときしみひらいた隙間から覗けば其処は書庫のようだ]
……わ、凄い数……
(286) 2010/06/21(Mon) 21時半頃
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>>283 「タダ酒ならありがたく」 [何度も使ってきた台詞を口に、グラスを受け取り 軽く上にあげて乾杯の仕草。
彼の言う詩人であること、つまり「自由な心の」詩人であることは 遵守すべきものなのか。]
(287) 2010/06/21(Mon) 21時半頃
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――……。
[白薔薇ことセシルには微笑んでいて欲しい。
そう思っているからこそ兄の思惑が理解出来ない。
メアリーの願いに対してもそれは同じ事で]
私が……彼を迎え入れる……?
[思いがけぬ提案に翡翠が瞬く]
私に上手く出来るかしら……
それに、お兄様の渇き、癒す者は他に誰か……
[兄の渇きを案じる聲がか細く響く]
良家の娘 グロリアは、花売り メアリーの一族には関心を持たないままだった。
2010/06/21(Mon) 21時半頃
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―廊下―
そうですね。 彼等は……捕食者だ。それは間違いない。
[躊躇いにしばし瞳を伏せるが、意を決して女に告げた]
俺は――見ました。 吸血鬼に、一人、人が殺される所を。甘美な死かもしれないが、……死は、死です。 あの人の命は、永遠に戻ってこない。
[逃げたい。 告げる女に、頷く。――少なくとも、他人の死をこれ以上見る気にはなれなかった]
もちろん、喜んで。 あの城主が……あなたや俺の知人の死を喜ぶ場面なんて、想像したくもありませんからね。
(288) 2010/06/21(Mon) 21時半頃
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良家の娘 グロリアは、薬屋 サイラスと共に入った合わせ鏡の部屋の事を脈絡無くフト思い出す。
2010/06/21(Mon) 21時半頃
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ひうっ!
[冷たい指先が頬に触れ、小さく悲鳴が零れた。
顔を覗き込み、甚振るように落とされる言葉と 白い胸元から立ち上がる、淫らがましい匂いに頭がじんと痺れる]
化粧なんか……。わた、し、
[震える口から零れる言葉は意味をなさない。
怖いこと。痛いこと。辛いこと。悲しいこと。 抗う術など持たないちっぽけな少女は、ただ目を瞑り、災厄が通り過ぎるのをじっと待つことしかできない]
(289) 2010/06/21(Mon) 21時半頃
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良家の娘 グロリアは、長老の孫 マーゴの父親の評判の悪さなどを街で聞いていた気がした。
2010/06/21(Mon) 21時半頃
[白薔薇の忠誠心が見たい
メアリーの苦しむ顔が見たい
其れがつかの間、城主の空虚な胸を埋めるのだ]
そう、お前が彼を――
心配はいらない、幾度もお前には私が力を与えている
人を眷属に変えるくらい、出来るはず
[ローズマリーの、城主を案じる言葉に
薄く笑み混じる吐息が漏れる]
私の渇きは、彼等の苦悩で満たされる。
喉の渇きは、ワインでも流し込めば良い。
[食堂にでも向かおうか、そんな事を思いながら]
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[赤毛の男の声に、再び目を閉じる。 そして少し考えて、目を開けると、言葉を紡ぐ。]
ええ、私は詩人で無ければいけないのです。 汚濁から、一番離れた清廉された世界で―…‥ ――言葉を紡ぎ、この世界の美しさを伝える為に。
[古い楔は、男の、詩人の心に突き刺さり、苛んでいたが、それを抑える様に静かな声で答える。 しかしその押さえを抜ける様に、グラスの薔薇色の液体の表面はさざ波を作り出していた。]
(290) 2010/06/21(Mon) 21時半頃
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靴磨き トニーは、良家の娘 グロリアが銃声の元であることは知らない.
2010/06/21(Mon) 21時半頃
靴磨き トニーは、良家の娘 グロリアに話の続きを促した。
2010/06/21(Mon) 22時頃
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―廊下―
――……っ。
[青年の告げた言葉にめまいを覚える。]
で、では、あの悲鳴は、もしかして……。
[城内に響いた女性の悲鳴。 あれは、吸血鬼に殺された人の……? 一瞬、生きながらに吸血鬼に血を吸われる光景を想像し、振り払うように頭を振った。 続く、頷きとともに紡がれる青年の言葉に、顔を明るくし。]
ありがとう、ございます。
[協力を引き受けてくれる青年に頭を下げる。]
(291) 2010/06/21(Mon) 22時頃
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[兄の言葉が心強い]
――…分かりました。
お兄様の言う通りに致しましょう。
[ゆるく礼をするのは兄に対する敬意。
捕食者たる女は標的へと気をめぐらせた]
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>>281 [一瞬の艶めかしさは、潤んだ眸に余韻を残して消える。 述べられた謝罪の言葉に向ける眼差し、それは白薔薇の棘に他ならず]
―――…罪を犯した心を救える薬があるとでも?
[そう、揺さぶられ抉られて、 男より述べられた言葉は酷く傲慢に聞こえた。 抉られた心からじわり、侵食する薄ぐらい闇]
どのみち、あなたは――……今宵、
――……今宵が過ぎれば、 あなたは私に救いをもたらす者になるかも、しれませんね。
[耳朶を掠める囁きに篭るかすかな熱、 白薔薇の香を残して、その身は離れた]
(292) 2010/06/21(Mon) 22時頃
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[肩にギザームを担いで歩く姿は不良死神にも似ていた。 闊達なその足取りが、不意に踏みとどまる。 肌を走る黒い稲妻――近くに魔物がいる。]
…逢い引き中か口説いてんのか…邪魔しちまいそうだなぁ。
[皮肉った唇が、この先に浴室のあるのに思い至り、真一文字に引かれた。 冷たい床石に跳ね返った小さな悲鳴が耳に届く。]
――脱がす手間、惜しみやがったかよ。
[猛然と駆け出す。]
(293) 2010/06/21(Mon) 22時頃
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―廊下― [>>289震え上がった少女の瞳が硬く閉じる。 城主は肩を竦め、緩く首を振った。 流れる銀糸からは夜のにおい]
……安堵せよ、いたいけな子供 そなたを今此処で喰らうほど餓えてはいない。
[優しい言葉を一度送り]
もう少し、私に耐性がついたなら 其の瞳に怯え以外の色が灯るその時には ――…望むままに喰らってやろう。
[次いでその色香混じる声音のままで、残酷な台詞を向ける。 返答を待たず、城主はその足で食堂へ向かった]
(294) 2010/06/21(Mon) 22時頃
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[足音がする。 歩みを止め、振り返った]
(295) 2010/06/21(Mon) 22時頃
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[血の循環により力が満ちているのを感じる。 抑えきれぬ色香は城主の纏う色にも似て――]
――…さて、上手くいくかしら。 間違って殺してしまわなければ良いけれど。
[これから為すべきことの決まっている女は 自らが為そうとする事を他人事のように言って。
広間の窓にあった女の姿がす、と消える。 女が次に姿を現したのは セシルとサイラスが話す空き部屋――]
(296) 2010/06/21(Mon) 22時頃
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― 御堂 ―
[ひとしきり歌い終えて。 何一つかかげられていない祭壇の前に、膝をつく。]
――主よ。 わたくしを、あのお方と巡り合わせていただいて ありがとうございます。
あのお方のおかげで、 わたくしはお勤めを果たす事が出来ます。
サイラス様と、城にいる皆様と、街の人達に どうぞ、平安をお与えください。
[常にそうしていたように、祈りの言葉を捧げた。]
(297) 2010/06/21(Mon) 22時頃
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―廊下―
悲鳴…… ああ――ええ。そうですね。悲鳴はあがりました。
[悲鳴の主が死んだわけではないのだが。 他人の個人的な事情はあまり吹聴するものでもないだろう。曖昧に笑って言葉を濁した。 顔を明るくする彼女。頭を下げられて、少し慌てた]
……ただ、どうすればいいのかは俺にも分からないんですけれど。 城主を何とかしない以上、霧は……晴れないんだろうし……
あ、名乗り遅れました。 俺はイアンと申します。街の新聞社の者です。イアン・ハルバート。
(298) 2010/06/21(Mon) 22時頃
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信じている
私のローズ
[人を喰らうだけでなく
其の力を分け与えるようになれば、また
彼女は人から遠のいていく
暗い悦びを胸に、期待を込めて名を呼んだ]
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[廊下を折れ、状況を確認すれば、振り返る城主の長髪と、浴室の扉の傍らに座っているトーニャの姿。 ひとつ頷いてやり、城主に正対したまま歩を進める。]
――涙はおまえらの餌じゃなかろうに、泣かすなよ。
(299) 2010/06/21(Mon) 22時頃
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――…逢瀬の邪魔をしてしまったかしら。
[セシルとサイラスの二人を交互に眺め 悪びれる様子もなく悪戯な笑みを浮かべた]
セシルがそんな貌をするなんて…… 珍しいこと。
[女は白薔薇の棘よりも優しい香りを好む。 柳眉を顰め咎めるような眼差しを薬屋へと向けた]
(300) 2010/06/21(Mon) 22時頃
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>>290
わっかんねーなぁ。 多分俺にゃあ一生かかっても理解できなさそうだ。 自由でいるだとか、セイレンされた世界だとか―
[詩人の持つグラスの内でさざ波が生まれ、ぶつかり、消える。 手が震えているのかと詩人の表情を盗み見た。 それからまた顔をそらして]
でもよ、美しさだか何だかは理解すんぜ。 背中にそれを彫りこんだからな。 [にやにや笑いを張り付けてグラスに残る酒を一気に呷る。 手酌でもう一杯。 そして詩人の男に注いでやろうかと聞いてみる]
(301) 2010/06/21(Mon) 22時頃
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