276 ─五月、薔薇の木の下で。
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―東屋の中―
…………誰、……って、……ぁ。
[ 億劫な眼差しを向けた先、見つけたのは 友人の姿だ。 思わず目を見開いてから口を開いた>>7 ]
ベネット、もしかしてずっと探してくれてたの?
[ 彼の様子を見やれば瞳も丸みを帯びる。 いつもの申し訳なさそうな下がり眉。 歩み寄ろうとした足が止まったのは彼の言葉>>8 ]
(12) 2018/05/19(Sat) 01時頃
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えっ、と……、
[ 換気するのを忘れていた。 お陰で薔薇の香りは薄れているように感じられたけども その代わりなんと言い訳すれば良いのだろう。
普段真面目な優等生で通っている彼が 後始末しなかったせいです。 なんて言えるわけもなく。 ]
(13) 2018/05/19(Sat) 01時頃
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オスカーとは、話してただけだよ。
[ 中途半端に庇った結果、嘘ではなかったが 答えにならない答えを返した。 ]
でも別に、ベネットが気にすることじゃないから。 …………ちょっかいかけられただけ、っていうか。 いつもの、ほら。スキンシップ。
[ 結局纏まらない言葉は言い訳じみて長い。 その手にあるもの>>9を見れば 彼が何のためにここに来てくれたのかは明白で。 ]
(14) 2018/05/19(Sat) 01時頃
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ご、ごめん……。 君が心配するようなことは、してないから。 だから、……許して、くれる?
[ 結局困ったように謝罪した。 ちらりと覗く瞳の色は父に似ている。 緊張に一瞬だけ指が微かに跳ねた。 ]**
(15) 2018/05/19(Sat) 01時頃
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[ 時々パンを食べさせてくれる人>>1:191 ケヴィンとの初対面は今でもよく覚えている。 お腹が空きすぎていて、ラルフは偶然いなくて、そんな時に食べ物を恵んでくれた。
思わず「かみさま……?」と呼んだ事は覚えている。 強ち間違えていないと今でも思っている。 創造は神にしかできないのだし。
そんな彼がパンを持たせてくれたのだという。 ]
(39) 2018/05/19(Sat) 02時半頃
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調理室まで行ってくれたんでしょう。 ……ありがとう。 俺が行った時はヴェルツせんぱいと 何か話してたみたいだから。
[ 調理室に寄らなかった理由を述べながらも 葉巻に関して>>28は答えられない。 困ったように停止すれば距離が少しずつ埋められる>>29 扉は後ろにあるが突き飛ばそうとは思えず。 ]
(40) 2018/05/19(Sat) 02時半頃
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そんな、オスカーとは別に、何も……
[ ない。今度は言い切れない。 紫煙の名残に思い出したのはあの手>>1:233 背筋に痺れが走ってそれから黙り込む。 忘れたい記憶は羞恥を孕み、耳が赤らんだ。 ]
(41) 2018/05/19(Sat) 02時半頃
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なんでそんなに怒ってるの? ベネットには、関係……ないだろ。 なんだかおかしいよ、ベネット。
[ 分からず見下ろしながらも眉を下げた。 友人には知られたくない。 自分が触れられたように他者に触れたこと。 失望などされたくなかったのだから、 突き放して逃げる事しか考えられなかった。 ]**
(42) 2018/05/19(Sat) 02時半頃
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[ 狂わせたのは月光。
惑わせたのは薔薇の香り。
突き動かすのは、人の心。 ]
Each of you should use whatever
gift you have received to serve others,
as faithful stewards of God’s grace
in its various forms.
[ 子守唄のように読み、眠るケヴィンの肌に触れる。
百合の香りはなく、漂うのは薔薇の香。
なぞる指先は清いはずの無い≪穢れた≫悪魔の指。]
──── kevin、
"美しい子"
[ その声は、揺り籠で眠るその男の
何を揺り動かそうか。 ]
[ 首筋に、そっとそっと唇で触れ
甘い素肌を吸い上げれば
その肌には薔薇の花びらが落ちる。
おかげで少し、精を得る。
生を、得る。 ]
[ 狂ったような月明かり。
噎ぶような薔薇の香。
衝動に駆られる、人の子。 ]
≪それ≫が、キミの 紫陽花?
[ 『こっち見ろ、莫迦』と、謂いたい相手?
彼と彼の瞳は合っているように思う。 ]
ならば、もうあとは奪うだけ。
多少強引にだって、いいんだよ、今は。
───だって、手に入れたいんだろ?
[ どろどろと甘い、胸を焼くような
薔薇の匂いが、モリスを包み込む。 ]
[ 薔薇の荊蔦は沈む身体を捕らえ、
純白には程遠い"小麦"の膚を 柔く疵付ける。
馨る泥に全身を浸す様な 、
─── 甘美な快楽が、其処には 確かにあった。
"天使"の訓戒も、 "悪魔"の歌声も、
総てが甘やかに脳を掻き混ぜ、]
──── "善いものをくださるのですね"
──── "何時ものように 良い子にします。"
[ 夢見る呟きは、──もう低い"男"の声では違和感さえある
舌ったらずな響きをもって、
"誰もいない"部屋に ぷかり と 浮かぶ。
─── 揺り動かすのは過去の記憶。
清算されない純潔の罪だ。]
[ 薔薇の精が離れても、
夢の荊蔦は "誰か"の手を記憶のままに模倣し、
指先を捉え、 腰を撫で、
軈て、"穢れた"中心へ達する。
───あまい あまぁい 悲鳴は、
だれの耳にも 届かない*]
フェルゼは、イアンの深いところは何も知らない。
2018/05/19(Sat) 17時頃
フェルゼは、モリスのことだって同様に。だが二人ともきらいじゃない。
2018/05/19(Sat) 17時頃
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[ かつてモリスに「こわくないの」と問われた。>>0:331 あの時「なくなる方がこわい」と告げた。>>0:374 あの言葉に嘘も偽りもなかった。 自分自身が呑み込まれていく感覚。 こわいとは思う。
だがそれよりももっと怖いものがあった。 ]
(122) 2018/05/19(Sat) 22時半頃
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[ 俺は繋いだ絲が切れる方が怖かった。 ]
(123) 2018/05/19(Sat) 22時半頃
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[ 自分自身を齎すものすら曖昧だった。 だが、それすら道具として扱えるなら 絲を切らせないように弓を鳴らした。 これ以上自分自身を呪いたくなかったから 失って欲しくなかった。 自分勝手でエゴイストな感覚。 そんな汚濁を共有している間は楽だった。 慰めは優しく安寧を齎すが、 傷つけ合うナイフは背徳的な心地よさを覚える。
それでも美しいものに対する憧憬は消えない。 夜の海に浮かぶ月のように揺蕩えたのなら どんなに良かっただろう。 ]
(124) 2018/05/19(Sat) 22時半頃
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[ 綺麗なもの>>1:112に触れたところで、 綺麗になれるわけでもなかったのに。
触れた花はきれいで、 すべてを洗い流すようだった、から。 欲しいな、なんて。
思った罰がきっと、これなんだろう。 ]
(125) 2018/05/19(Sat) 22時半頃
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[ ベネットのらしくない態度>>113 動揺して足が竦む間に押し付けられた一本>>114に息が短く零れた。 反射的に受け取りながらも彼の告げた言葉>>115に目を見開く。 ]
なん、で……そんなこと、言うの。
[ また何か間違えたのだろうか。 明るい声色の癖に見える拒絶。 また失敗したのだろうか。 ぐるぐると回る思考。 また自分は彼から何かを奪ったのだろうか。 ]
(126) 2018/05/19(Sat) 22時半頃
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[ 謝らなくちゃ、 そう、思っていたのに唇は動く。 自分勝手に、どうしてか、 こんなに酷いことばかりを紡ぐ。 ]
ずっと、いっしょに音楽やるって 言ってたのに……なんで……やめるの。
[ 俯いてしまえばそのまま息を吐いた。 謝ってくれているのに、 いつも気遣ってくれる優しい友人を どうして責めるようなことを言ってしまうのだろう。 ]
(127) 2018/05/19(Sat) 22時半頃
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[ 切れた絲の結び方なんて、知らなかった。 ]*
(128) 2018/05/19(Sat) 22時半頃
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[ 理由は分かっている。 尋ねたことを忘れてはいない。 ただ、問わずにいられなかっただけ。 深いため息>>131 太陽の昇らない空はうす暗い。
扉の隙間から混ざるのは薔薇の――…… ひとの心を誘う悪魔の囁き。
その時、確かに時が止まった>>132 ]
――…………え?
[ 彼の、言葉>>133に。 ]
(141) 2018/05/19(Sat) 23時半頃
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[ 存在だけを記されたきょうだい。 どちらが兄か弟かもあやふやな一人。 それでも勘違いであればいいと。 差出人の記された手紙>>1:304 ただ単にファミリーネームが同じだけで あればいいと望んでいたのに。 ]
…………嘘だ。
[ 掠れ揺れる声が静かな東屋の中で響く。 自分から引き留めた癖に今度は逃げるよう 足は後ろに引く。 背中に壁の感覚。 ]
(142) 2018/05/19(Sat) 23時半頃
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君が、……俺の、弟だなんて、そんなの、 そんなの、……信じない。
[ 瞳が揺れてそれから唇を引き結んだ。 だってそれが真実ならどうこの罪を贖えば――許される? ]*
(143) 2018/05/19(Sat) 23時半頃
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