人狼議事


255 【RP村】―汝、贖物を差し出し給え―

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ウェーズリー! 今日がお前の命日だ!




 ―― まあ、でっち上げだけどさ。 
 


[事実は異なる。
 ラルフに会わないために、一刻も早くこの場を離れなくてはならないのだ。

 勿論、自分が捕まるわけにもいかない。
 脈々と続いてきた祖の血をここで途絶えさせるわけにはいかない。]


  結局、君たちがどう喚いたところで、結末は変わらないよ。



  言ったでしょう。



 ―― 俺に躊躇う理由なんて無いんだよ。
 


 ―  ―


[生を受けたのは、今暮らす街よりもずっと都会の、一軒家だった。
 青い瞳は母から。プラチナブロンドは父から。
 それぞれの特徴を引き継いで生まれたこどもを、両親はたいそう愛した。

 ショク。記憶を喰らう魔物。
 それが御伽噺などではなく、現実であると、物心つく頃には知っていた。

 己がショクであること。
 生きる為に、他人が育てた大事な"記憶"を、食べなくてはならないことも。

 エサには困ったことがない。
 ミスをした使用人。時折出入りする業者。
 足がつかないよう、細心の注意を払って、エサを選んだ。
 祖の時代からずっと、そこに根を下ろす純血の一家は、下世話な噂話の中にも、たった一度たりとてショクを疑われたことなどなかった]


[親元を離れると決めたのは、特に理由があったわけでもない。
 
 それはまだ、ティーンエイジャーだった頃の話だ。
 故郷を離れ、馬車と船を乗り継いで、遠く離れた土地に移った。
 覚えている。
 まだ少年と青年の間を彷徨うブローリンを拾い愛でたのは、歳を重ねてなおうつくしい、とある女性だった。

 ――夫に先立たれ、子供は流行病で亡くした。
 そう語る目尻には深い寂寥と、変わらぬ愛があった。]


 『きれいな髪と眼ね、うちのことは大違いだわ。』


[そうやって髪を撫でる指先がやさしかったことも、覚えている。]




[きっと、その記憶は、おいしいんだろうな、と思った。]

 


[真っ赤に染まった月の下で、"彼女"が倒れている。
 実家に居た頃は、やり過ごせていた極限まで飢える日。

 食事の頻度が落ちたその時は、やり過ごすことも出来ず、そばにいた彼女に手をかけた。

 ひとつ、ふたつ。きっとこれは、彼女が大事にしていた、"夫"と"こども"。
 食事を終えた恍惚と、多幸感と、自分の手で"狩り"をする悦びと、様々な感情を引き連れて眠る。

 ――目を覚ましたとき、変わらず彼女はそこに居た。]


 『あなたが好きだったのはこの青いマグだったわね。この緑のマグは誰のかしら?』

 さあ、お客さん用じゃない?

 『そうだったかしら……大事なものだった気がするんだけど』

[ひとつ。]


 『ブローリン、この靴、誰のものか知らない?あなたには小さすぎるわよね』


 知らない。
 ぼくのじゃないよ。

 『そうよね……誰のかしら……』


[ふたつ。]



 『……ブローリン、わたし、何か忘れてる気がするの』


 ――そう?


 『大事なことを……とても大事なことを、忘れてしまったような……』


["見たことのない"持ち物。
 "あるはずのない"服。

 "誰かわからない"写真。

 そのどれもに、彼女は心を壊して――そして、居なくなってしまった。]


[少年は知る。
 記憶を喪った人間に、してはならないことは忘却の肯定だ。

 知っているはず、忘れた気がする。
 それを自覚すればするほど、喪失感に苛まれるのだと。
 行き着く先は、昏く深い、終わりの闇の中だと。

 人のこころは斯くも脆いのだ]




[一度食事を摂ったら、二度と会わないと決めたのは、其の頃だ。]
 


[それからは。
 場所を変え、相手を変え、あちこちを渡り歩いた。

 近づいてくる女性の、"いちばん大事な記憶"に、自分が成る。
 そうして、自分を忘れさせてから去る――

 卑怯で安全な手段を、取りながら。]


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