人狼議事


134 Dum fata sinunt vivite laeti.

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 ――僕は人狼だから。
 嘘つきの獣だから。

 ミナカタ、キミは正しいよ。

[獣の性もつ青年は密やかに紡ぐ。]


 因果応報だ。
 恨むなんてそんな面倒な事、しない。

[認めるような言葉は表には出さない。
どちらかといえば、出せない、と言った方が正しい。]


 こんな中途半端な姿だから、届かない。
 ――…大人になれたら、
 言いたいことあったんだけど。

[背に受けた傷。
不利な状況はもう覆らないだろう。
シャツは血に染まるのか濡れた感触がある。]

 かなわないな。

[何に対してか、そんな思考が漏れる。]


 死にたく、ない、なぁ……。

[朦朧とする意識の中、聲が漏れて]


[ぽたり、ぽたりと降るあたたかな雨。]

 ………。

[混濁する意識の中、彼女の呼び掛けが微か届いた。]

 ジェニファー。
 泣かないで。

[泣かせたいわけじゃなかった。
守りたい人だった。
彼女にとってはまだ子供と思えただろう自分。
届かぬはずの高嶺の花抱かれた青年は己の手に意識を向ける。
彼女の涙を拭おうと右手に力をこめるが、動く気配なく。

薄れゆく意識の中。
闇しか映さぬ瞼にさいご思い描いたのは、その花の笑み**]


[壁に凭れる女性の隣には腰掛ける青年の姿がある。
壁に背を預け天を仰ぐ双眸は銀灰色。
柔らかな髪は赤みがかった癖っ毛。
器を失い魂だけの脆き存在は本来あるべき年相応の大人びた相貌。
背丈も隣に居る女性より、幾分高くあるが
その姿は生者に見えるはずもない。]

 ――…こんな所で何してるのさ。

[掛ける声も僅かに低く落ち着いたものであるが
彼女の耳には届かぬのだろう反応はなく]

 夜風で身体を冷やしてしまうよ。

[案じるような響きは夜風にのり彼女の耳朶を掠める。]

 ジェニファー。

[少しだけ年上の彼女に抱いた想いは言葉にせぬまま名を呼んで。
夜が明けるその時まで見守るように傍に在る**]


[子供の悪戯のような、そんな誘い。
窓を開けたヤニクが人狼の仕業と察していようとは知れない。
分かっていてそうするなんて思いもよらなかったから
思惑通り事が運んだ事に安堵していたのを覚えている。

祭りの設営に勤しんでいた皆を纏めていた一人。
隣村の者でありながら其処に居るのが当然のように
村に馴染んでみえた年上の男の思いも知らぬまま
獣は彼の首に喰らいつく。]

 ヤニク。

[獲物の名を刻むように獣は名を紡ぐ。
大人である彼が羨ましかった。
彼のように働き手として期待される存在になりたかった。
無理が祟り虚弱であった青年には眩しく見えていた。]


 キミを食べればキミと同じようになれるかな。

[なれたとしてもこの村には居られない。
十年後に祭りの準備を率先して行う己を想像する。
実現するはずのない夢は命の音に掻き消えた。]

 ――――。

[異国の肌に異国の血。
その味に違いは知れない。
これまで喰らった獲物と同じく甘く馨しい血が喉を潤す。]

       …………。

[事切れた彼の表情を獣は知らない。
己は生きる為に彼の命奪った事を刻むのみ。]


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