162 絶望と後悔と懺悔と
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覚えておこうか。私の為に奉げられた祈りとやらを。
[贈るのは娘へ。
寄り添うと言った祈りは何に寄り添うのか]
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死にに行くんじゃない。 戦いに行くんだよ。
[ねぇ、リカルダ。
共に行く意志を示してくれたリカルダの手を 再度握り直し、明之進を見る。]
明ちゃん、 始祖が生きている限り鬼は増え続ける。
後なんてない。 帝都に明日は来ないんだよ。
[鬼にされた人の心に巣食う金色の影を見る。
払えるだろうか。 強大で深遠なその影を。]
(1) 2014/02/21(Fri) 00時頃
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[――声なき思いが、咆哮に圧し潰されながら
それでも疾駆するような夜明けだ。
血を吐くように轟くものが何なのか、明之進は知らない。
ただ、苦しい――と思った。]
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──────うん。
[曙光を背負い、絢矢は頷いた。
言えぬ言葉の代わりに、 唯、頷いた。]
(5) 2014/02/21(Fri) 00時半頃
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[夜明けが無慈悲に照らし出すのは 基地に染み込んだ死の色彩。
無数の痣と疵とを纏った己の姿が 優しい家族の足をまた止めてしまう前に]
行こう──。
[絢矢はその背を押すように声を掛けた。]
(6) 2014/02/21(Fri) 01時頃
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5年前の約束では、お前は殺さぬ約束だったが。
[見下ろすサミュエルの死体。
赤の色に感情が浮かんでいるのかどうか、見る者はいない]
周が鬼どころか獣になったのでな。
お前も獣になると面倒だ。
折角だ。
私の眷属でありながら、反旗を翻そうと画策した初めての鬼だ。
褒美にお前をくれてやる。
[ホリーと同様、駒の様に掛けた声はもう届かないだろうが]
理依も死んだ。
涼平も直円も…逢えたらお前達は何を思うのだろうな。
[死のその後に何があるか知らぬが、
再会の可能性があったとして、どんな想いが交差するのか
聞く機会があれば聞いてみたいと背に投げた]
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──キャロも、行くの?
[円を背負ったまま、 付いてくる意志を崩さないキャロを振り返り]
キャロ──、 辛いだろうけど、円は置いて行って。
背負ったままじゃ戦えない。
[一つだけ、それだけは伝えるけれど どうしても連れて行くと言えば頷くしかない。
それぞれに覚悟があり、 己がそれを譲らない以上、強要は出来ない。]
(9) 2014/02/21(Fri) 01時頃
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アヤワスカは、明之進に同意するように、言った。
2014/02/21(Fri) 01時頃
………絢矢の、ことを?
[その“お願い”はさっき言ってたこと――「守ってあげて」とはまた違う……、気がする。
守ってもどうしようもなくなった時、それって―――]
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[ゆく先に、曙光を浴びて輝く金の 美しい髪の鬼を眼にすれば、 そこから目を逸らさぬまま、絢矢はリカルダに囁いた。]
──覚えておいて。
どんなになっても、 ボクは──ボクのままだから。
(13) 2014/02/21(Fri) 01時頃
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だから、お願い。
…──今から戦うボクを見ても、怖がらないで。
[声は小さく、 聞こえたのはきっと、リカルダだけ。]
(15) 2014/02/21(Fri) 01時頃
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[零瑠に返していない問いを、
残る彼の家族と対峙しながら返す]
家畜は必要だ。餌としても私の愉しみとしても。
だから管理せねばならぬ。
管理する為には、歯向かう人間は粛清しなければならない。
私の目の前に、柊とリカルドがいる。
そして彼らに連れられて、嘗ての家族もいる。
だがどれも私と相容れそうになさそうだ。
[少なくとも彼らに取る行動は1つだけ]
零瑠、結局お前だけが残りそうだ。
[真弓が託した退魔の剣、聖水銀の事は知らず。
全力で潰してやろうと目の前の鬼に笑んで]
何か知らぬが、試してやろう。
[零瑠が美味しいと言ったものが何かは知らぬが
守護隊が全滅した後なら、毒すら美味いと思うだろう]
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人と同じく、鬼の魂が巡るのだとしても、 今までオマエが踏み躙った魂は、 オマエの輪廻を許さない。
[>>14明之進への言葉を、打ち消すように声を上げる。
かの鬼の足元に サミュエルと真弓の躰が見えるだろうか。
見えたなら、一度唇を閉ざし 朝日を弾いて輝く刃に貫かれた二人を 菫色に焼き付けた。]
(19) 2014/02/21(Fri) 01時半頃
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――ただ、望みだけを答えるのだとしたら、
[夜明けが来た。
光が雪を解き、冬枯れが終わり、]
その時は消えたいと思います。
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[曙光を受けて、開いた菫色は東雲に染まる。
美しい金糸に彩られた 彫像のような姿が双眸に確かな像を結ぶ。
同時に絢矢は、地を蹴った。]
(21) 2014/02/21(Fri) 01時半頃
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[思うことはもうひとつ。
朝焼けの下確かに聞こえた、ニンゲンでもなく吸血鬼でもない、何者かの意志――叫び声。
もしその声の主が辿り着いた先に僕もいられたなら、
また、手を握ってあげたいな――って**]
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[始祖が、兄妹と言葉を交わすことすら是としない。
始祖の全てを断たんと、 一の矢は奔る。
鬼の正面目掛けて限りなく重心を低く保って近付き 急減速の後急加速して距離を詰め、 無手故にリーチの短い相手へと 小太刀がギリギリ届く距離でその脇を駆け抜ける。
漆黒の切先が狙うのは──先ずはその左大腿。**]
(26) 2014/02/21(Fri) 02時頃
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[>>29計算し尽くした距離さえ容易く乗り越えて 温度のない手が手首に絡む。
膚に圧を感じた瞬間後ろに跳んでいれば 振り解けたかもしれない手に 絢矢は敢えて身を委ねた。
爪先が地を離れ、遠心力が肩に掛かる。
みしり──骨の軋みを聞きながら、絢矢は笑う。 笑って二の太刀を己の手首に絡む指へと揮った。]
(30) 2014/02/21(Fri) 10時頃
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『管理』と言うと、途端に反発するものです。難しいものですね。
『自由』をと言えば、途端に彼等の行動理由が消え失せます。だから、というのもあるのかも知れませんが、なかなか信じてはくれず……。
お怪我はありませんか?
真弓の持つ剣は、ホリー様の……ホリーの剣。御身を傷付け兼ねない代物ですから。
え……明之進と、リッキィが?
[鬼を、刺す為かと咄嗟に思った。
指すのなら、己の中の鬼を刺せば良いのに。
リカルドは分からない。彼女なら、この内に穏やかに振る雨に、気付いてくれるかもと思ったが。]
嘗ての『家族』……だと、しても。
………あなたに歯向かう人に、鬼に、
――すべてに、粛清を。
[何度目かの覚悟と共に微笑む。]
……俺だけは、お傍に。
[試してくれるのだと、その光景を思い浮かべ。柔らかい笑みに変わる。]
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ぁ、
[>>31自分の骨の砕ける音を聞いた。
呻くような幽かな声が漏れ──]
は、ははっ
[しかしそれは、笑い声。
始祖の小指から飛び散った冷たい血が頬を彩る。 乾いて黒ずんだ血の張り付いた頬に 鮮やかな紅を散らし、絢矢は目を細める。
近付く地面。 叩きつけられれば潰れかねない勢いに さすがに頭部を庇って左腕を差し挟んだ。]
(41) 2014/02/21(Fri) 20時半頃
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[零瑠の聲が届く。
何処までも共にと、駆ける気配と覚悟に]
何がそうさせるのだろうな。
理依も真弓も周も抗ったと言うのに。
[ひた向きにただ付き添おうとする鬼などいなかった。
血の絆に縛られているとは言え、不可思議な事だらけだと。
受けた忠告には応えず、ただ笑う**]
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[衝撃の訪れより早く、視界に飛び込む赤。
この場の誰よりも小柄な躰が、 人を超えた速度で脇差しを揮う。
手首に掛かる力が失せると 左腕で体重を支え、反動をつけて躰を後方へ飛ばした。
『菖蒲』はまだ右手の中に。 辛うじて取り落とさずにはいるけれど、 握ろうと籠めた力は指まで伝わらず──]
ふふ、
[唇に掛かった始祖の血を舐め取って笑う。]
(42) 2014/02/21(Fri) 20時半頃
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[最初の斬り合いは小指と右手の交換になった。
鬼達の王──“始祖”相手に 成果としては十分に過ぎる。
さぁ──次は何を賭けようか。
紅く色付いた唇が深い弧を描く。]
(43) 2014/02/21(Fri) 21時頃
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[始祖のリカルダへの攻撃に 明之進が反応すれば 絢矢は距離を詰めずに留まる。
動かない右手とその先にある菖蒲へと 視線は一度降りて。]
(44) 2014/02/21(Fri) 21時半頃
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[明之進がリカルダを始祖から引き離すのを見て 油断なく始祖の動きを見ながら隣へ走ると]
使って、リッキィ。
[動かぬ右手の『菖蒲』を左手で掴み、 リカルダの目の前へ黒の刃を差し出した。]
(50) 2014/02/21(Fri) 22時半頃
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[主以外が揮う対吸血鬼用武器は 主が揮った時に比べ切れ味は遥かに劣る。
それでも唯の脇差しよりは ──動かない右の掌中にあるよりは、きっとまし。]
銘は『菖蒲』。 母殺しの───ボクの、諱(いみな)だ。
[リカルダが小太刀を受け取れば ハッキリと刀の銘を──己の真名を告げ、 光を吸い込むような薄い刃を見て、また笑った。]
(54) 2014/02/21(Fri) 23時頃
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[刀を抜いた後の右手は 手首から先が力なくだらりと垂れて、 尖った骨の白い断面が皮膚を突き破って覗いている。
にも関わらず──菫色は熱を帯びて潤み、 頬も紅を叩いたように赤い。
遠く聞こえる爆音に、背筋がぞくりと震えた。]
(57) 2014/02/21(Fri) 23時頃
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