255 【RP村】―汝、贖物を差し出し給え―
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……そっか。
[>>0片肘をテーブルについて彼女の方へ顔を傾けながら、落ちたことばの一つ一つに耳を傾ける。 実際に悲劇として体感した彼女を前にしても。
まあ、よくあることだな。と、思うのは捕食者の性か。]
僕は――そうだねえ、故郷に帰れば、両親が居るよ。 大事な人は……どうかな。
居るけど、もう会えないからね。
(2) Noah 2016/10/13(Thu) 01時半頃
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[伸びてくる手を振り払うことはしなかった。 いつからか前髪の奥に隠すことの多くなった瞳を、褒められ慣れているとはいえ、母の色だ。嬉しくない訳がない。]
母親譲りでね。
――そうだねぇ、 行けるといいね?
[緩く細めた蒼は、静かに魔の色を湛える。 ――目を逸らすことを許さない捕食者の瞳は、それでも笑みを崩さないまま。]
君の忘れたくないもの、はそれかな。
[ なら、それを貰おうか。 ]
(3) Noah 2016/10/13(Thu) 01時半頃
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そうだねえ。 殴られる覚悟しとかなきゃ。
[嘯く声音も常のまま。 その手が祈りの形を作るのを視界の端において、>>4
それでも嗤っていた。]
(10) Noah 2016/10/13(Thu) 03時頃
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[やがて満たされる恍惚の至福と共に、その身は深い眠りの中へといざなわれる。 力を失った身をテーブルに伏せさせてから、立ち上がった。
自室の扉を開いて、片足を掌で叩いて相棒を呼ぶ。]
ジル。 ジルエット、"帰るよ"。
[ずっとひとりぼっちで退屈だった小猿は意気揚々と主人の肩に駆け上がると、せっせと髪を繕う。 どこにいってたの。ぼくはこんなにひまだった。そう、言い募るように。]
(11) Noah 2016/10/13(Thu) 03時頃
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[持ち込んだ荷物など、大して存在しない。 与えられた招待状と名前の記された封筒だけは、燃やして捨てた。
唐突に響く鐘の音>>#0が鳴り響いたのは、最後の晩餐を終えた後。 ――残された彼女も、逃がすつもりは無かったが……、鐘の音に怯える小猿を宥めて、口元には穏やかな微笑が浮かんだ。]
(12) Noah 2016/10/13(Thu) 03時頃
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……終わり、ってことかな。
なら、もう、あれはいいや。
[さあ、帰ろう。
僕たちのうちに。]
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[地下があることなど知る由もなく、厚い鉛の玄関扉の前に立つ。 手をかければ、容易く開いた扉を潜る。
振り返ることは、しなかった。 留まる理由はない。
逃げる理由は、あるとしても。]
(13) Noah 2016/10/13(Thu) 03時頃
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[扉を開いた先の空は赤みを増している。 そこに待機していた組織の人間が用意した移動手段には手を付けないまま、獣道を下って屋敷を離れた。
ペラジーに手をかけ、スザンナを見逃す選択肢を選んだ以上、長い滞在は身を滅ぼすだけだ。 完全に――連中が手を引いたとも、限らない。
そうして、日が完全に暮れきる前には、懐かしい山小屋の扉の前に辿りついた。]
(14) Noah 2016/10/13(Thu) 04時半頃
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[部屋の隅にある箱から、林檎をひとつ拾い上げて、小猿が食べやすい大きさに切る。 そのうちのひとかけを口に突っ込んでから、小猿に差し出した。
ようやくまともな食事にありつけたジルエットは尾を揺らしながら、小皿の上の林檎を頬張っている。 布巾で手を拭いて、机へと向かった。
ペンを取り、さらさらと遊び線を刻んで、さあ、何を伝えよう。]
(15) Noah 2016/10/13(Thu) 04時半頃
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[確信があった。 たとえどれだけの時間が経ったとしても。 必ず、あいつはここを訪れる。>>3:96]
忘れてくれればいいのに。
[そう、忘れてくれればよかったのに。 或いは、選んで持ち去ることが出来るなら、良かったのに。
倒れ込む前の目が、>>4:+8すべてを裏付けている気がした。]
(16) Noah 2016/10/13(Thu) 04時半頃
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……馬鹿野郎
[一番でなかったと卑屈で居るつもりはない。 そうじゃない。
大樹の根と枝だ。 きっと彼にとって、ブローリンは羽休めの枝だった。 失われて崩折れた大樹そのものが、きっと、彼の"根幹"だったのだ。
根が崩れ消え去ったとしても、折れた枝はそこにある。 ――ずっと。]
(17) Noah 2016/10/13(Thu) 04時半頃
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[暫くの時が経ってから、こつ、と新しい紙にペン先を置いた。**]
(18) Noah 2016/10/13(Thu) 04時半頃
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―山小屋―
[室内には、小猿が一匹佇んでいる。]
" ジル。ジルエット。 いいかい、お留守番だよ。 "
[開け放たれた窓。 箱の中にはたくさんの果物。
小猿は、ただ、待っていた。]
(35) Noah 2016/10/13(Thu) 23時半頃
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[おるすばんだよ。 やさしいこえで、かいぬしがそういいました。
ぼくはちゃんとよいこでまっています。 たべものはある。たくさんある。
いつものぼったらおこられたまどは、あいている。 でていくことだってできる。
でも、ぼくは、ちゃんと、いいつけをまもります。
だれだい? サルはしつけができないなんていったおばかさんは? ぼくはこんなにかしこいサルさ。]
(36) Noah 2016/10/13(Thu) 23時半頃
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[でもちょっと、たいくつだな。 いちにんまえのオスだから、ちゃんとやくそくはまもるけど。
おこられないから、ベッドのうえであそんじゃおう。
ほんだなにだってのぼっちゃおう。
つくえのうえのかみも、やぶいちゃおう。
おなかすいたから、りんごたべちゃおう。
ねむいから、ねよう。]
(37) Noah 2016/10/13(Thu) 23時半頃
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[ ブローリンが出ていってから、なんかいおひさまがでたんだっけ。 ]
[ ぼくはちゃんと、やくそくをまもる。 いいこで、おるすばんしてるよ。
ちょっといたずらもしたけど、いいよね ]
(38) Noah 2016/10/14(Fri) 00時頃
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[ ―― でも、ちょっと、]
(39) Noah 2016/10/14(Fri) 00時頃
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[ベッドの上で丸くなる小猿の首輪には、一通の手紙が挟まれている。
――この手紙を読む、誰かさんへ。
そんな書き出しから始まる、手紙が。]
(40) Noah 2016/10/14(Fri) 00時頃
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――この手紙を読む、誰かさんへ。
どうしてここを訪れたんだい?暇つぶし?たまたま?
どちらにせよ、そこに小猿がいたなら、彼の引取主になってくれないか?
彼の呼び名はあるけれど、君が新しくつけるといい。
二枚目に、普段僕が彼と接する時に気をつけていたことをまとめておいたよ。
見つけたからには、彼を見捨てないであげてほしいな。
二度捨てられるなんて可哀想だろ?
連れていきたかった。本当はね。
この先、彼を連れて行くことは出来ない。
僕は総てをゼロにしなくてはならない。
記憶を消すことが出来ないなら、思い出は置いていかなくては。
そうだね、たとえそれで、誰かのこころを苛むとしても。
君がもし、ここに僕を探しにきた誰かさんなら。
忘れてほしい。
君はどこへだってゆける。
だからこそ、忘れるべきだ。
何をかって? そんなの、君が一番わかってるんじゃないかい?
どうせ、僕の要求なんて聞きやしないことも、知ってるよ。
願うだけはタダだろ? 神様だって祈りゃ天啓をくれるんだ。
君に全く心当たりがないなら――……
そうだね、そのままでいるべきだ。
僕が何者かなんて、君は知るべきでないし、探すべきでもない。
そろそろ筆を置こう。
大好きな友人だった君に愛をこめて。
――御休み、良い夢を。
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[手紙に署名の類は一切なく、文章はそこで終わっている。 室内には、何もかもが残されたままだ。
小猿がよく遊んでいた登り木も、たくさんの本が収められた本棚も、蓋のあいたインク瓶も。
家主が、友人のためにと買い揃えた食器一式。 家主の体格に合わない服が数着。
ぼろぼろの雨傘。 誕生日にと奮発して買ってくれた、気に入りの帽子。
――何もかもが、残されたまま。
家主だけが、姿を消している。]
(41) Noah 2016/10/14(Fri) 00時頃
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[ いつか、誰かが。この手紙を、 読むだろうか。 *]
(42) Noah 2016/10/14(Fri) 00時頃
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……っ、
ブローリン!ニコラス!聞こえる!?
……ねえ、二人は、大丈夫なの!?
[暗くて息の詰まる場所に移動させられてから、パンがつっかえたみたいに響かなかった僕の赤い声が、また通るようになっていた。
空気の流れに乗せて呼びかけるけど、半端者の僕の声は元々遠くまで届きにくいし、"仲間"の気配なんて探れやしないから。
呼びかけて反応がなければ、もう、そこまででしかないんだ。]
僕は外に出られるようになったよ!
だから二人も、早く逃げようよ、ねえ!
………………、ばか、だなぁ。
[宛名も差出人も何もない手紙。
だけど、僕にはわかる。
いつだったか、この子が床を足跡だらけにしたものだから、
これからは開けっ放しに気をつけようと笑った墨も。
僕がいつ来てもいいように用意してくれた、
彼にとっては余分なはずの皿や小柄な服も。
雨の避難時に慌てて持ち出したはいいけど、
意味を成さずにびしょ濡れにされたおんぼろ傘も。
街で見かけるたびに嬉しかった、僕が選んだキャスケットでさえ。
何もかも"残した"ままの、思い出が沢山詰まった部屋。
僕がここに来ることを確信した上で、
僕の目の前にこうして、全部全部用意したままで、
忘れてほしい――だなんて、ふざけた望みを書き残すんだから。]
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― … ―
["住み慣れた"館の玄関をくぐったのは、ちいさな思い出を捨ててから、両手の指を曲げて伸ばすだけの数を数えた頃。 前髪を後ろに流し、いつだったかに誂えた服を纏って、ノッカーも鳴らさずに戸を開く。 突然現れた来訪者に目を白黒させた見慣れない使用人が何かを云うより先に、十五年近く音沙汰の無かった息子の帰還に素っ頓狂な声を上げて母親が階下へ駆けてくる。 ――彼女の慌てぶりも当然だろう。ちょっと一人暮らしする、だなんて簡素なメモ書きだけを残して最愛の息子が消えた上、"ちょっと"だなどと云えない時間、戻ってこなかったのだから。]
―― ただいま?
[淑女らしからぬ取り乱しようで抱きしめてくる母親は、見下ろす程小さくなってしまった。 彼女の腕の中に収まっていた頃の自分が、随分と遠い昔のように思える。]
(83) Noah 2016/10/14(Fri) 23時頃
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「ああ……、ああ、可愛い我が子。 見違えたわ、若い頃のお父さんにそっくりね。 いきなり出ていくんですもの、私がどれだけ心配したと思ってるの。」
ああ、まあ――悪かったよ。
「いいのよ、帰ってきてくれて嬉しいわ。 お腹はすいてない?具合は悪くない? よそで不憫な目にはあわなかった?苦労したでしょう」
[矢継ぎ早にあれやこれやとまくしたてるのを、黙って聞く。もう久しく顔を見ていなくても、ここで口をはさむと泣き出すことくらい覚えている。 宥めるように背を叩いて、解放の時を待つのが一番の近道だということも。]
(84) Noah 2016/10/14(Fri) 23時頃
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母さん、いつまでも玄関に居たんじゃお客さんみたいだろ。 そろそろ離してよ。
「いやだわ、かあさんだなんて、前みたいにママって呼んでよ。 もうすっかり大人みたいじゃない――」
はいはい、"ママ"。 俺もう31だよ。子供が居たっていいぐらいだ。
[腕の中の息子の背中がすっかりたくましくなってしまったことにか、あるいは変わってしまった呼び名にか、時間の経過を実感してしまったからか。 泣き始めてしまった母親に、苦笑して肩を竦める。やれやれ、こうなると長い。]
(85) Noah 2016/10/14(Fri) 23時頃
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