189 とある結社の手記:8
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…………、……!
[声をかけようとして、その言葉を飲み込む。 聞こえるはずがないのだ、自分の声は。 老婆は生きているのだろうから。]
………………。
[その姿が湖に映っていないなどと気付かず。 老婆の背中をじっと見つめる。]
おばあちゃん………ありがと……。
[届かなくてもそれでいい。 小さく感謝を伝えると、また走ろうとその姿は霧に消えた。]
(+30) 2014/08/19(Tue) 21時頃
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掃除夫 ラルフは、メモを貼った。
2014/08/19(Tue) 21時半頃
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──回想:昨夜の部屋──
[椅子を進めても座らない少年の立つ姿を、 黙ってみやって、中へ入るようにと促す。
夜も更けて、鉄格子の向こうに見える窓は、 すっかり黒々としていた。]
(+31) 2014/08/19(Tue) 21時半頃
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……、中には入りな。
[そう言って、立ち尽くしたような、 少年の後ろのドアを閉めた。
ぱたん。と、軽い音だけが廊下に残る。]
───。
[外に声が漏れなくなった部屋で女が窓を背中に子どもに見向く。そうして、少年はあちこちとつっかえながら、話をはじめた。]
(+32) 2014/08/19(Tue) 21時半頃
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[やさしい人が好きだ。と、 子どもが言う。 >>7
──掃除夫の青年を、同じにやさしい人と、 そう評した言葉を思う。]
……
[優しい人が、人間が好きだから、 自分もやさしくしたい、、 守りたいのだと、そう少年は話を続けた。]
(+33) 2014/08/19(Tue) 21時半頃
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[黙り、その言葉を聞く女の前で、 あの日。と、不意に話は過去へと飛んだ。]
────。 [先を促すような言葉はないまま、 ただ、黙って常の表情を変えず、 けれど目を子どもから離さずにいる。]
(+34) 2014/08/19(Tue) 21時半頃
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[説明しづらそうに、言葉はぽつりぽつりと繋げられる。 >>8 ──魚屋の女の表情が変わったのは、 気がついたら、と、子どもが言ったとき]
……
[──ああ。と、思った。]
(+35) 2014/08/19(Tue) 21時半頃
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[最初に感じたのは、落胆だった。物悲しさのような胸に すうっと冷たい水が沁みる感覚。
ついで、悪戯心でなされたと、そう聞こえた言葉に ──とまれなかったのかと、腹立ちのようなものと共にそう思った。
やさしい人が好きだと、 そういうのなら。
自分なら、できないからと、 酷く単純な理由で、
──掃除夫の青年を、子どもが食べるようなことはないのではと、 そんな風にも、思っていたからだ。]
(+36) 2014/08/19(Tue) 21時半頃
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[ラルフを殺すことができないのなら。 目の前にいる子どもは、 狼ではないのじゃあないかと、
──そう、信じることはできないかと、思っていたからだ。]
(+37) 2014/08/19(Tue) 21時半頃
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……
[リーの忠告を思い出す。 イアンが挑発めいて、自分で狼を見つけられるのか、と そう言った言葉がついでよぎっていった。
自分は結局、情のようなものや、 村で生きる自分の常識や、 ごく狭いものの見方でしか、 きっと、判断ができていないのだろう。]
(+38) 2014/08/19(Tue) 21時半頃
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[これまでは、その狭い視野で、 生きることに不都合もなかった。
好きな相手を殺す感覚なんてものはわからない。 魚屋の女にとっての好きな相手は、 一緒に、時間を重ねていきたい人間だ。]
……………
[ただ漁師、と。少年が口にするのに、 ぴくりと瞼が引きつった。]
(+39) 2014/08/19(Tue) 21時半頃
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[少年が、オスカーが、一歩一歩を歩みくる。]
……そりゃ、何年前の話だい
[── 違うかもしれない。
サイモンの部屋に、 最初に行ったときと同じに、 声が震えかける。
けれど。]
(+40) 2014/08/19(Tue) 21時半頃
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…そいつは、
[漁師だった、その男は。
ときおり、湖の近くを歩くのが好きな男だった。 口数は多くはないが、優しい男だった。 もとより、暗く人の輪から外れがちの女の傍に 随分根気強くいてくれた、根っこがどこか、心配性の奴だった。]
(+41) 2014/08/19(Tue) 21時半頃
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[微かに震えそうな声で、女の声が尋ねる。 ──2年も前の話だ。そのときのオスカーは、 まだ年齢も一桁の子どもだ。]
──ダンって 名のりゃしなかったかい。
[だから、──違うかもしれないと思いながら、 確かめずにはいられなかった。]
(+42) 2014/08/19(Tue) 21時半頃
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……
[一歩、また一歩と距離が詰まる。 足は、その場から動かなかった。]
……
[ラルフの名前に、眉を寄せて、 女は、大きく口を曲げた。
胸の内が苦い。]
(+43) 2014/08/19(Tue) 21時半頃
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…… ずっとね、
[問うた言葉に返事はあったかどうか。
女は子どもの顔を見たままに、 顔を顰めたままに、 低い声を漏らした。]
あんたが泣く気持ちがあたしにゃあ よく、わからなかったよ。 [ダンがいなくなったときには、実感がわかなくて。 結局、今にいたるまで女は、夫のために泣いたことがない。]
(+44) 2014/08/19(Tue) 21時半頃
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[目の前にいる子供の手にかかったのか。そうだとするなら、と考えるだけで胃が焼けつくようだった。]
……、ガキだからって甘えてんじゃあないよ。
[その感情を押さえ込みながら、 詰まる距離から逃げずに子どもに真向かう。]
(+45) 2014/08/19(Tue) 21時半頃
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男の子なんだろ。 守りたいんだろ。
……生きていきたいんじゃあないのかい。
[きっと楽しい。と子どもが言った、 夢の話をうちこわしてもだ。
少しは。後悔を──しているのか、それともそこまで演技なのか。 女にはわからない。]
(+46) 2014/08/19(Tue) 21時半頃
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[ただ、リーは、話のわかる人狼がいると言っていて、 ラルフにとっては、この少年は、 ──大事な人間だったのではないかと、
そう、ワンダは思っていて、 だから]
泣くぐらいなんなら、
──我慢のひとつでもしてみせな。
[要求を、ひとつ子どもに*投げつけた*。]
(+47) 2014/08/19(Tue) 21時半頃
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[遠く、遠く]
[ ── 狼の とおぼえが聞こえる*。 ]
(+48) 2014/08/19(Tue) 21時半頃
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魚屋 ワンダは、メモを貼った。
2014/08/19(Tue) 21時半頃
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―集会所 外―
……………っ
[集会所の中に入る、という頭は働いておらず。 窓の外から集会所の中を背伸びして覗きこむ。 人参頭が広間の窓の外からちょこちょこしているが。 鉄格子が邪魔して――――――。
いや、そもそも見えないだろう。]
(+49) 2014/08/19(Tue) 21時半頃
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……………。
[ああ、まだ、出られないんだ。 そう思ったまま、暫く広間の中を覗き込んでいた。 背伸びをしたまま無言で首を傾げる。
魚屋のあの人の姿が見えない気がした。]
……………。
[もしかして、が頭を過ぎる。 名前を書いてもらったメモを思い出して。 そして眉を下げた。]
(+50) 2014/08/19(Tue) 22時頃
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……………うー……?
[なんだか、想像以上にもめている。]
わたしが……バケモノだったら…… よかったなぁ………。
[そうしたら、今日で全てが終わっていたはずで。 みんなが、こんなに苦しまなくていいのかな、って。
背伸びが疲れたのか、一度降りて。 もう1度、背伸びを繰り返した。]
(+51) 2014/08/19(Tue) 22時頃
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―村長宅―
[また日が落ちて、街の影が深く深くなっていく] [部屋の中も同じ。まだ灯りのともされていない部屋は暗く、 夕闇に暮れる部屋の中にホリーの息遣いだけが続く]
[ホリーとその見張り結社員が二人程。そして見えもしない幽霊が一人。そんな部屋の中に部屋に数人の結社員が入ってきた。 手には薬を持っていた。どうやら薬の時間らしい。 静かな部屋に人気が増えると、幽霊は黙ったまま、 そこから立ち上がって霧のように、姿を消した。]
(+52) 2014/08/19(Tue) 22時半頃
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―集会所 外―
[ふらふらと、霧のような幽霊が集会所へ向けて歩いている]
[歩く途中の茂みの中から、一匹の兎が顔を出した。 鼻を引くつかせてこっちを見ているようにも思えた。 その姿を、幽霊が見る事は無い。視線はずっと地へと向いている]
[僅かに頭を上げると、見覚えのある人参頭が、 背伸びをして窓から中を伺ってるのが見えた]
……。 何してるの。
[声をかけた後で気付く。この子に声は聞こえるんだろうか。 …そういえば、朝。集会場の中に この子の姿は無かった気もした]
(+53) 2014/08/19(Tue) 22時半頃
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―集会所 外―
…………!
[何か聞こえた気がして、背伸びしたまま振り返った。 暫しの瞬き、そして口を開いた。]
…………おばけ………?
[首を傾げた。 目の前にいる人は、あの日――――――。]
………………。
[背伸びはやめないまま、相手を見た。]
(+54) 2014/08/19(Tue) 22時半頃
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―集会所 外―
[どうやら、姿も見えているようだ。 彼女の言葉に伏目を一つ瞬かせた。]
[…昨日会った死んだ狼も、自分の姿も見えていた。 …ならばこの子もそうなのだろうか。朝姿が見えなかった理由が分かった気がした]
…………………………………ああ… うん。そう。 おばけらしい。
[なんだかまぬけな響きなものになったのだな、と俯いて袖でゆるゆると口を覆った。僅かにくつ、と笑う。 自分の境遇を他人事のように認め、小さく頷く]
………きみも、おばけじゃないの?
[それから、窓の内側をちらりとだけ見る。背伸びをしている足とを見比べて]
………中に入りたいなら、入ればいいよ。 きっと、誰も怒らない。
(+55) 2014/08/19(Tue) 22時半頃
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―集会所 外―
…………おばけ…?
[自分もおばけと言われて首を傾げる。 暫く考えて、初めて気付いた。]
………………!!
[何だかすごく驚いていた。]
……うん………しょぶん……された…から…。 ……おばけ……だね……。
[困ったように笑う。]
(+56) 2014/08/19(Tue) 23時頃
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……なにも……できない…から… …はいっても…なにも…
[怒られないんだ。 もう――――誰にも怒られない。
それは、とても寂しいことだと気付いた。]
(+57) 2014/08/19(Tue) 23時頃
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―集会所 外―
[すごく驚いている様子に首を傾げながら。 困ったように笑う様を一瞥し、ゆるゆると視線を地へと戻す]
……………………………、 さみしい?
[ぽつりと。静かに尋ねた]
[何もできない、という言葉には、 幽霊は頷くことも頭を振ることも無く]
………………………何もできないけど。 最後まで。 そばで見てはあげられる。
[その言葉を宛てたのは、目の前の彼女だったのか。 …それとも自分に宛てたものだったのか。 幽霊は静かに静かに、言葉を零した]
(+58) 2014/08/19(Tue) 23時頃
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―集会所 外―
…………………。
[背伸びをやめて、視線を男から逸らす。 きっと、寂しいのだと思うけれど。 それを肯定したとしても、ただ空しくて。]
………………。 ……そばで…………かぁ……
………それは…わたしより………
[突然、ラルフの腕をとって引っ張った。 おばけになったんだから、壁なんかも余裕できっとすり抜けられる、と壁へ突進する。]
(+59) 2014/08/19(Tue) 23時半頃
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