297 湿っぽい古風和ホラーRP村「紫陽花奇譚」
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もう、来たらあかんよって。 言ったやんか。
[幼子の、泥に濡れたすべらかな頬を、そうと指先で撫でる。 桃色に染めて輝いていたそれは、白く冷たく濡れている。
危ないから、あかんよって。 そもそもそん花は、お見舞いには向かんよ、って。 言うたのに。
あと少し、年が行っていたならば。 幼子にはその花が見えなかったろう。
あと少し、幼かったなら、こちらの声が聞こえたろう。
あと少し……
口惜しさは何の代わりにもならぬ。 私は、泥に足を取られて滑り落ちる子どもに、何もしてあげられなかった。]
(*0) 2019/07/04(Thu) 09時頃
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あぁ、泣かんで、泣かんで。
[空が泣き出すような雨を降らせる。 これは、誰の涙だろうか。 この子のものか、家族のものか。 この子の家族は、誰やろう。 お見舞いと言っていたのだから、きっと病に臥せった家族がおるんやろう。]
泣かんで…な? 今、綺麗にしたるからな?
[幼子の亡骸に掌をかざす。 白銀の光に包まれて、物言わぬ子供は姿を消した。 代わりにその場に遺るのは、月明かりを写した銀竜草のような、仄かな輝きを帯びた紫陽花一株。]
(*1) 2019/07/04(Thu) 09時頃
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そうら、綺麗やろ? あなたが、綺麗て喜んだ、お花や…… あぁなんで。 なんで、まだ泣くん?
[開いたばかりの紫陽花に、ぽつりぽつりと雫が落ちる。 それはまるで、花そのものが泣いているようで。]
(*2) 2019/07/04(Thu) 09時頃
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あぁ、あぁ、そうやんな。 ひとりぼっちは、さみしいな。 おねぇちゃんにも、分かるから。
[ひとりでに花束のようになる、花手毬を両手に包み、口付ける。 それはまるで、むずかって中々眠らない子供を寝かしつけるような仕草で。]
可哀想やな、可愛いな。 せやな、ちゃぁんと、帰してあげるからな。
[ぽつ、ぽつと、村への道を辿るように、紫陽花の花びらが、姿を見せる。 例えばそれは、紫陽花の花束を抱えた子供が、いち早く家へ帰ろうと、走り抜け様花を散らしていったような。 それを見守り、“わたし”は微笑う。]
(*3) 2019/07/04(Thu) 09時頃
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ふふ、元気やな、可愛いな。 **もあの位ん頃は、 よう走っとったっけ…
[“わたし”は、遠い記憶に想いを馳せる。 誰からも、“わたし”自身からも、忘れ去られた記憶に。
『どうして、どうして…おねぇちゃん!』
誰かの泣き顔が記憶にひらめいた瞬間、私は────、**]
(*4) 2019/07/04(Thu) 09時頃
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たえちゃん…?
(*5) 2019/07/04(Thu) 11時頃
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[ 昔に食べた、 ――― 食べようとした紫陽花>>15は、どんな色をしていたっけ。]
[ 小さい頃から山が大好きだった。色んな所に行く前に、山の知識を教えてもらって、でもそれでも、こっそりと色んな所へ行った。 一度足を滑らせたこともあったが、持ち前の丈夫さでなんとかなった。 その時の光景や見たものは、思い出せないけれど。
運が良かった。 あたしはきっと、運が良かったのだ。]
(*6) 2019/07/04(Thu) 11時半頃
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[ 見た事がないはずの透明な紫陽花。 どうしても目が行ってしまう。あれは、…あれは。なんだっけ。]
…たえちゃん?
[ そう語りかけるのは頭の中でだけだ。 そう、それは、その透明な紫陽花に向かって。
泣き声が聞こえる。良く知っている気がする。だけど確信には至らなくて、声には…言葉には、できなかった。]*
(*7) 2019/07/04(Thu) 11時半頃
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────とぉりゃんせ、とぉりゃんせ。
此処は何処の細道じゃ?
天神様の細道じゃ。
ちょぉっと通して、くだしゃんせ────
(*8) 2019/07/05(Fri) 00時頃
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よかったねぇ、おたえちゃん。 無事、辿り着いたんやねぇ。
(*9) 2019/07/05(Fri) 09時頃
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知っとるよ。 わたしたちの見分け、つかんこと。 どっちでもおんなじやって、 きっと言うんやろね。
(*10) 2019/07/05(Fri) 18時半頃
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[少女には、紫陽花の株のそばでうずくまる子どもが、見えていたのだが。
ここにおるのに、とべそをかく子どもが。
寂しいと、袖を濡らす、たえが。]
(*11) 2019/07/05(Fri) 18時半頃
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可哀想やな、可愛いな。 そうやね、気づいてもらえんのは、寂しいな。 大好きな、じいちゃんやもんね。 ねぇ、おたえちゃん。
心配、
いらんよぅ?
(*12) 2019/07/05(Fri) 18時半頃
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[ 蹲る子供の姿はこの目には見えず。 ただ聞こえる声に、その紫陽花へと視線を送る。]
心配、いらんの? たえちゃん、居るん?
これ 誰の声やろか。 ……夕ちゃん?
[ 朝夕の区別がつくつかない、という以前に。なんだろうか、少しだけ、雰囲気が、…]
ゆうちゃん?
[ 違うような気がして、]
(*13) 2019/07/05(Fri) 20時半頃
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…
[ 昔、出会った、誰かに似てる気がする。 紫陽花へと送っていた視線は、夕顔へと向けられ、少しの間視線を留めた。]
(*14) 2019/07/05(Fri) 20時半頃
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[少女と本当に視線が絡んだのは一瞬。 けれど、少女がまた家の中へと視線を戻してからも、その眼差しは彼女をとらえて離さない。
見えない眼差しが、“笑みを浮かべた”。 その“笑み”は、どう見積もっても年端のいかぬ少女の浮かべられるそれではなく、 もっと言えば、18の年頃の娘が浮かべたそれで、 更に言えば、娘は“緋色の婚礼衣装を纏っていた”。
そんな姿はどこにもないのに、何故かその眼差しは、“そんな娘の浮かべた笑み”を幻想させた。
そんな娘は、どこにもいない。
どこにも。]
(*15) 2019/07/05(Fri) 21時半頃
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[とたとたとた。 裸足の子供が室内を走るような音がする。 足音は、飴のそばでいったん止まってから、また走り出す。
家の、中ほどへ、向かうように。
開いた戸>>104の前で、立ち止まる。
『みぃつけた!』 『次はおねぇちゃんの番!』
とたとたとた。 家の中を、裸足の子供が走り回るような音がする。 何度か襖や戸を開け閉めする音がして、それから、静かになった。]
(*16) 2019/07/05(Fri) 21時半頃
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[ ほんの一瞬。すぐに表情を変えてしまったから、その視線に捉えられたのも一瞬、の、はずだ。
笑みが見えた。 夕顔にはおおよそ浮かべる事に出来ない類いの笑み。
ぞわ、じわ、じとり、 ぺたりと背筋に張り付くような感覚は、まだ雨も降りはじめていないのにはやい気がする。
今のあたしよりも少し年下、 だけど、ずっと昔はずっと年上、
緋色の花嫁の笑みは、笑みが、 心を捉えて離さない。
息が詰まるような心地に目を瞠る。 きれいなきれいな、およめさん。
ここにいるのは夕顔だ。 夕顔、夕ちゃんのはずなのに、 ここにいない姿なのに、あの娘は、 ]
(*17) 2019/07/05(Fri) 22時半頃
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[ いない――…?
表情が夕顔に戻って、漸く解放された気になる、いや、されていない。囚われている。]
おねえちゃん?
[ 自分に勿論姉はいない。だがなんとなく、そう口が動いた。]
(*18) 2019/07/05(Fri) 22時半頃
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『もう いいかい』
『まぁだだよ』
『もう いいかい』
『もう い い か い』
(*19) 2019/07/05(Fri) 23時頃
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『も う い い よ 』
(*20) 2019/07/05(Fri) 23時頃
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────め か く し
お に さ ん
て の な る
ほ う
へ────
(*21) 2019/07/05(Fri) 23時頃
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[ 視覚と聴覚が、何かに囚われ、 少しだけ下を向いて、ぐるぐると頭の中で渦巻く 声を 姿を
反芻している。
紫陽花へ向かうような視線は、 少しの間、どこにも向いていない。]
(*22) 2019/07/05(Fri) 23時半頃
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[ 綺麗な、およめさん。 紫陽花の季節に輿入れしたならば、 彼女は幸せになれたのだろうか。]
(*23) 2019/07/05(Fri) 23時半頃
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[ 耳に幽かに届く、沁みるような声。]
[ ぱん、と軽く小さく、聞こえないくらいの音で、手を打ち合わせた。]
(*24) 2019/07/05(Fri) 23時半頃
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『 お に さ ん
こ ち ら
て の な る
ほ う へ 』
(*25) 2019/07/06(Sat) 16時半頃
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[転がった琥珀色を、幼い子供が攫って行った。]
(*26) 2019/07/06(Sat) 18時半頃
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寂しいな、寂しいな。 ここにおるのにな。 おたえちゃん、ちゃぁんといい子で、帰って来たんにな。
(*27) 2019/07/06(Sat) 19時半頃
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[そもそもお山の神様なんて、 人の子なんぞに興味なんてないんやけどな。]
(*28) 2019/07/06(Sat) 19時半頃
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なぁ?
(*29) 2019/07/06(Sat) 19時半頃
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