これが返書だ。抱いておれ
[国へ帰る密使の胸元へ巻物を置き、男は薄く笑んだ。陽の光の下では、笑みもどこか柔和で線の細い印象すら与えるか。
走り出す荷車を見送らずに城内へと戻った]
[闇と香の魔に蝕まれた地下牢での14日間。
不在の間は黒猫を緊縛し、牢内の種々の拷問へかけた。
男が戻ればより強く長く効く幻薬を与え、いたわり、
甘く よくぞ耐えた もう良い と囁く。
求められれば快楽を与えるばかりの交わりを施すのは、幻と欲に溺れさせるため。
時に起き上がれない程痛めつけられれば、傷ついた小鳥を慈しむように手ずから世話をし、腕に抱いて眠らせることまでした]
[それも、あの弱みを見せぬ家老へ使いを返すため。
来たときと同じよう、胎内に長効性の幻薬を埋めたケイを送り――
情あるならば破滅の奥底から救い上げて見せよ、と**]
(*192) tayu 2015/01/15(Thu) 02時頃