[今でもアレを愛しているのか居ないのか、それとも憎んでいるのやら。
だから自分は、美味い珈琲は絶対淹れてやらないんだ。
アレが好きだといった珈琲なんて二度と作るもんか。
置いて行かれたと、彼と同じ言葉>>272に嘆いても、その後の収束は全く別で。
何かを紛らわせるよう頻りに愛を捧いでも、言葉は何処にも響かない。
空っぽなのだととうの昔に割り切った胸の奥、
どろりどろりと、何かがしきりに揺れるだけ。
別れを吐いたアンタの口から、
『愛してる』なんて、
聞きたくなかったんだ。
それきりアレは来なくなって、笑わない少年は笑うようになった。
笑うようにはなりはしたが、大切な何かが抜け落ちたように、何処かが徐々に擦り切れて。
セピア色の夢の中、相手の顔は塗りつぶされて。
次に続く『愛してる』を聞かないように、夢のレコード>>126は、同じ箇所しか紡がない。*]
(316) 2015/08/05(Wed) 01時頃