[こちらを煽る「御主人様候補」どもの声に、女はロクに耳を貸さぬ。
どうせ彼らは、「金でしか人の矜持を買えぬ」連中なのだ。己の身体に染み付いた「矜持」と較べれば、その存在は、弱く、脆い。
だから彼らに己の性器や嬌態を曝すことなど、容易い。それで「支配した」気持ちになるのなら、それはとてもちっぽけながら、とても幸福な人生なのだろう。]
おにーさん。女装する覚悟ができたのね。
……素敵よ。
貴方の膚に、よく似合うわ。
[小麦色の膚にドレスを宛て、微笑む。
ここで重要なのは、彼女は彼らに、王子様の性器を完全に見せてはいないということだ。]
ふふ……まだこの奥をお見せするわけには参りませんの。だってまだ誰もこの少年を「お買い上げではない」のですもの。
[上半身の膚を曝した王子様の身体に、ドレスを着せ、ゆっくりと手術台の上に横たえる。彼が纏っていたズボンを剥ぎ取り、台の上で脚を片方だけ曲げさせ、彼のしなやかな脚のシルエットを観客に見せ付けた。]
私から先に見聞させて戴きますわ。これぞ侍女の「役得」でございますわね。
[スカートをめくり、中を覗き込む。驚嘆したような表情で観客席を振り返った。]
(316) 2010/04/04(Sun) 22時頃