― 割り当てられた部屋へ ―
[建物の中に居た筈なのに、微かに湿り気を帯びた金の髪には薔薇の香りが纏う。
その髪を気にしたように掻きあげながら階段を降りる。
その間、誰かとすれ違っても足をとめなかったのは]
……思ったより、遅くなってしまったから。
[階段脇に放置していた物の存在故に。
おそらく、鳴瀬が運んでくれたのだろうと思えば、つっと眉間に皺が寄った。
食堂から良い香りがする中、足は真っ直ぐに1つの部屋に向かう。
迷わなかったのは、うっかりだろうか、開かれた扉から聴こえた声に導かれたから。]
赤染衛門……ですね。
すみません、荷物運ばせてしまったみたいで。
[問題児だらけ……という言葉は聞かなかったことにした。
少し困ったように微笑んで、運んで貰った荷物へと近づく。
荷をとこうと屈みこめば、湿った髪が揺れて薫る薔薇の香。]
(300) 2011/05/17(Tue) 13時頃