[過去に望まぬ子>>287を産み落とした三黒の家系は、血として、当主としてそぐわぬ相手とのまぐわいは極力避ける傾向にあった。
故に少女の思い描くその分岐点>>283は、本来決して在り得ぬものである。
…筈だった。
何故末の子にのみ、聖痕が現れたのか?
何故彼女の兄弟には現れなかったのか?
答えは明白、
父親が異なるからである。
幸いにも三黒の家系の血は随分薄く、産まれた子にその力が現界する事は決してありはしなかった。
それでも混ざった二人の当主の血は聖痕を強く引き付け、現し、刻まれたのは百洲の証。
血が薄いが故、現れぬが故、誰も気づかぬ事に母親が気付いていたかどうかは闇の中。
愛していると、抱いたのは一夜だけ。
日が昇る頃には過ちと片づけて、次に「史夏」がその家を訪れたのは、アレの没する少し前だっただろう。
だから、全ては知る由もないのだ。
この小さな当主が、己の子であると言う事も。]
(297) 2015/09/17(Thu) 22時半頃