――……嘘よ!!
[確実な味方だと信じていたナユタに否定された、という衝撃も相まって、声を荒げる]
だって、そいつ――この世界で暮らしたいって、そう言ってた!!
[ホテルでの別れ際の台詞。記憶のことだから、細部は、印象で補完されているが]
現実に戻ってやることなんて、そんな奴にあるわけないでしょ……!!
[それは、ちくりと、自分の胸をも刺す。かくいう自分は、戻って何をするのか。
講義のレポート、ゼミの予習、差し迫った就職活動。
戻ったって、そんなことばかり――でも、だけど。向こうには、家族がいるんだ。
いつも遅くに疲れた顔で帰ってくる、汗臭くて、髪の毛が怪しいお父さん。
小言が多くて、最近は全く面白くもない韓流ドラマにハマってるお母さん。
地元の高校に通って、受験勉強のストレスで、私に当ることも多い妹。
――私はまだ、そういったものを捨てるほど、現実に絶望していない]
(278) 2013/07/06(Sat) 01時頃