[そのうち、甲斐田が運んで来てくれたタルトが目の前に配膳されると、おお、と感嘆の声が漏れた。
ナパージュでつやつやのきらきらになった赤い果実がカスタードのたっぷり入ったたっぷりサクサクのタルトを彩っている。
甲斐田に御礼を言って、丁寧に切り分けたタルトを、少し離れた位置にいる本田の前に置いた。
まだ気分が優れないのか、手を付けようとしない彼女に声を掛ける。>>234]
食べたく無いなら無理しなくていいよ。
でも甲斐田さんのケーキ、ほんとにとっても美味しいから。きみのぶん、キッチンにも取っておくから、お腹減ったら食べてみて。
[初対面の他人にどれだけ慰められようと、割り切れない気持ちもあるだろう。ましてや高校生なんて、思春期真っ最中。そっとしておくに限る。
本田はタルトに手を付けただろうか。
どちらにしても、康太は進村と会話した後部屋へと向かった彼女を、見送るに留めた。]
(277) 2014/03/16(Sun) 15時半頃