― 自室:窓辺に佇んで ―
[自室へ戻る道すがら、青年が誰かとすれ違うことがあったとしても>>263仏頂面で手を上げるくらいに止めただろう。
自室の扉を開けば階段の近くのキズついた壁とそっくりな光景。
床から壁まで隙間なくびっしりと付いたキズアト。
唯一違うのは、廊下を這うキズとは比べられないほどに青年の自室の傷跡は深いコト。
椅子で、机で、可能ならば何を使ってでも付けた傷。
…自分が傷つかなければ躊躇うこともない。
幾らだってキズをつけることが出来たのだから。
だから、青年の私室に置かれているのはベッドだけ。
ベッドと、動かないように固定された机がひとつ。
机の上には書きかけの絵本。それと、日記。
続きを綴るためのペンは、ない。
あとは何冊か本が床の上に転がる殺風景な部屋。
その中から誰かに貸した>>261こともあったっけ。]
(273) 2015/06/07(Sun) 01時頃